い出の化石(11)

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週に一度 想い出の化石として標本を紹介していきます。

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0559 掲 載 日 2023年 9月28日(木)  
標 本 名  Ancistrolepis togariensis Naruse
   アンシストロレピス ・  トガリエンシス    
産  地  三重県津市美里町分郷  34°43'58.9"N 136°22'34.0"E
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   一志層群 大井層 三ケ野部層
標本写真
コメント 1976年(昭和51) 2月 28日 採集  エゾバイ科, ワダチバイ属  トガリフジタバイ

 現生種のフジタバイ Ancistrolepis fujitai Kuroda は、遠州灘から北海道の100-600m深、砂泥底に棲む(微小貝データベース)。 掲載の A. togariensis に比べ塔高である。
 分郷の産地 有名な柳谷に近く、分郷のバス停の北の小高い丘の上で、民家の脇を通り、産地に向かうのだが、産地も勿論“民有地・私有地”だったと思う。 山肌を掘り岩を崩し化石を採って、手提げバケツで車に運んで持ち帰ったことを思いだす。50年近く前は、世間は今と比べおおらかだったのか、地元の方に道中遭って挨拶する程度で、化石採集に苦情は受けなかった。
 今になって思えば当時の我々採集者のこのマナーは褒められるものでない。今も昔も私有地で無許可でその地のものを無断で持ち帰ることは窃盗行為にあたる、おおいに反省する。 ましてやその様にして採取した化石を地権者に許可も得ず販売する行為は盗品販売となることは当然。 残念ながら、 この柳谷の化石もオークションサイトから売りに出している方がいる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 吉田史郎・高橋裕平・西岡芳晴 1995
    津西部地域の地質
    地質調査所  地域地質研究報告 5万分のl 地質図幅 京都(11)第 54号




0558 掲 載 日 2023年 9月21日(木)  
標 本 名  Babylonia kazaiensis kokozurana Nomura
    バビロニア・ カザイエンシス・ ココズラナ 
産  地  岡山県津山市楢
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期  勝田層群 吉野層 
標本写真
  
コメント 1995年(平成7)  9月 17日  採集  バイ

 標準和名のバイ Babylonia japonica は南西諸島を除く日本全域と朝鮮半島、中国の一部などに分布する温帯種で、内湾から外洋までの沿岸域の浅海砂泥底に潜って生活をしている
 バイはサザエ、ハマグリなどとともに日本の代表的な食用貝のひとつであり、海外産のものが大量に輸入されているが、「バイ」の大半は同じバイ属の外国産の別種が多い。  (以上 ウィキペディア(Wikipedia)より引用)
 勝田G吉野Fの砂岩層から産出するが、これまでに吉井川・津山市楢・津山市上野田広戸川の3ヶ所で採取していて、共産化石(巻貝類)として3ヶ所共に ナカムラモクレンタマガイ (Cernina nakamurai) , ミマサカテングニシ (Pugillina mimasakaensis) の2種が必ず採取できた。
 尚、 Taguchi 2002 では本種を B. toyamensis としている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 中川登美雄  2009
   福井県内浦層群下層から産出した熱帯砂底ならびに岩礁棲軟体動物化石群集
   瑞浪市化石博物館研究報告 No.35 , p.127?151, 6pls., 4figs., 2tables

 Eiji Taguchi   2002 
   Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan   
   Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 29 (2002), p. 95-133, 8 pls., 33 figs., tables.
 




0557 掲 載 日 2023年 9月14日(木)  
標 本 名  Anadara abdita Makiyama
     アナダラ ・ アブディタ 
産  地  富山県富山市八尾町井栗谷   36.582226, 137.174476
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   八尾層群 黒瀬谷層 
標本写真



コメント 1994年(平成6)  8月 13日  採集    サルボウガイ

 殻は中型で、殻頂から広がる放射肋は約30本あり、その各々は方形で、その中ほどに細い溝(分岐)が見られる。菱形の靭帯(じんたい)面は A. kakehataensis より狭く、よって殻の膨らみ(殻幅)も小さい。
この標本の殻表の装飾は風化が進んで、保存が悪いが30本の肋上には顆粒が並んでいる。
尚、産地の行政的な地名は井栗谷となっているが産地には西方の深谷側の八尾カントリークラブ方面から入る。
  Figs.1200標本の  殻長 :  54mm  殻高 :  48mm   殻幅 :  40mm  靭帯長 :  37mm
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 富山県古生物研究会・八尾町教育委員会  1998   編集
    ―化石の宝庫やつおまち―  『ワクワク化石教室』 ―化石産地ガイドブック―

 富山県[立山博物館]  1997
    特別企画展解説書  『富山に生息したいきものたち−日本海の歴史』 ━黒瀬谷の貝化石━ 




0556 掲 載 日 2023年 9月7日(木)  
標 本 名  Carcinoplax antqua (Ristori)
     カーチノプラクス ・ アンティクア 
産  地  島根県出雲市上塩冶町菅沢  斐伊川(ひいかわ)放水路 工事現場内
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世   出雲層群 大森層 
標本写真

コメント 2005年(平成17)  5月 3日  採集   ムカシエンコウガニ  (メス)

 ムカシエンコウガニは日本各地の中新世以降の地層から報告のある甲殻類で、良く知られている。
この出雲層群でも、布志名層から大森層で産出が多く、ことに、布志名層からは球形コンクリーションに含まれたものがほとんどで、今回紹介する大森層からの産出は少ないといえる。
 また十脚甲殻類というが化石としてまともに今回の標本の様に全ての十脚の部位が残されているものはなかなか得られない。 また、この標本では眼柄まで保存されていたが剖出時の不注意で残すことができなかった。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Rikizo Imaizumi 1961
   A Critical Review and Systematic Descriptions of Known and New Species of Carcinoplax from Japan
   The science reports of the Tohoku University.Second series, Geology
   東北大学理科報告. 地質学 vol,32 no.2 p.155-A20
 安藤佑介・河野重範・櫻井 剛 2015
   島根県に分布する中部中新統布志名層から産出した十脚類の追加標本
   瑞浪市化石博物館研究報告 . 41, p. 35-39, 2 figs.
 作本達也・柄沢宏明・高安克己.1992
   出雲層群産の中新世十脚甲殻類.
   瑞浪市化石博物館研究報告 19: 441-453.
 柄沢宏明・岸本眞五 1996
   岡山県の勝田層群産中新世十脚甲殻類
   瑞浪市化石博物館研究報告 23,p.39-50   




0555 掲 載 日 2023年 8月31日(木)  
標 本 名  Chicoreus capucinus Lamarck
      チコレウス ・ カプキヌス  
産  地  上段  インドネシア スラウェシ島 ゴロンタロ州
 中段  シンガポール セレタール川 河口
 下段  沖縄県八重山郡竹富町西表島 南風見田の浜
時代 地層  現生種
標本写真
  

  

  
コメント 上段 インドネシア産 2023年8月 小田泰昌氏より頂き物
中断 シンガポール産 田口栄次氏より頂き物
下段 西表島産 1996年(平成8) 3月25日  採集 
                     アッキガイ科 クリイロバショウガイ
 中型で紡錘形をした巻貝。縦張肋(ジュウチョウロク)が通常の縦肋よりもはるかに顕著で三方向に120度毎に現れる。
縦張肋は殻口部の外唇で体層の螺肋に対応した4枚の波打った殻が立ち上がる様に成長し、後に一本の太い縦張肋として形成されている。 殻口の軸唇(ジクシン)から伸びる臍孔(サイコウ)は管状になり水管溝から離れる様に成長する。
 尚、西表島の標本に関しては打上げ貝で摩耗しており、子細な特徴は読み取れないが筒状の臍孔は見られないことや螺肋の数が少ないことから、Chicoreus sp. (クリイロバショウガイの仲間)として置く。  
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 干潟系化石の館 Arcid-Potamid 群集記念館    閲覧日 2023/08/24
  https://higatakaseki.web.fc2.com/page/higatakan.html
   クリイロバショウガイの仲間(アクキガイ科)
   https://higatakaseki.web.fc2.com/dosyu/rhtogeF/rhtoge.html 




0554 掲 載 日 2023年 8月24日(木)  
標 本 名  Cymatium (Monoplex) pileare Linnaeus 
    サイマピアム (モノプレックス) ・ ピェール    
産  地  沖縄県八重山郡竹富町南風見田の浜  (打上げ貝)
時代 地層  現生種
標本写真
  
コメント 1996年(平成8) 3月25日  採集 フジツガイ科 シノマキガイ

 ナギクリイロバショウガイを検討していて、現生種のクリイロバショウガイの標本との対比のため西表島で採集していた現生貝の中から今回掲載しているフジツガイ科のシノマキガイが出てきた。
 シノマキガイの縦張肋(じゅうちょうろく)は顕著で、広い間隔で螺層に垂直な隆起が270〜240度前後の間隔で現れる。
また、殻表にはぎっしりと長い毛が生えている。 (打上げ貝はそれらは取れ去っている) 螺管には細かい螺肋で装飾され、細い成長脈に切られて網目状になる。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 ぽうずコンニャクの市場魚貝類図鑑    閲覧日 2023/08/20
  https://www.zukan-bouz.com/
  シノマキ
  https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%82%B7%E3%83%8E%E3%83%9E%E3%82%AD

 ウィキペディア フリー百科事典   閲覧日 2023/08/20
  シノマキガイ





0553 掲 載 日 2023年 8月17日(木)  
標 本 名  Surculites cryptoconoides (Makiyama) 
    サーキライティス ・ クリプトコノイデス    
産  地  島根県出雲市上塩冶町菅沢
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世   出雲層群 布志名層 (約1300万年前)
標本写真
コメント 2006年(平成18) 8月14日 ほか採集  チョウセンクダマキガイ 

 
細長く先のとがった殻をもち、螺層には顆粒状の肩があり、螺肋は肩で大きく「逆くの字」に方向が変わり、螺肋と縦肋が交差して布目模様を呈していて, 殻口は細長く、水管溝大きく開いている。布志名層からの産出が多いが、大森層からも産出している。
 この種の名称は今回の掲載では 島根大学標本資料類データベースを採用したが、下記資料では色々と命名に変遷が見られる。 Otuka 1934a では Surculites makiyamai Otuka とされて、末広匡基 1979では Surculites (Megasurcula) yokoyamai Otukaと、また坂之上 一 1998では Megasurcula cryptoconides (Makiyama)として記載されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 島根大学ミュージアム  HP
   島根大学標本資料類データベース 閲覧日 2023/08/11
   http://museum-database.shimane-u.ac.jp/specimen/9248

