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週に一度 想い出の化石として標本を紹介していきます。

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0406 掲 載 日 2020年9月24日(木)
標 本 名  Carcinoplax antqua (Ristori)
  カーティノプラックス   アントクア  (リストリ)
産  地  島根県出雲市上塩冶町管沢 斐伊(ひい)川放水路
時代 地層  新生代 新第三紀中新世中期 出雲層群 大森層 布志名層  (約1200万から1500万年前)
標本写真








コメント 2005年(平成17) 5月3日 ほか採集      ムカシエンコウガニ

 日本の中新統のカニ化石を代表し 日本各地から産出報告がある C. antqua  
今回紹介する標本、1と2 は大森層 3 は布志名層からの産出
 斐伊川放水路は、1981年に着手 2013年まで32年もの工期を要して完成した斐伊川と神戸川をつなぐ洪水対策用の水路、4kmにわたって大森層・布志名層の分布域が開削され多くの化石を産出してきた。 
下位の大森層では C. antqua は基質に直接含まれていることも多く植物の破片が多く含まれる層準に目立つ、一方上位層の布志名層ではシルト質の泥岩層にノジュールinで含まれていることがほとんどである。 これらのカニ化石はごく普通に産し、“手足付き”の産状で良く観る。布志名層では甲背だけの脱皮殻と思えるものも含めて多く産出していたが、 放水路が完成して開削によって現れた化石含有層も全てコンクリートで覆われ残念なことだが、今ではまったく観察できない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 柄沢宏明 1997  西日本の新生代大型甲殻類
               瑞浪市化石博物館専報  第8号
 成相俊之 HP (公開2006)   「出雲の地質」  
                       http://izumonotishitu.la.coocan.jp/




0405 掲 載 日 2020年9月17日(木)
標 本 名  Nucula (Leionucula) formosa Nagao
  
 ヌクラ    (レイオヌクラ)      フォルモサ         
産  地  熊本県上天草市龍ヶ岳町高戸椚島 (くく゛しま) 
時代 地層  中生代 白亜紀後期  姫浦層群(サントニアン上部〜ダニアン?) 樋の島層
標本写真

コメント 1987年 (昭和62) 1月1日  採集  クルミガイ科  Nuculidae

 姫浦層群は、Nagao(1930)により熊本県上天草市姫戸町姫浦地区を摸敷地として命名された。
ことに下部亜層群の樋の島層が分布する椚島の西海岸からは、多くの化石を産出する。
デブリフロー堆積物が見られ、やや深い海域の Nucula sp.や Acila sp. などの貝類やアンモナイト類も産出する層準に、Inoceramus higoensis Glycymeris 等の普通は沿岸地域の堆積物に含まれる Mollusca (モラスカ) 化石等が混ざって産出する。   
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 大塚雅勇 2011   天草地域の上部白亜系および始新統の層序と二枚貝化石群集
               御所浦白亜紀資料館報 第12号  1-44




0404 掲 載 日 2020年9月10日(木)
標 本 名  Cucullaea toyamensis Tsuda
    
ククレア      トヤメンシス        
産  地  兵庫県養父市関宮町八木谷 大鍋 
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世    北但層群 豊岡層
標本写真




コメント 1996年(平成8)5月19日・2012年(平成24)4月15日 ほか採集   フネガイ目ヌノメアカガイ属 トヤマヌノメアカガイ
 
 殻は中型でよく膨らむ。 絞板は前後方向に直線的にのびるため殻の外形は四角形に近く 殻高/殻長比は80〜90%程度、殻表は多くの (50本内外) 近接した弱い放射肋と同心円状の成長輪肋で刻まれ、顆粒状〜布目状を呈する。放射肋の断面は低く方形で角張り肋上に1本の細い谷が見られ、肋間は狭く蜜である。フネガイ目の仲間の歯の特徴の多くの絞歯が並ぶ 殻表の後縁側には稜がある。
 本種は二枚貝としては生きている化石ともいえ、祖先といえるものは中生代のジュラ紀にまでたどれるとしている。
 この大鍋では合弁も含めて比較的に良く産出している。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 学生版 日本古生物図鑑  1982年(昭和57) 北隆館   pl.139 fig. 1306
 八尾町教育委員会  1998   化石の宝庫 やつおまち  ワクワク化石教室 化石産地ガイトブック
 富山県立山博物館  1997   富山に生息したいきものたち 黒瀬谷層の貝化石
 松原尚志 2011 兵庫県但馬地域の北坦層群産中新世浅海軟体動物(英文) 
            瑞浪市化石博物館研究報告 第37号 p. 51-113 




0403 掲 載 日 2020年9月3日(木)
標 本 名  Yakunoceras nukatense gen.et sp.nov. (M.S.)
    