 Otuka, Y.,   1934a:
   Tertiary structures of the northwestern end of the Kitakami mountainland, Iwate Prefecture, Japan.
   Bulletin of the Earthquake Research Institute,
   Tokyo Imperial University, vol. 12, pt. 3, pp. 566?638, pls. 44?51

 末広匡基  1979
   島根県布志名層産中新世貝化石群
   瑞浪市化石博物館研究報告 第6号65-100 plate 10-16

 高安克己  1991
   宍道町ふるさと文庫4
     宍道町が海だったころ
     発行 宍道町教育委員会

 坂之上 一  1998
   坂之上 一貝化石コレクション解説書
   出雲地方の貝化石
   島根県立三瓶自然館刊行




0552 掲 載 日 2023年 8月10日(木)  
標 本 名  Anadara broughtonii Schrenck 
      アナダラ・ブリンドニー  
産  地  千葉県印西市木下地区
時代 地層  新生代 新第四紀 更新世  下総層群(しもうさそうぐん)  木下層(きおろしそう)
標本写真
 

  
コメント 入手日 不明   頂き物   フネガイ目 フネガイ科 アカガイ

 内湾の潮間帯や浅海の砂泥底に浅く潜って生息し、殻には42本前後の放射肋がある。
他のフネガイ科の二枚貝と同様、呼吸色素がヘモグロビンと同様に、鉄ポルフィリンを補欠分子団とするエリスロクルオリンのため、血液が赤く、これが名前の由来となっている。
身が赤いことも特徴の一つで、美味で寿司ネタとして好まれる。 がしかしA型肝炎ウイルスを保有する個体が存在することから、多くの国々は赤貝の輸入を禁止しているらしい。
 この標本にはスピオ科の多毛類ゴカイの仲間が貝殻に穴を開け、孔道をつくりその中に生息していたであろう痕跡が残されている。 これらは棲息時あるいは死後のものか推察するのも楽しいものである。 この標本では殻表側から穿孔していったと考えられる“孔道”の跡が観察される。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)  閲覧日 2023/8/8
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%82%AC%E3%82%A4

 中澤 努・中里裕臣   2007
    関東平野中央部の下総層群:研究の進展と課題
    地質ニュース634号,50 ― 59頁

 青木直昭・馬場勝良  1973 
    関東平野東部, 下総層群の層序と貝化石群のまとめ
    地質学雑誌 79 巻  7 号 p. 453-464




0551 掲 載 日 2023年 8月 3日(木)  
標 本 名  植物化石 色々    
産  地  兵庫県美方郡新温泉町海上
時代 地層  新生代 新第三紀 鮮新世  照来層群  春来泥岩層
標本写真

コメント 1977年(昭和52) 7月17日 ほか採集

 鮮新世の地層とされる照来層群は、兵庫県の北部 鳥取県との境に近い扇の山(1310m)の東側に分布し、北は岸田川と春木川の合流部の出会い付近を最北部として、東は村岡区長坂の矢田川の西の小代地域、また南は氷ノ山や鉢伏山を南限としいてる地域に広がっている。
 この地域の地層は火山学・地質学の方面から多くの研究があり、議論されてきた。 照来層群は古照来湖と呼ばれる火山活動に関係して形成される凹地のカルデラ湖に堆積した地層とされるが、この300万年前に存在したとされるカルデラの地形状の特徴形状は現在は残されておらず、こうした古い時代に形成された火山体で地形状の特徴が削剥されてわからなくなってしまった火山性陥没構造をコールドロンという事を今回勉強させていただいた。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 弘原海 清・松本 隆  1958
    北但馬地域の新生界層序:近畿西北部の新生界の研究(その1)
    地質学雑誌/64 巻 (1958) 759 号

 古山勝彦・長尾敬介  2004
    照来コールドロン K-Ar年代
    火山 第49巻 (2004) 第4号 181-187頁




0550 掲 載 日 2023年 7月27日(木)  
標 本 名  Panopea japonica A.Adams
    パノペア ・ ジャポニカ
産  地  兵庫県南あわじ市阿那賀  丸山漁港沖  海底
時代 地層  新生代 第四紀 完新世  (約4万年前)
標本写真

コメント 2008年(平成20年) 1月5日  入手   ニポンナミガイ

 鳴門海峡北西部(播磨灘側)の海域、阿那賀 丸山漁港沖 の海域で行われる底曳網漁によって海底より曳きあげられたもので
中尾2016 によると、鳴門市島田島沖からも化石が少ないが曳きあげられているとの事。
 阿那賀西方の溝状に深くなった海底の周辺で、ナウマンゾウの化石が発見される場所と一致している。
この海底域から曳きあげられる貝類は絶滅種トウキョウホタテを含む多くの種が認められるが、それらの全貌は今後の研究の課題といえる。 今回紹介するナミガイは数cm大の円礫を含む礫岩層を基質としイタヤガイ(Pecten albicans)等と共に産出する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 両角芳郎編  1998
    瀬戸内海のおいたち  企画展「瀬戸内海のおいたち」展示解説書
    徳島県立33博物館 33p

 中尾賢一  2000
    『瀬戸内海東部鳴門海峡海底産ナウマンゾウ臼歯化石の特徴』
    地球科学 54巻 252-256

 中尾賢一  2016
    鳴門海峡北西部の海底から得られた貝化石とその AMS14C 年代
    徳島県立博物館研究報告 No. 26 : 9-15,




0549 掲 載 日 2023年 7月20日(木)  
標 本 名   Lamprotula cf. uejii Mizuno
    ランプロチュラ  ・ ウエジィ 
産  地  兵庫県美方郡香美町香住区境(今子)
   35°39'20.6"N 134°38'44.8"E
時代 地層  新生代  新第三紀  前期中新世(18MA?)  北但層群 八鹿層
標本写真

コメント 2005(平成17)年 10月30日  採集  イシガイ目、イシガイ科、ガマノセガイ属 

 兵庫県の日本海海岸は景勝地として山陰海岸国立公園に指定され、今では日本初のジオパークとして多くの人々に知られている。 ここ香住港(湾)近郊には、北但層群の下位層である淡水層といわれる八鹿層が分布しており、大型の脊椎動物の足跡化石や淡水棲の貝類や植物化石を産出する。
 香住の東 但馬漁火ラインの今子トンネルの西の旧道入り口付近には崖から落ちてきた転石から保存は良くないが植物やタニシなどの化石が産する。 またこの下の海岸(香住区境)には急深な崖を降りていかねばならないが、足跡化石やイシガイの仲間の二枚貝類が観られる。
 尚、ジオパークや国立公園内の採集活動は転石からの採集でとどめ、露頭を崩しての採集は禁じられている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 松岡敬二 2005
   V.兵庫県香住町産の淡水貝類化石
   香住町足跡化石調査報告書  78-89頁  兵庫県香住町教育委員会社会教育課

 弘原海 清・松本 隆   1958
   北但馬地域の新生界層序:近畿西北部の新生界の研究(その1)
   地質学雑誌 第64巻 第759号 625-636頁




0548 掲 載 日 2023年 7月13日(木)  
標 本 名   Dendrophyllia cribrosa Milne Edwards & Haime
     デンドロフィリア・クリブロサ
産  地  兵庫県南あわじ市阿那賀  丸山漁港沖
時代 地層  新生代 第四紀 完新世   現生標本?   
標本写真
 
コメント 2016(平成28)年 8月15日入手   イシサンゴ目 キサンゴ科 オノミチキサンゴ

 オノミチキサンゴは瀬戸内海に今も棲息するハードコーラルとして知られ、2022年暮れにも山陽新聞社が、笠岡諸島の近海に棲息しているとの記事が紹介され話題となった。
 ここに上げた標本は淡路 阿那賀の丸山港沖の海底から底引き網で上がったもので、木場のプラビトの産地入口に、ご自宅のある漁師さんに頂いた標本です。 これらと共にナウマンの歯やその他の骨、また、トウキョウホタテを数個体、イタヤガイ類やナミガイやニシの仲間等も頂いた。 漁師さんから伺った範囲ではそれぞれの詳しい産地は分からず ただ、それらの化石が含まれていた基質が 粗い礫岩や細礫またシルト質泥岩などがあり同一層準からの物ではないように思われる。
しかし サンゴについては標本に基質となる泥や砂は付いてなく、貝化石などと同じように地層に含まれていなかったと考えられ、 それに ピンクがかった色も残されているので、現在のこのあたりの海底にも棲息しているのではないかと考える事ができる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 明石英幹・藤原宗弘・吉松定昭   2007
   香川県海域で確認されたオノミチキサンゴDendrophyllia cribrosa
   香川大学学術情報リポジトリ 香川生物 (34)  p. 21ー27

 南光重毅   1996
   淡路島の 化石.
   洲本市立淡 路 文化史 料館 ,83P.

 中尾賢一  2000   
  『瀬戸内海東部鳴門海峡海底産ナウマンゾウ臼歯化石の特徴』
  地球科学 54巻 252-256

 中尾賢一  2016
   鳴門海峡北西部の海底から得られた貝化石とその AMS14C 年代
   徳島県立博物館研究報告 No. 26 : 9-15,




0547 掲 載 日 2023年 7月 6日(木)  
標 本 名   Chlamys sp.
     クラミス属の一種の未詳種
産  地  兵庫県淡路市楠本東
時代 地層  新生代 古第三紀 始新世-漸新世   神戸層群 岩屋層   
標本写真

コメント 1979年(昭和54年) 3月27日 採集   イタヤガイの仲間

 神戸層群はかつて中新統とされていたが1990年代の中ごろより堆積年代の見直しが進んで、淡路島の北端部に分布する岩屋層でも、海棲微化石および貝類化石から始新統であることが明らかとなっている。
 この地は当時フェリー下船後、直ぐに立ち寄れる産地で度々訪ねている。 この時も瑞浪化石博物館の西本博行(1934年〜2004年)先生を伴っての採集だった。 景勝地として知られている絵島も岩屋層の堆積層であり、ここでは海水面近くの潮間帯部に化石が含まれているが、海水や波浪によって浸食され風化が激しく一見して化石は見えない。
 この絵島より南に下り大磯の集落に入った付近の国道28号線西の丘陵部にはカキとイタヤガイの密集層が見られる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 松浦 浩久, 佐藤 喜男, 尾崎 正紀  1994
   古第三 紀神戸層 群のフィッショントラック年代と産出海生貝化石
   日本地質学会学術大会 第101年学術大会(94' 札幌)講演要旨集 p.88 91

 山本 裕雄, 栗田 裕司, 松原 尚志 2000
   兵庫県淡路島北部の第三系岩屋層から産出した始新世石灰質ナンノ・渦鞭毛藻化石とその意義
   地質学雑誌/106 巻 5 号 p. 379-382

 広島大学 地研HP    閲覧日 2023/6/25
   広島大学教育学研究科、自然システム教育学の吉冨研究室
   地学研究室 ・巡検ガイド (20190803の項)
   http://1604-016.a.hiroshima-u.ac.jp/chiken/guide/wiki.cgi?page=20190803




0546 掲 載 日 2023年 6月 29日(木)  
標 本 名   Tresus keenae (Kuroda & Habe)
     トレサス・キーナエ
産  地  愛知県田原市高松町羽根〜井戸屋 高松海岸
時代 地層  新生代 第四紀 中部更新世 渥美層群 豊橋層   
標本写真
 

 

 
コメント 2016年(平成28年) 5月30日 採集  マルスダレガイ目バカガイ科 ミルクイ

 ミルクイは二枚貝の中で「値段の王様」と呼ばれ寿司屋では、1個で1,000円ほどするらしく。甘みがあり、シコッとして、柔らかく上品な存在感があるようで、今ではほとんど水揚げがなく、我々の口にはなかなか入らない。
同様の水管を持つナミガイ( Panopea sp.)は 白ミルとしてミルクイの代用品として広く市場に出ている。
 これまで採集してきた中新世の地層からはナミガイの仲間の産出は多く見てきたが、ミルクイの産出は知らない。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 瀬戸内圏研究センター    閲覧日 2023/6/25
   香川大学瀬戸内圏研究センター講演会in塩飽本島  本城 凡夫 教授 「貝との貝(会)話」 
   http://www.kagawa-u.ac.jp/setouchi/index-20101204-1.html

 コトバンク      閲覧日 2023/6/25
   https://kotobank.jp/word/%E3%83%8A%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%82%A4-166736

 川瀬基弘・市原 俊・河合秀高  2015 
   中部更新世渥美層群の軟体動物化石
   瑞浪市化石博物館研究報告 No.41 p. 51?131, 34 pls., 1 fig., 2 tables.




0545 掲 載 日 2023年 6月 22日(木)  
標 本 名   Pitar sp. cf. kyushuensis Nagao
  ピタール 属の一種  キュウシュウエンシスに似ている
産  地  沖縄県石垣市桃里 新石垣空港北 砕石鉱山入口
時代 地層  新生代 古第三紀 始新世  宮良層(宮良川層)  
標本写真





コメント 2015年(平成27年) 1月13日 採集  マルスダレガイ科  ユウカゲハマグリ属

 石垣島の新石垣空港北部の星野地区南部に上部始新世 宮良層群 宮良川層の石灰岩が分布しており、始新世の化石の産出がある。 現地の案内者もなく、ネットを使っての文献調査で訪ねた。
 現地へ行ってから砕石鉱山の地権者との電話で見学採集のお願いをする。 有難いことに、鉱山入口に砂質石灰岩の不要岩石を集積しているのでそれで良いならと入構の許可を戴いた。
  管理人の備忘録 2015年度 1月12−15日の項 参照
  http://pravito.web.fc2.com/skcoll-197web.htm
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 中川 久夫・土井 宣夫・白尾 元理・荒木 裕  1982
   八重山群島 石垣島・西表島の地質
   東北大學理學部地質學古生物學教室研究邦文報告 第84巻 p. 1-22




0544 掲 載 日 2023年 6月 15日(木)  
標 本 名   Anadara (Hataiarca) kakehataensis Hatai et Nishiyama
   アナダラ (ハタイアルカ) ・ カケハタエンシス 
産  地  石川県輪島市町野町徳成
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期    東印内層  
標本写真





コメント 1986年(昭和61年) 7月13日  採集    フネガイ科  カケハタアカガイ

 この産地のカケハタアカガイは既に0183 掲載日 2016年3月31日で紹介させていただいている。
これらの種の、靭帯(じんたい)面には山形あるいは並行した条溝が見えるのが特徴とされているが、過去の採集品を再検討する中で、クリーニング中に図1bの様な構造が出てきた。
これは靭帯面の表面の条溝装飾の下に、ヒンジに数多く並んだ櫛歯状の構造が隠されていたもので、剖出作業で風化が進んだ個体で条溝を削り取ってしまった結果現れたものである。
 尚、図2の標本は 勝田層群の吉野層で産出したものを参考として挙げた。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

                    ━




0543 掲 載 日 2023年 6月 8日(木)  
標 本 名   Tosapecten cf. suzukii (Kobayashi)
   トサペクテン cf  スズキイ   
産  地  福井県大飯郡高浜町難波江西三松
時代 地層  中生代 三畳紀後期 カーニアン  難波江層群  
標本写真



コメント 1999(平成11)年 5月 9日 採集      イタヤガイ科  トサペクテン属

 同産地の T. nabaensis は想い出の化石(2)の 0053 掲載日 2013年10月3日で既に紹介している。この産地では、殻は全て溶け去ったキャスト(凹型)で、また変形を受けたものが多い。
 また、同産地で、T. suzukiiT. okadai などの産出の記載もされており、それに他の産地からも多くの Tosapecten sp. の亜種が報告記載もされ、分類同定を困難にしている。イタヤガイ科の分類は非常に煩雑を極め、素人にとっては難しい。
T. suzukii は殻頂角はT. nabaensis に比べ大きく広がり 放射肋数も14〜15本見られる。 下画像のものは肋上に溝があり、これらが亜種とされている特徴なのか、またT. okadai とすべきものなのか、先行研究論文を再度調査して調べていきたい。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 日本古生物標本横断データベース   閲覧日 2023/6/3
     Tosapecten 属

 日本古生物学会 2004
     化石研究グループの紹介
     東海化石研究会 −蜂矢喜一郎−
     日本古生物学会 『化石』 75 66-70

 Keiji NAKAZAWA 1958
     The Triassic System In the Maizuru Zone, Southwest Japan
     MEMOIRS OF THE COLLEGE OF SClENCE, UNIVERSITY OF KYOTO, SERIES B,
     Vol. XXIV, No.4 Geology and Mineralogy,Article 2 




0543 掲 載 日 2023年 6月 1日(木)  
標 本 名   Pirenella pupiformis Ozawa and Reid
   ピレネラ ・ プピフォミス   
産  地  上画像 兵庫県姫路市広畑区小松町 地下2.5m
 下画像 沖縄県八重山郡竹富町古見 前良川河口
時代 地層  上画像 新生代  第四紀  完新世   播磨海成砂質粘土層 
 下画像 現生  
標本写真



コメント 上画像 1986(昭和61)年 12月? 日 採集    ウミニナ科 カワアイ
下画像 2017(平成29)年  7月19日 採集

  ヘナタリ科 (Cerithidea sp. ) の仲間として、長年分類されてきたが、2016年に改めて新種として学名が付けられた。
干潮時に干潟を這いまわる。 摂餌後は砂泥上でじっとしているが、満潮時には砂泥の中に潜る。キバウミニナ科の巻貝はデトリタスを摂食し、汽水域や塩分の少ない内湾的環境の砂泥底ないし泥質の干潟に生息しており、日本の干潟では最も普通に見られる巻貝である.
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 真木英子・大滝陽美・冨山清升   2022
    鹿児島県喜入干潟おけるカワアイ(ウミニナ科)の生活史
    鹿児島県自然環境保全協会  RESEARCH ARTICLES Nature of Kagoshima Vol. 48




0542 掲 載 日 2023年 5月25日(木)  
標 本 名   Sinum yabei Oyuka
     シヌム ・ ヤベイ
産  地  島根県出雲市上塩冶町菅沢  斐伊川(ひいかわ)放水路 工事現場内
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世後期   出雲層群 布志名層       
標本写真





コメント 2006年(平成18)  8月 14日  採集   タマガイ科 ヤベミミガイ

 タマガイ科の仲間であるが、螺塔は小さく、体層が大きく扁平なので全体としては球形とはいえない。殻口は大きく卵形。螺塔部の各体層の縫合部は浅く目立たない。 また、殻表には多くの螺条と成長線が交差し布目状になる。 サイ孔は内唇滑層に覆われて裂け目状。 現生種では、ツツミガイ・フクロガイ・ツガイ・ヒメミミガイなどが代表種として知られている。
 この日の巡検採集の後、2006年9月6日、長年の石友宮本淳一氏の訃報があった。この年の秋 宮本氏と一緒に斐伊川(ひいかわ)放水路工事現場内での巡検を計画していたのだが、クモ膜下出血で帰らぬ人となった。享年59歳
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 坂之上 一 1998  
    坂之上 一 貝化石コレクション解説書
    出雲地方の貝化石   
    刊行 島根県県立三瓶自然館

 吉良哲明 S52年 改訂23刷り発行
    原色日本貝類図鑑  保育社刊

 波部忠重 S52年 15刷り発行
    続原色日本貝類図鑑 保育社刊




0541 掲 載 日 2023年 5月18日(木)  
標 本 名   Yoldia sagittaria Yokoyama
      ヨルディア  ・ サジタリア         
産  地  三重県津市白山町佐田
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   一志層群 大井層 三ノ野部層    
標本写真
 

コメント 1980年(昭和55)  4月 27日  採集    ロウバイガイ科 ユナガヤソデガイ
 
 瑞浪層群で報告のある Yoldia notabilis Yokoyama (フリソデガイ)に似るが、殻の大きさは少し大きく、殻頂は中央寄り、後脊縁の振袖状の反りは小さく直線的。 前後の脊縁には多くの小歯が並ぶ、 殻の膨らみは小さい。 殻表の成長輪脈は Y.notabilis 程の密ではなく腹縁部ではうねりを持つ。 この種は深所や寒流系の水温が低い環境を生息地としている。
 尚、一志層群ではY.notabilis の産出も観る。
 産地は近鉄大阪線榊原温泉口駅の西、線路の沿い南側で、伊藤忠商事が住宅地を造成していた工事現場で、部分的にこの種を多産したところがあった。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 糸魚川淳二・柴田 博・西本敏行 1974
   瑞浪層群の貝化石
   瑞浪化石博物館 第1号 開館記念号 「瑞浪の地層と化石」 ―別刷―
   
 Yokoyama, M. 1926c
   Molluscan fossils from the Tertiary of Mino. Journal of the Faculty of Science,
   Imperial University of Tokyo, Section 2, vol. 1, pt. 7, pp. 213?227, pl. 28. (Reference No. 0480)

 Seiichi Suzuki, Akira Sakai and Saloru Uozumi 1983
   Molluscan Fossils from the Neogene Deposits Scattered Along the Western Wing of the Hidaka Mountains, Hokkaido
   北海道大学理学部紀要, 20(2-3), 225-248

 松原尚志・太田敏量・中村雄紀・兼子尚知・伊藤泰弘  2020
   北海道津別地域の最下部中新統津別層の新産地から得られた深海性貝類化石群集.
   北見博物館研究報告, no. 1,  p. 1−27.




0540 掲 載 日 2023年 5月11日(木)  
標 本 名   Anadara (Diluvarca) suzukii (Yokoyama)
      アナダラ (ディルヴァルカ) ・ スズキイ         
産  地  高知県安芸郡安田町唐浜
時代 地層  新生代 新第三紀 鮮新世    唐の浜層群 穴内(あなない)層    
標本写真




 
コメント 1982年(昭和57)  10月 10日  採集    フネガイ科 スズキサルポウ

 フネガイ科(Family Arcidae)の外形は普通前後に長く、殻は厚く真珠層はない。 殻は通常大きく膨れ、菱形の靭帯(じんたい)面があり、山形あるいは並行した条溝を刻んでいる。直線的なヒンジには多くの櫛歯を刻んでいる。殻表には太い放射肋が15〜35本前後(種によって本数の違いはある)刻まれている。
Matsubara 2004 は 故仙頭鷹雄氏によって人博がオープンした1992年に同館に寄贈された郷里の唐の浜層群産鮮新世化石 251点の標本を整理されたものです。
 同氏とは1976年に一志層群のフィールドでお会いして以来およそ20年間、色々とご指導いただきました。 1995年(阪神淡路大震災の年)2月に帰らぬ人となり(79歳)、お酒の好きな方で、フィールドにポケットボトルを持参され、採集活動をしている後進の私達を見守る様に、岩場で座りにこやかにされていた光景が想いだされます。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Takashi Matsubara  2004
    Catalogue of the Pliocene Mollusca from the Tonohama Group in Kochi Prefecture, Shikoku, Japan, in the Museum of Nature and Human Activities, Hyogo (Takao Sendo Collection)
    Nature and Human Activities, 8, 49-95

 HIROSHI NODA   1965
    491. SOME FOSSIL ANAIJARA FROM SOUTHWEST JAPAN
    Trans. Proc. Palaeonl. Soc. Japan. N.S.. No.59. pp. 92-109. pis. 10.11. Sepl. 30




0539 掲 載 日 2023年 5月 4日(木)  
標 本 名   Cardilia toyamaensis Tsuda
      カルディリア ・ トヤマエンシス         
産  地  岡山県新見市西方  堀越地区
     34°59'40.1"N 133°26'03.2"E
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   備北層群 下部砂岩層     
標本写真
  

 



コメント 1980年(昭和55)  3月 30日 ほか採集   トヤマキサガイ

 上の4つの画像は同一個体
 この地を知ったのは今から45年程前になる。下に上げた論文(田口栄次ほか1979)で瑞浪化石博物館から1979年末に出版された館報が手元に届いたのが翌年の3月中頃、その後2週間もしないうちに現地を確認。
 この地区で矢橋部品KKが、この付近を造成、新見工場が操業を始めた。 それに引き続き同工場の北西で丘陵地を削り谷を埋め立て住宅地ほかの造成工事が始まった。 この地をはじめて採集に入ったのもまさにこの時期で、現場の造成地の備北層群の下部砂岩層の暗灰色の泥岩には、多くの保存の素晴らしい貝化石が白く浮き上がり点々と表出していた。
 ここに紹介する小さな二枚貝、トヤマキサガイは、殻の装飾が前後で大きく違う。殻は良く膨れ前方域は成長輪脈がある、後方域には殻頂から放射肋がある。殻頂は前方に巻き込むように片寄り、合殻を前方から見るとハート型の形状をしている。 以上の様に独特の形状から良く目立つ。同種はこの産地の近くの新見自動車教習所へ向かう道筋の下を流れる小さな水路の底に見える泥岩層に合弁殻が多量に含まれるのも確認できた。 また津山・勝田地域の勝田層群の数か所の吉野層の砂岩層の露頭からも確認している。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田口栄次・小野直子・岡本和夫 1979
   岡山県新見市および大佐町における中新世備北層群の貝化石群集
   瑞浪市化石博物館研究報告 第6号 p. 1-15  pl. 1-4

北海道教育大学の松原尚志先生による田口氏の追悼文を追加 (2023/4/28)
 松原尚志 2023
   追悼:田口栄次氏(1956−2023)−略歴・研究業績・新タクサ目録−
   瑞浪市化石博物館研究報告第50巻第2号(補遺)

   http://www2.city.mizunami.gifu.jp/bulletin/list/27/list_jp.html

0538 掲 載 日 2023年 4月27日(木)  
標 本 名   Vicarya yokoyamai Takeyasma
      ビカリア ・ ヨコヤマイ         
産  地  図 示 (後記)
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期
   奈義・津山皿川 勝田層群 吉野層  
   鳥取つく米    鳥取層群 岩美層 諸鹿礫岩部層
   新見大佐     備北層群 下部砂岩層     
標本写真

コメント 採集年月日 省略   

 上記の 4か所の産地の状況を紹介する。
●岡山県勝田郡奈義町柿 現奈義町立ビカリアミュージアム敷地内 (現地最終確認日 2022/3/24)
  養鶏場建設の為 地区所有の丘陵他を造成、 ビカリアが多産した。その後鳥インフルエンザによって養鶏所を閉鎖、跡地に奈義町が博物館類似施設ビカリアミュージアムをオープンさせ、敷地内に数ヶ月に一度、他所から運び込こまれた化石を含む土砂を盛り、常時、化石採集の疑似体験ができる。多くの家族ずれがビカリアを始め貝類やスナモグリなどの甲殻類の採取を楽しんでいる。 尚 同施設には残念なことに専門の先生は配属されていず地元の老人会「柿ビカリア会」が管理している。
●岡山県津山市高尾 皿川河床 (現地最終確認日 2023/4/9)
 1998年10月の台風10号による洪水の災害復旧工事で、皿川の河川拡幅改修工事が大規模に行われ、水田下にあった勝田層群吉野層の化石を多く含む泥岩層が出現した。 工事で設けられた井堰によって平時川床は水没している。しかし化石含有層は、25年近く経った今でも、治水利用で水位が下がった時には、ビカリアが当初ほど数は見なくなったが、今でも河床に点々と表出している。
●鳥取県八頭郡若桜町つく米 (現地最終確認日 2022/8/8)
 つく米は限界集落とされ朽ち果てた建屋が目立つ、氷ノ山山麓を源流とし渓谷をつくりながら流れるつく米川、つく米集落近くの谷底にある権現滝の滝つぼ横に産地はある。 夏場の採集は滝のミストが 暑さを忘れさせる。 現地は礫層と小礫を含む砂岩層の互層が見られ、ビカリアはこの暗灰色の砂岩層から圧力変形を受け扁平に潰されたものを多産する。
●岡山県新見市大佐田治部字戸谷 (現地最終確認日 2022/11/4)
 中国高速自動車道の大佐SA(スマートインター)の上り線側の北側下の水田用水路(大畑川)岸及び河床の小さな露頭、ここも昨今の耕作放棄地増加傾向に倣い、極小水田は放棄され、草林になり、それに伴って農業用水路も整備されず荒れている。過っては河床の灰色の泥岩層にビカリアの棘の部分が水流によって削られ点々と見えていたのだが、川底のあちこちに土砂が堆積し、観ることもなくなった。

Vicarya yokoyamai Takeyama と Vicarya callosa japonica Yabe et Hatai
縫合直下の肋上の顆粒がトゲ状突起へ変化する位置によって、早いものを V.japonica 遅いものを V.yokoyamai とされていたが、最近ではすべて V.yokoyamai とされることが多い。(干潟系化石の館 https://higatakaseki.web.fc2.com/dosyu/vaF/va.html より引用)

 田口栄次氏 67歳 逝く  
    2023年2月17日  新見市のご自宅で 誰にも看取られず心臓発作のため 一人逝かれました。 合掌
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田口栄次・小野直子・岡本和夫 1979
   岡山県新見市および大佐町における中新世備北層群の貝化石群集
   瑞浪市化石博物館研究報告 第6号 p. 1-15  pl. 1-4
 田口栄次  1981
   岡山県勝田層群からの Geloina および Telescopium を含む貝化石群集
   ― 特に本邦中新世における汽水性貝類の帯状分布について  (英文)
   瑞浪市化石博物館研究報告 第8号 p. 7-20  pl. 2-4
 田口栄次  2002
   岡山県の中新統勝田層群の層序・軟体動物群・古環境  (英文)
   瑞浪市化石博物館研究報告 第29号 p. 95-133  pl. 1-8
 KANNo,S.  1986
   Revision of genus Vicarya.(Gastropoda)from the Indo−Pacific region.
   Bull.Joestsu Univ.Educ.,5(3).31−5




0537 掲 載 日 2023年 4月20日(木)  
標 本 名   Pitar kyushuensis (Nagao)
     ピタール ・ キュウシュウエンシス    
産  地  長崎県長崎市伊王島町沖ノ島 畔(あぜ)
時代 地層  新生代 古第三紀 始新世後期  伊王島層群 馬込層
標本写真



コメント 2004年(平成16) 10月 9日 採集  マルスダレガイ科 Veneridae  キュウシュウハマグリ

 九州北西部の古第三系は石炭産業の華やかな頃  層序や産出化石が研究されてきた。伊王島や高島や香焼島の地層も炭層の調査研究で調べられてきた。
 P. kyushuensis は沖ノ島の畔では多産し普通種といえる。殻の外形は丸みを帯びた亜三角形で、殻頂は中央より前方に片寄り、小月面は明瞭で、殻厚は Meretrix sp. ほどの厚さはない。殻表には多数の成長輪脈が見られ、放射肋等はなく平滑といえる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 水野 篤行 1962
    西日本地域における古第三系および下部新第三系の古生物年代学的研究:第1報,
    西彼杵半島周辺の古第三系の層序と貝類化石群について
    西日本地域における古第三系および下部新第三系の古生物年代学的研究:第2報,
    西彼杵半島周辺の古第三系の対比と古生物年代学的区分について
    第1報   地質学雑誌  68 巻 806 号 p.640-648
    第2報   地質学雑誌  68 巻 807 号 p.687-693

 三木 孝 1981
    西九州古第三紀層最下部層の再検討
    九州大学理学部研究報告. 地質学. 14 (2), pp.63-71

 山本 栄 一 ほか 1967
    高 島 炭 田 三 ッ 瀬 お よ び 端 島 沖 海 域 の 探 査
    鉱山地質 17(84), p.200-213




0536 掲 載 日 2023年 4月13日(木)  
標 本 名   Turritella kadonosawaensis Otuka
     ツリテラ ・ カドノサワエンシス    
産  地  島根県浜田市国府町石見畳ヶ浦(千畳敷)
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  唐鐘層 畳ヶ浦砂岩部層 
標本写真

コメント 1981年(昭和56) 8月13日  採集  カドノサワキリガイダマシ

 畳ヶ浦砂岩部層は唐鐘層の最上部に位置し,模式地である石見畳ヶ浦(千畳敷)の海岸に沿って、列をなして石灰質コンクリーション(ノジュール)が多く見られ、景勝地として天然記念物に指定されている
畳ケ浦砂岩層の下部にはT. kadonosawaensis が集中して多産するところが多く見られる。 
また、魚類のエイによる食痕とされる、円形に皿状に貝殻が集中した産状があちこちで見られる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 中条 武司・中西 健史・前島 渉  1993
     島根県浜田北方の中期中新世唐鐘累層
     地球科学 47巻 6号 p473−p484

 高橋 健一・近藤 康生・小竹 信宏  2008
     中部中新統下部唐鐘累層における海進海退サイクルの内部構造と堆積作用の変化に応答した底生動物化石群集の変遷
     地質学雑誌 第 114 巻 第 9 号 474−492

 都留 俊之  1983 
     島根県浜田市唐鐘累層産の中期中新世貝化石群集
     瑞浪市化石博物館研究報告 10号 41-83

 島根半島・宍道湖中海ジオパーク HP 閲覧日 2023/4/8
     https://kunibiki-geopark.jp/
     石見畳ヶ浦の地質など
     https://kunibiki-geopark.jp/geo-study/2019/03/09/tatamigaura01/




0535 掲 載 日 2023年 4月 6日(木)  
標 本 名   Aturia minoensis Kobayashi
     アツリア・ミノエンシス    
産  地  島根県松江市宍道町下白石
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世後期    出雲層群 布志名層 
標本写真
 

 


コメント 1981年(昭和56)10月24日  採集   オウムガイ  

 40年以上前に採集した標本 久しぶりに引出しから出しクリーニングに再挑戦、過っての極細タガネでの剖出ではこれが限度だったのかオウムガイの特徴が現れていない。
 露頭での発見時、カキ化石と思い、採集がぞんざいになり、標本が3つに割れ、速乾性の二液性のエポキシ樹脂で接着していたが、そのはみ出したボンドが黄色く変色して見苦しい標本だった。
 殻は圧力変形を受けているものの、特徴は読み取れるものになった。 特に殻内部の様子が読み取れ、連室細管の口まで観察できた。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Teiichi Kobayashi  1960
   Some Miocene Nautiloids from Shimane and Toyama Prefectures, West Japan
   Science Reports, Tohoku University, Sendai,Japan. 2nd Ser.(Geol.),Vol.,No.4, pp.117-127, pls. 11-12 3text-figs.,

 都留 俊之   1987
   島根県・中新統益田層群から産出したAturia
   島根大学地質学研究報告 6.p95-100

 作本 達也・瀬戸 浩二・高安 克己 1996
   島根県松江市の中新統布志名層より産出した頭足類化石とその古環境学的意義
   地球科学 50巻 408-413




0534 掲 載 日 2023年 3月30日(木)  
標 本 名   Glycymeris cisshuensis Makiyama
         グリキメリス・キッシュウエンシス  (2023/03/30 編集)
産  地  三重県津市美里町三郷 (分郷)
  34°43'60.0"N 136°22'37.8"E
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世   一志層群 大井層 三ケ野部層
標本写真

コメント 1983年(昭和58) 10月 10日 フネガイ目, タマキガイ科, タマキガイ属 キッシュウタマキガイ

 この種は この産地では多産しており、普通種といえる。 ただ殻表は風化を受けて、殻の殻表側 (殻外面側) が溶けているものも多く見られ、殻表には装飾の成長輪脈と交差する多くの放射肋が特徴的に見られる。また殻頂はわずかに前方によっていて内側に向いている。 櫛状の歯が並び 腹縁部の内部側の端縁はギザギザに刻まれている。
 この種は当初瑞浪産出のもので Itoigawa & Shibata 1975で G. ikebei と記載されたが Matsukuma 1986 で G. cisshuensis の シノニム (synonym) であるとされた。 (2023/03/30 編集)  
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Junji Itoigawa & Hiroshi Shibata  1975
    New Miocene Pelecypods from the Mizunami group Mizunami City, central Japan
    (瑞浪層群産二枚貝類新種)
    瑞浪市化石博物館研究報告 第2号 p15-34 PL.6,7,8

 Akihiko Matsukuma 1986
    Glycymeris cisshuensis (Mollusca : Bivalvia), an ancestral species of temperate glycymeridids from Japan and Korea
    (日本周辺タマキガイ類温帯固有種の祖先型,キッシュウタマキガイ)
    瑞浪市化石博物館専報 第6号  59-74  Plate 6, 7




0533 掲 載 日 2023年 3月23日(木)  
標 本 名   Calliastoma simane Nomura & Hatai 
         カリアストマ・シマネ
産  地  島根県出雲市上塩冶町菅沢  斐伊川(ひいかわ)放水路 工事現場内
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世後期   出雲層群 布志名層
標本写真

コメント 2009年(平成21)  5月 5日  ほか採集    ニシキウズガイ科 シマネエビスガイ

 斐伊川(ひいかわ)放水路の工事 ほぼ工事が完了し、この年で訪問は最後になった。
この産地では、多くの保存の良い貝類化石が多産し、10年近く楽しませていただいた。
 掲載標本は10mm前後の小さな貝だが、ニシキウズガイ科の独特の真珠光沢が見られ、現場の砂岩層に含まれる段階でも目立つものでした。 この産地の布志名層の産出化石は地層中にある場合は殻の形状は素晴らしい状態で残されているのですが、殻自体は相当脆く、振動等で、殻頂は採集時に壊れてしまったが、殻表の螺肋はよく残されている。

 この2個体のニシキウズガイ科について、ご専門の先生からご指導があり、再度文献調査をしています。(2023/03/29追加記入)
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 坂之上 一 1998  
    坂之上 一 貝化石コレクション解説書
    出雲地方の貝化石   
    刊行 島根県県立三瓶自然館




0532 掲 載 日 2023年 3月16日(木)  
標 本 名   カンザシゴカイ科の仲間の棲息管   
産  地  兵庫県南あわじ市灘地野  地野海岸
時代 地層  中生代 白亜紀後期  マストリヒチアン階  和泉層群 下灘層
標本写真



コメント 採集年月日 不詳   環形動物門 多毛綱 ケヤリムシ目 Serpulidaeカンザシゴカイ科

 ゴカイの仲間で、白いグネグネした管状の棲管を作り、その先端からエラ(鰓冠(さいかん))を出して呼吸と摂餌を行う
大きくても棲管の直径が5mmほどのもの 海岸や河口の岩の表面やカキの貝殻などに付着している。鰓冠より下の体は〜ゴカイの名前の通り、短いゴカイ類のような姿をしており、非常によく伸び縮みし、またちぎれやすい。
食性は、流れてくるプランクトンや浮遊物をキャッチ大阪湾にして餌にしている。
 大阪海遊館によると日本では現生種で外来種のナデシコカンザシゴカイが大阪湾にいるとのこと。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 浦安三番瀬水槽管理人の浦安水辺の生き物図鑑  閲覧日 2023/03/11
     https://sanbanze-suisou.icurus.jp/
     ゴカイのなかま > カンザシゴカイの一種@
     https://sanbanze-suisou.icurus.jp/bristleworm_2/kanzashigokai1
 大坂海遊館          閲覧日 2023/03/11
     海遊館とつながる> ブログ「海遊館日記」>ナデシコカンザシゴカイ
     https://www.kaiyukan.com/connect/blog/2017/11/post-1441.html




0531 掲 載 日 2023年 3月 9日(木)  
標 本 名    Pirenella yatsuoensis (Tsuda)
   ピレネラ・ ヤツオエンシス
産  地  岡山県勝田郡奈義町柿 (荒神谷) 奈義ビカリアミュージアム敷地内 (TA-8)
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世   勝田層群  吉野層
標本写真




コメント 1982年(昭和47)  3月21日  ほか採集   Potamididae キバウミニナ科 (フトヘナタリ科)ピレネラ属

 勝田層群からは 成貝で大きさが2cm前後の微小巻貝を多くの種をみる。
この度紹介する ヤツオヘナタリは、日本各地のビカリア産地でもごく普通に多産し、多くの研究者に注目され 研究されてきたが、その結果 Cerithidea (Cerithideopsilla) tokunagai Otuka, 1938, Cerithideopsilla yatsuoensis Tsuda 1959, Cerithidea (Cerithideopsilla) minoensis Itoigawa 1960, Cerithidea (Cerithideopsilla) tokunariensis (Masuda) 1966. 多くのシノムニが存在する。  最近では Cerithidea (Cerithideopsilla) 属をPirenella 属へ変更する研究者が出てきた。
Pirenella sp. に関しては下記のZootaxaのホームページを参照ください。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 DAVID G. REID & TOMOWO OZAWA, 2016
     The genus Pirenella Gray, 1847 (= Cerithideopsilla Thiele, 1929) (Gastropoda: Potamididae)in the Indo-West Pacific region and Mediterranean Sea
    INDO-WEST PACIFIC AND MEDITERRANEAN PIRENELLA Zootaxa 4076 (1) c 2016 Magnolia Press

 干潟系化石の館 ―Arcid-Potamid 群集記念館―   閲覧日 2023/3/7
   
https://higatakaseki.web.fc2.com
    https://higatakaseki.web.fc2.com/tubuyaki/cerithidea/tokunariensis2.htm

 中川登美雄・福井県立羽水高等学校自然科学部 2020
   福井県福井市国見町の国見層から産出した前期中新世潮間帯貝化石群集
   瑞浪市化石博物館研究報告 第 47 号, 65-87, 4 pls., 7 figs., 5 tables




0530 掲 載 日 2023年 3月 2日(木)  
標 本 名    Gaudryceras get.et.sp.indet.   
   ゴードリセラス属の未決定種
産  地  兵庫県南あわじ市灘仁頃  
時代 地層  中生代 白亜紀後期  マストリヒチアン階   和泉層群 下灘層
標本写真



コメント 1, 2. 1996年(平成8) 4月 6日  3. 1994年(平成6) 1月 3日  4.  2012年(平成24) 11月 18日 採集 
   ゴードリセラス属の未決定種
 学名に付く省略符号とその意味(原色化石図鑑 保育社刊より抜粋引用)
符号 ラテン語又は英語 意味 用例
aff. affinis ・・・に似ている Pachydiscus aff. kobayashii Shimzu
cf. confer ・・・iに比較される Nanonavis cf.sachalinensis (Schmidt)
gen.et.sp.nov. genus et species novum 新属・新種 .
gen.et.sp.indet. ‥・属の未決定種 Gaudryceras get.et.sp.indet.
gen.nov. genus novum 新属 .
indet. indeterminata 未決定
M.S. manuscriptus 手記で .
s.l. sensu lato 広義の .
s.s. (s.str.) sensu stricto 狭義の .
sp. spectes 種 (単数) Anomia sp.   アノミア属の一種
spp. spectes 種 (複数) .

 灘仁頃では普通種のアンモナイトだが この海岸の岸辺の足元の露頭を覆っている礫が、最近の台風等の波浪で殆ど動かず、過ってほど化石を含んだ新たな石が見られない。
 ここで最も多産する保存の良い二枚貝類の Eriphyla japonica と共に最近では採集が難しくなっている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 益富寿之助・浜田隆士  1955 7版刷
     原色化石図鑑  巻末解説    216-221  保育社刊




0529 掲 載 日 2023年 2月23日(木)  
標 本 名    Nipponomarcia nakamurai Ikebe
      ニポノマルシア・ナカムライ
産  地  京都府綴喜郡宇治田原町大字奥山田茶屋 大石川河床
時代 地層  新生代 新第三紀  中新世中期  綴喜層群  奥山田層  宮村砂岩部層
標本写真



コメント 1972年(昭和47) 10月29日採集       ナカムラスダレハマグリ

 ナカムラスダレハマグリは中期中新世(16.0 - 13.7 Ma)の絶滅種で滋賀県の鮎川層群のものを模式標本として池辺 1941によってKatelysia属(スダレハマグリ属)から独立して新属を提唱された。 瑞浪層群・綴喜層群・鮎川層群・阿波層群等からは多産する。また勝田層群からも産出は少ないが知られていらしいが確認できていない。
 ことに、綴喜層群宮村砂岩部層では非常に優勢で、密集型で産出し、 Dosinia nmnurai Otuka , Nassarius simizui Otuka , Protorotella yuantaniensis Makiyama 等を伴う。
また綴喜層群の個体は大きく,塩谷砂岩部層の個体は宮村砂岩層のものに比べて丸みが強い(糸魚川 1955)。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 糸魚川 淳二  1955
    Katelysia (Nipponomarcia) nakamurai Ikebe の変異について
    貝類學雜誌ヴヰナス  18 巻 3 号 p. 176-184




0528 掲 載 日 2023年 2月16日(木)  
標 本 名    Cyclina hwabongriensis Yoon et Noda
      サイクリナ・ファボングレンシス
産  地  岡山県津山市上野田  広戸川河床
時代 地層  新生代 新第三紀  中新世中期   勝田層群  吉野層
標本写真


 
コメント 1992年(平成4) 4月19日採集   マルスダレガイ科 Cyclina(オキシジミ)属

 殻は丸形で成貝になるほど殻幅は大きく膨れ厚くなり丸みを増す。殻頂はほぼ中央よりで、頂先端は殻前方に傾く。殻表には成長輪脈がはっきりと見られ、殻が成長すれば前背縁側の殻表には殻頂から放射状の縮れた肋が目立つようになる。また、前縁部・腹縁部・後縁部の殻端部は小さく刻まれている。
 勝田層群では奈義町近郊の吉野層の泥岩層からの産出が多く、津山市街地から西方に分布する吉野層からは産出がほとんど見られず津山市高尾では Cyclina japonica の産出が卓越している。
備北層群では新見市辻田で保存の良い標本が多産した。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田口栄次・小野直子・岡本和夫 1979
    岡山県新見市および大佐町における中新世備北層群の貝化石群集
    瑞浪市化石博物館研究報告 第6号 p. 1-15 Plate 1-4

 Eiji Taguchi 2002  
    Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan 
    Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 29, p. 95-133, 8 pls., 33 figs., tables.




0527 掲 載 日 2023年 2月 9日(木)  
標 本 名    Anomia sp.
   アノミア属の一種
産  地  岡山県勝田郡奈義町中島東(福元)
時代 地層  新生代 新第三紀  中新世中期   勝田層群  吉野層
標本写真

コメント 1992年(平成4) 4月19日採集    ナミマガシワ科ナミマガシワ属

 殻の表面には放射肋に見える筋状の隆起が出るものと、ないものがあり、膨らんだ左殻を表にして右殻を内側にして付着する。
右殻は扁平で、殻頂部に大きな孔があり石灰化した足糸が出る。 これはカキ類の生態とは反対で カキ類は左殻本体で、Anomia sp. は右殻で石や岩、水面下の石や岩肌とか小枝に足糸で取りついて生息している。
 化石では、この右殻の産出をなかなか見ない。 死後左殻は他物に取り付いた右殻から容易に剥がれてて砂に埋もれて化石化するが足糸で他物に取り付いた岩や小石、木の枝などと流されずその場に残されるものが多いことに原因があると思われる。未だに この様な証拠となる右殻の化石を採取できていない。尚、現生種の Anomia chinensis Philippi, 1849 ナミマガシワ としている研究者が多い。
 また、これに似た仲間にナミマガシワモドキ(Pododesmus macroschisma) , Monia sp.等があげられる。これらは殻表には明瞭なひだ状の成長線と不規則に多くの波打つ粗い放射肋があり、殻内部には筋痕が2か所あることから区別される。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 HP そらいろネット(三浦半島身近な図鑑)    閲覧日 2023/02/03
     https://sorairo-net.com/index.html
    身近な貝殻図鑑
     https://sorairo-net.com/kai/index.html 

 安藤 佑介ほか 2018 
    瑞浪北中学校敷地造成工事現場(瑞浪市土岐町)に露出した下部中新統瑞浪層群明世層から産出した化石
    瑞浪市立化石博物館研究報告  44 and 特別号  




0526 掲 載 日 2023年 2月 2日(木)  
標 本 名   Geloina papua Lesson
   ゲロイナ・パプア
産  地  沖縄県八重山郡竹富町古見 前良川 河口 (西表島)
時代 地層  :現生
標本写真




 
コメント 2017年(平成29) 7月18日採集  現地にて撮影
   マルスダレガイ目シジミ超科シジミ科ヒルギシジミ亜科ヒルギシジミ属

 殻幅10cm前後になる大型のシジミで、ヒルギ(マングローブ)地帯の泥底などに生息。ヒルギの茂る根元の泥質に潜り、キバウミニナと同じ環境に観ることができるが、そんなに密生して観ることはない。
 成長し老齢化した殻の殻頂部は殻が溶けるように白く浸食されているのは、腐食してできたのではない。
貝殻の主成分は炭酸カルシウムであり、カルシウム、炭素、酸素からなり、アラゴナイト(霰石)とカルサイト(方解石)の2種類の組み合わせからなている。 一般的に淡水、汽水に棲息する貝は厚く黒っぽい殻皮に覆われた地味な貝が主流で、これは淡水、汽水は殻の溶けやすい環境であり、殻皮は殻の溶解に対する保護の役割を持っている。
 一方、マングローブ林の落葉は、その葉が腐食することにより根元の泥質を酸性化し、その酸よって炭酸カルシウムが溶解し殻が解ける これを溶食という。
 尚、シノニム(synonym.,syn.) にはヤエヤマヒルギシジミ (G. erosa) , リュウキュウヒルギシジミ (G. expansa) などがあげられる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 貝の博物誌   閲覧日 2023/1/30
    http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Publish_db/2002Shell/index.html

 佐々木猛智  2002 
    貝の博物誌. 東京大学総合研究博物館. 194 pp.  閲覧日 2023/1/30
    http://www.um.u-tokyo.ac.jp/hp/sasaki/index.htm




0525 掲 載 日 2023年 1月26日(木)  
標 本 名   堆積構造の一形態?
産  地  兵庫県洲本市由良町
時代 地層  中生代  白亜紀後期 マストリヒチアン   和泉層群  北阿万層
標本写真



コメント 2019年(平成31) 9月 8日ほか  現地にて撮影    

 当初 一見して生痕ではと思ったが これは堆積構造で タービダイト層にはよく見る構造らしい。 パイプ状の外側は砂質で下図の場合中が空洞になっているが 内部の残さいをよくよく見ると泥質で、ラミナ状の層理構造が見える。
 これらは海底斜面に起こった乱泥流で、まだ固まっていない海底の泥層が斜面上部から滑り落ちてくるときに、砂層に雪だるま式に巻き取られ、まるで巻きずしの芯にある具のように泥層が巻き込まれたものであろう。
 この様な堆積構造は この調査地域では注意して見ていると、色々の形状のものが見つかる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

                    ・・・・




0524 掲 載 日 2023年 1月19日(木)  
標 本 名   Liracassis japonica (Yokoyama)
   リラカシス    ジャポニカ
産  地  島根県出雲市上塩冶町菅沢   斐伊川放水路
時代 地層  新生代 新第三紀  中新世中期   出雲層群  布志名層
標本写真
 
コメント 2009(平成21)年8月13日  採集    トウカムリガイ科  ムカシウラシマガイ

 想い出の化石(3)のNo.0126 掲載日2015年2月26日で八尾層群のものを紹介しているが、今回紹介するのは出雲市の菅沢の布志名層で採取したもの。
 北但層群また勝田層群や備北層群からも産出が知られている。これらは、それぞれの堆積域の海が深くなった頃の地層からの産出である。また出雲地方の布志名層からも保存の良い物が産出しているが、これらは冷水域が広がった海域の堆積物と考えられいる。
外形は丸く膨れた中型の巻貝で、太い螺脈には多くの顆粒をそなえて特徴ある殻表を呈する。外唇も厚く殻表側に反りだしている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク HP  閲覧日 2023/1/17
       https://kunibiki-geopark.jp

 末広匡基  1979
   島根県布志名層産中新世貝化石群 瑞浪市化石博物館研究報告 6

 坂之上 一  1998
   出雲地方の貝化石     島根県立三瓶自然館




0523 掲 載 日 2023年 1月12日(木)  
標 本 名   Cyclina japonica Kamada
   シクリナ    ジャポニカ
産  地  岡山県津山市高尾 皿川河床 
時代 地層  新生代 新第三紀  中新世中期   勝田層群 吉野層
標本写真

コメント 採集年月日 不詳     マルスダレガイ科 オキシジミ

 この種は 田口(2002)では Cyclina takayamai とされていが殻表の成長輪脈の細かさから  Cyclina japonica とした。
中形でふくらんだ類円形、殻頂は中央、前端の張り出しは弱く、後端の張り出しは大きい、
殻表には前面に細かな放射脈と成長輪脈が明瞭で布目を呈する、殻内縁端は細かく刻まれる。
この産地では合、離弁が河床の泥質砂岩層の所々で密集して産した。尚 これらが密集しているところには Vicarya yokoyamai はほとんど見られない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 干潟系化石の館 ―Arcid-Potamid 群集記念館―   閲覧日 2023/1/11
   
https://higatakaseki.web.fc2.com
   
 Eiji Taguchi   2002 
  Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan   
  Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 29 (2002), p. 95-133, 8 pls., 33 figs., tables. 




0522 掲 載 日 2023年 1月 5日(木)  
標 本 名  Metaplacenticeras subtilistriatum (Jimbo) 
   メタプラセンチセラス   サブチリストリアタム
産  地  香川県仲多度郡まんのう町中通  土器川 河床
時代 地層  中生代  白亜紀後期  カンパニアン階 和泉層群 中道泥岩層
標本写真



コメント 2003(平成15)年4月29日  採集

 このアンモナイトは北海道天塩郡遠別町等で産出する真珠光沢が美しい虹色のアンモナイトとしてよく知られている。
徳島県と香川県の県境に連なる阿讃山地の北麓に分布する和泉層群では、1980年代初めに仲南町塩入付近で高松化石同好会の高木正信氏によって最初に発見され、その後同会のメンバーによって塩江温泉に至る間でほぼ連続的に産出することが確認されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

  東京大学総合研究博物館 データベース  閲覧日 2023/1/4
    http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKoseibu/specimens/jp/28234_.html
  
  徳島県立博物館 1991
    企画展 「和泉層群の化石」解説書   和泉層群の化石 p. 9

  徳島県立博物館 HP   閲覧日 2023/1/4
    徳島の自然と歴史ガイド No3   和泉層群
    https://museum.bunmori.tokushima.jp/bb/chigaku/fossils/Izumi.html




0521 掲 載 日 2022年12月29日(木)  
標 本 名  モササウルス(Mosasaurus)類の椎骨 
産  地  兵庫県南あわじ市阿那賀 (木場海岸)
    34°16'57.5"N 134°39'42.4"E 
時代 地層  中生代  白亜紀後期  カンパニアン〜マストリヒチアン階 和泉層群 西淡層
標本写真

コメント 1990(平成2)年9月15日  採集

 採集後すぐに クリーニングを兵庫県立人と自然の博物館にお願いしていた。二連繋がった状態でノジュール内に保存されていたが、前方部の椎骨は風化が激しく、今回は掲載を省いた。
 私が淡路島で初めて採取した大型脊椎動物化石、木場海岸ではこの前後、骨化石の産出を聞いたことがない。
この標本も、年明け(2023年)には人博へ寄贈することになっている。
SKコレクション『化石の展示室』の展示棚が徐々に歯抜けになってきている。採集標本が手元で見られなくなるのは何とも寂しいものだ。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

  岸本眞五  2014
     淡路島の和泉層群から産出する脊椎動物化石
     兵庫県立人と自然の博物館 共生のひろば 第9号

(2022年12月5日〜12月20日)
入院治療の為 掲載お休み

0520 掲 載 日 2022年12月 1日(木)  
標 本 名   Leptosolen japonica Ichikawa & Maeda
    レプトゾレン  ジャポニカ
産  地  兵庫県南あわじ市灘地野
時代 地層  中生代  白亜紀後期  マストリヒチアン階 和泉層群 下灘層
標本写真


コメント 2015年(平成27) 9月16日 採集  ユキノアシタガイ科 Family Cultellidae

 殻の外径は横長の短冊形で薄い。殻頂は前方に偏り、殻頂から復縁前端に向かって弱い放射状の凹みがあり、殻表には装飾が見られず、成長線のみが見られ、また、殻頂は突出しない。
 淡路島の和泉層群では 最下位カンパニアン階の西淡層から 最上部層のマーストリヒチアン階の下灘層まで産出頻度は少ないが産出が知られている。ことに洲本市由良町の北阿万層からはよく見る。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 岩城貴乙子・前 田 晴良  1989
   淡路島南東部和泉層群の泥岩相と化石動物群
   高知大学学術研究報告 第38巻  自然科学
 田代正之 1992 
   「化石図鑑」日本の中生代白亜紀二枚貝
   (自費出版本) p215 , 図版63−1(p221)




0519 掲 載 日 2022年11月24日(木)  
標 本 名   Acila (Truncacila)sp. aff. yoshidai Tashiro & Otuka
  アキラ  ヨシイダイ
産  地  兵庫県洲本市由良町
時代 地層  中生代  白亜紀後期  マストリヒチアン階 和泉層群 北阿万層
標本写真

コメント 1999年(平成11) 7月11日 採集   キララガイ

 下に紹介する参考文献の田代1992によると、殻の膨らみは強くなく、殻の後稜にははっきりしないが凹みが見られ、 Acila 亜属に近い外形を示すとされ、また後稜近くの殻表の放射状の肋の凹みは見られない。と説明されている。
 この産地は、軟体動物化石をほとんど見ない砂岩層の目立つ下部層と、泥岩に稀に砂岩の数10p〜数10pまでの層を挟みノストセラスをはじめとする軟体動物化石、それに海生爬虫類や魚類までも産出する中部層、ノストセラスの産出を見なくなり、パキディスカス aff. コバヤシイの産出がある上部層。 化石の産出状況から三層に分けられる。 
  Acila 属は中部層と上部層の漸次部に多く見つかっている。 なお、この層準から共に産出するものとしてアンモナイトではハウエリセラスが見られ、甲殻類ではアハジナッサの産出は極端に少なくアーケォパスの産出は多く、イノセラモスでは大型のバルチカスが見られるようになり、Acila 属は漸次部では見られるが その上部 また下部にもほとんど産しない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田代正之 1992 
     「化石図鑑」日本の中生代白亜紀二枚貝
     (自費出版本) p25 , 図版2-3




0518 掲 載 日 2022年11月17日(木)  
標 本 名   Dosinia nomurai Otuka
  ドシニア   ノムライ
産  地  京都府綴喜郡宇治田原町奥山田栢垣内
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世 綴喜層群 栢(かや)泥岩層
標本写真
コメント 2016年(平成28) 10月10日  採集 マルスダレガイ科カガミガイ亜科カガミガイ属 ノムラカガミ

 2016 年(平成 28 年)5 月 10 日,日本地質学会が全国の「県の石(岩石・化石・鉱物)」を選定した際に京都府の化石に「綴喜層群の中新世貝化石群」が選ばれた。 古くから化石が容易く採取できることから、子供達からマニアまで採集者が度々訪れ地元の方々に大変な迷惑をかけていた様で、50年以上前 1970年に初めてその後毎年のように5度ばかり訪ねたが、中々採集は困難になり遠ざかっていた。 2015年2月 宇治市在住の馬越仁志氏によって奥山田の307号線のバイパス工事現場よりイルカ化石が発見されたことが報道され、久々に再訪した。
 このノムラカガミは多産種で Nipponomarcia nakamurai (ナカムラスダレハマグリ)と共に綴喜層群の体表種である。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 日本地質学会 HP 閲覧日 2022/11/16
    http://www.geosociety.jp/
    「県の石」京都府の石(化石)
    http://www.geosociety.jp/name/content0147.html#kyoto




0517 掲 載 日 2022年11月10日(木)  
標 本 名   Anadara (Scapharca) abdita Makiyama
  アナダラ    (スカファルカ)    アブディタ
産  地  広島県三次市布野町大判  布野川 河床
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世 備北層群 下部砂岩層 (是松層)
標本写真

コメント 1993年(平成5) 11月27日    採集    フネガイ科

 この産地を知って30年近くなる 先日(2022/11/4)訪ねた、高さ4mほどの川岸の野面積みの急な石垣に雑草が生い茂っている堤防を河床に降りるのは、さすがに恐れを感じ、また産地の河床は昨今の豪雨で、これまで採集していた層準は削られ、上流からの大量の堆積物でうめられていた。遠路はるばる行ったのに露頭を前に諦め帰ってきた。
殻は中形、やや丸いハコ型である、殻頂はやや前よりにありふくれ、そびえる。右殻では26〜31の放射肋があり顆粒状になり、肋間とほぼ等しい。肋上には浅い溝があり、2つに分かれる。肋間は角張り規則的な成長脈と交わって梯子状になる。
左殻は26〜32本の肋をもち、やや丸く肋間より少し広い顆粒状になり、2分する傾向は弱いかあるいは不明瞭。肋間は浅くてせまい、靭帯面はせまく鈍角三角形。
勝田層群の Vicarya の産出を伴わない吉野層の一部地域からも産出をみる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 糸魚川淳二・柴田 博・西本博行  1974
  瑞浪層群の貝類化石 p43-p203  Plate1-63
    瑞浪市化石博物館報告 第1号 開館記念号 「瑞浪の地層と化石」




0516 掲 載 日 2022年11月 3日(木)  
標 本 名   Euspira meisensis Makiyama
  ユースピラ  メイセンシス
産  地  島根県出雲市菅沢 斐伊川放水路
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世 出雲層群 大森層・布志名層
標本写真
 
コメント 2001年(平成13) 8月12日 採集    メイセンタマガイ(タマガイ科)

 斐伊川放水路の出雲層群は、大森層(1450〜1400万年前)の砂岩層と布志名層(1400〜1200万年前)の砂岩、シルト及び泥岩の層からなっており、大森層は陸上での火山活動が盛んな時期の堆積物で、安山岩やデイサイトの溶岩がみられ、その安山岩などを起源とする礫や砂が浅海に運ばれ堆積した暗黒色の砂岩の層が広く分布し、布志名層も、同じく浅い海で堆積し、貝化石から布志名層の堆積当初は暖流の影響を主に受け、徐々に寒流の影響を強く受けてきたということが産出する貝化石から知られている。
 メイセンタマガイと呼ばれ、中新世の化石の中でも良く知られたタマガイ科の巻貝で、殻は中型で球形。成殻で殻高4cmほど。臍孔は開き、臍盤は発達しない。小種名の meisensis は、北朝鮮の咸鏡北道 明川郡の地名に由来する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 末広匡基  1979
  島根県布志名層産中新世貝化石群
  瑞浪市化石博物館研究報告  第6号 66-100 Plate 10-16

 坂之上 一 1998
  『出雲地方の貝化石』  糸魚川淳二監修
   島根県立三瓶自然館 刊行

 島根半島・宍道湖中海ジオパーク HP 閲覧日 2022/10/31
   https://kunibiki-geopark.jp/
   斐伊川放水路から産出する化石
   https://kunibiki-geopark.jp/geo-study/2018/10/02/housuirokaseki/




0515 掲 載 日 2022年10月27日(木)  
標 本 名   Pachydiscus aff. kobayashii Shimzu 
  パキディスカス  aff.   コバヤシイ
産  地  兵庫県洲本市 由良町
時代 地層  中生代  白亜紀後期  マストリヒチアン階  和泉層群  北阿万層
標本写真

コメント 2001年(平成13) 1月 4日 採集    パキディスカス・コバヤシイに対比できる(似る)

 殻は中〜大型で、P. awajiensis のような分岐肋はみられず肋は成長と共に放射肋のピッチは粗くなり大きな個体では殻口付近では肋高が低く波打つようになる。洲本市南部に分布する厚い泥岩層の北阿万層の最上部層から多産する。
 最近の兵古研の定例化石調査でも “ヘソ” の保存された20p大の大物が産出している。
アンモナイトの殻の保存状態は概して悪く、殻表面が溶け スウチャーライン(縫合線)が観察されるものが多い、今回紹介する個体も破損した殻口部まで縫合線が見られる事により気房部だけの標本と考えられる。住房部が残されていたなら 20pオーバーの大物であったと思われる。
このパキディスカスは専門的に研究されたことがなく、今回紹介する学名は 私が個人的に便宜的に使用しているもので、正式な記載をしてくださる専門の先生を20年近く待っている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 松本達郎・両角芳郎  1980
   和泉山脈の後期白亜紀アンモナイト 
   大阪市立自然史博物館研究報告33 (英文)

 両角芳郎 1985
   淡路島産の後期白亜紀(カンパニアン〜マストリヒチアン)アンモナイト 
   同上 39

 岸本眞五 2013
   淡路島の和泉層群から産出するアンモナイト類
   人と自然の博物館 共生のひろば  第8号  29-34




0514 掲 載 日 2022年10月20日(木)  
標 本 名  Hiatula minoensis (Yokoyama)
  ヒアチュラ   ミノエンシス
産  地  岡山県津山市皿 皿川河床  ほか
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世   勝田層群  吉野層
標本写真


 
コメント 2011年(平成23) 9月25日 ほか採集  ヒアツラ属  ミノイソシジミ

 Veneroida マルスダレガイ目 シオサザナミガイ科 Psammobiidae の仲間で Soletellina 属や Gari 属 Hiatula 属 など16の属に分類されている。 Hiatula 属は Soletellina 属の亜属として記載され、古い文献ではムラサキガイの一種とされていたようだ。
 殻頂はほぼ中央により 横長の卵形で 殻厚さは薄く 膨らみも少ない。殻表は微かな輪脈はあるものの、平滑である。
 皿川の産地では Vicarya と共に産し、集中して多産する所がある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 日本生物標本横断データベース   閲覧日 2022/10/19
     http://jpaleodb.org/
     シオサザナミガイ科  
     http://jpaleodb.org/specimen/result.php
 糸魚川淳二 ほか 1974
   瑞浪の地層と化石
   瑞浪市化石博物館報告  第1号 開館記念号   
   Hiatula  記載頁 96頁  図版 Plate 28 Figs.10, 11a, 11b 




0513 掲 載 日 2022年10月13日(木)  
標 本 名  上段図
Chicoreus
(Rhizophorimurex) capuchinus nagiensis
    Taguchi, Osafune et Obayashi

 
チコレウス (リゾホリムレックス)  カプシナス ナギエンシス
 下段図
Chicoreus (Rhizophorimurex) capucinus (Lamarck)
 チコレウス (リゾホリムレックス)  カプシナス 
産  地 上段図 岡山県勝田郡奈義町柿
下段図 シンガポール セレター川のマングローブ
時代 地層 上段図 新生代 新第三紀 中新世中期 勝田層群 吉野層
下段図 現生種
標本写真
  
勝田層群 産

  
現生貝

コメント 1995年(平成7) 12月10日 採集    アッキガイ科 ナギクリイロバショウガイ
 現生種は 田口栄次氏よりの頂き物

 (この標本は想い出の化石(8) 0399 掲載日 2020年8月6日(木)で一度取り上げています。)

 現生種は Murex capucinus として Lamarck によって1822年に記載され、後に属名がが変更され Chicoreus capucinus と呼ばれ、また亜属が提唱され Chicoreus (Rhizophorimurex) capucinus となる。 尚、ナギクリイロバショウガイは C. (R.) capucinus の亜種として記載された。
 これらの小種名のスペルに違いが(capucinuscapuchinus)あるが、論文記載時のミスではないかと考えられる。
 殻は中型で、厚質、紡錘形、螺層は6層、成貝になると、体層がよく発達する。
螺層は中央部で肩を張る、顕著な縦張肋が120度ごとに出現し殻頂からみると、縦張肋を頂点とした三角形状の殻形になる、縦張肋の間に2本の縦肋があり、殻口は卵型、外唇は肥厚し内縁は刻まれる。
 「干潟系化石の館」では、この属の分類について詳しく検討紹介されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Taguchi,E.,Osafune,T.and Obayashi,A. 1981
   New Miocene Mollusca feom the Katsuta Group, Nagi-cho,Okyama Prefecture,Southwest Japan.
   Bull.Mizunami Fossil Mus., No.8, p1-6

 干潟系化石の館 ―Arcid-Potamid 群集記念館―   閲覧日 2022/10/8
   https://higatakaseki.web.fc2.com/page/higatakan.html
   Chicoreus(Rhizophorimurex) 属各種の分類について
   https://higatakaseki.web.fc2.com/tubuyaki/chicoreus/chframe.html 




0512 掲 載 日 2022年10月 6日(木)  
標 本 名  アリ・膜翅(まくし)目の仲間  
 キノコバエ・双翅(そうし)目の仲間 
産  地  兵庫県美方郡新温泉町海上
時代 地層  新生代 新第三紀 鮮新世  照来層群  春来泥岩層
標本写真




スケールバーは10mmを示す
コメント 1977年(昭和52) 5月29日 ほか採集    昆虫化石

 海上(うみがみ)地区を流れる岸田川支流の小又(こまた)川上流にある、鮮新世約300万年前の照来層群春来泥岩層から昆虫化石は産し、古照来カルデラ湖と言われている淡水層のラミナのはっきりした地層から見つかっており、海上地区で初めて昆虫化石が発見されたのが1964年。当時4人の女子高生(浜坂高校)が、海上を流れる小又川周辺での、夏休みの宿題の化石採集で発見し、発見者の担当教師であった衣笠弘直氏によって地学研究で報告された。(衣笠 et al. 1968)
 私が初めてこの地での採集は45年前で80年代はじめごろまでに何度か訪れている。80年代始めには産地の保護が厳しくなり、ある特定の人物の関係者しか現地には近寄るのが難しくなり、その後「おもしろ昆虫化石館」が1996年に開館し一般の人達に“海上の昆虫化石”が広く知られるようになった。
 昨年(2021年夏)久々に昆虫化石館を訪ねた。 着任されて間もない植村館長さんと懇談させていただき、展示化石が数年前に開館当初の標本は全て引き上げられて、地元の方(浜坂高校の先生・故人)のご遺族から寄贈されたものに入れ替わったようで、また昆虫化石の露頭の現状などをお伺いし、現地の確認もしてきました。 
 川岸にフェンスで囲われ保存されているはずの露頭が見えないのです。記憶があいまいなのか 幅10m弱、高さ3m余りあったと思う、シルト質のラミナ層の崖が跡形もありません。 その場所には草木が生い茂っています。 フェンスは辛うじて残されている様なので、河川の流れで露頭自体が流されてしまったものではないと思うのだが・・・。
 保護?採集活動の一連の行事の中で 昆虫化石館の当時の関係者が開館準備の為の採集によってか、また、県の博物館(人博)の準備室段階での発掘採集が・・・、また、その後の昆虫化石館の普及活動の中で削られていったものでしょうか・・・。 
45年前の記憶に残る露頭がなくなっているのです。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 衣笠弘直・細木正男・赤木三郎  1968
     兵庫県温泉町海上産の昆虫化石(1).
     地学研究,19,159-164.
 
 井上繁広  1986  
   温泉町の昆虫化石
   兵庫県美方郡温泉町温泉町教育委員会 発行
 
 山陰海岸ジオパーク  HP    閲覧日 2022/10/1
   https://sanin-geo.jp/know/

 おもしろ昆虫化石館  HP    閲覧日 2022/10/1
   https://www.town.shinonsen.hyogo.jp/page/index.php?mode=detail&page_id=d18c448c446b48022bb5605b6a6d23ca



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