ヤクノセラス      ヌカタエンゼ        新属新種  (手記)
産  地  京都府福知山市夜久野町額田奥 割石沢 
時代 地層  中生代 三畳紀         夜久野層群  わるいし層 
標本写真

コメント 2016(平成28)年5月22日 採集  ヤクノセラス ヌカタエンゼ 

 この様に保存の悪い標本 わるいし層では普通だが、巻きはじめは殻表に現れる肋が粗く やがて成長した殻口に近い殻表では肋が消失して平滑になってい行くという Y. nukatense  の特徴が何とか読み取れる。
 しかしこの学名 (M.S.) とあるように論文化されていない為に、学術上では正式に学名と認められていない。学会では口頭発表があったようだが、なぜかその後 印字された論文がだされなかったようだ。
 ※  (M.S.)  manuscriptus  (メヌスカビトゥス)  手記・私信で を意味する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 福知山市夜久野町化石・郷土資料館  2014 展示資料図録 (第2版)  福知山市夜久野町化石・郷土資料館 刊行
 益富寿之助・浜田隆士 1966  原色化石図鑑  8. 学名と術語  216--222  保育社 刊行




0402 掲 載 日 2020年8月27日(木)
標 本 名  Semisulcospira (Biwamelania) sp.
    セミスルコスピラ          (ビワメラニア)
産  地   滋賀県大津市日吉台 3丁目付近 (旧地名 堅田衣川町)
時代 地層   新生代 第四紀  更新世中期    古琵琶湖層群  堅田層
標本写真

コメント 1977(昭和52)年4月17日 採集   カワニナ科 カワニナ属 ヤマトカワニナ亜属(=ビワカワニナ亜属)

 現生種の日本産カワニナ科はカワニナ属だけが知られており、カワニナ亜属とヤマトカワニナ亜属(=ビワカワニナ亜属)の2つに分類することが多い。
掲載標本は体層は縦肋と螺肋が交わって顆粒を形成しており、次体層より上部は螺肋は弱く、また縫合はやや弱く深くない。
 造成工事中の露頭ではイシガイ類やシジミ類またタニシの仲間の産出が目立ちカワニナの産出は少なく採集出来たのは この二点のみ。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 西村和久   2010年11月30日Webサイト開設   「日本産カワニナ科図鑑」

 松岡敬二・三浦収  2018  滋賀県の鮮新統古琵琶湖層群堅田層産カワニナ属(軟体動物門:新生腹足上目:カワニナ科)の5新種の記載 (英文)
           瑞浪市化石博物館研究報告  第44号  59−67

 松岡敬二・中村喬  1981  古琵琶湖層群堅田累層産淡水棲貝化石(予報)
           瑞浪市化石博物館研究報告  第8号  105-126頁  図版37−47

 琵琶湖自然史研究会 1986 琵琶湖南西岸の古琵琶湖層群の淡水生化石群集   
           瑞浪市化石博物館研究報告  第13号  57-103頁




0401 掲 載 日 2020年8月20日(木)
標 本 名  Phalium bandatum bandatum (Perry)
    ハリアム   バンダタム  バンダタム  (ペリー)
産  地   島根県松江市鹿島町古浦
時代 地層   現生貝類
標本写真





コメント 1980(昭和55)年11月3日 採集    ヤツシロガイ超科 トウカムリ科 タイコガイ属

 古浦の淡水貝化石を採集に行って 海岸の打上げ貝をひらってきたもの。
 現生の生息域は、本州中部以南のインド・太平洋域で、図鑑等ではフィリピン産の標本を紹介しているものも多い。
  この種によく似たカンコガイがあるが、殻表の格子状の淡いカラーバンド模様がハッキリと残されていなければタイコガイとカンコガイ (P. glaucum) の区別は難しい。
 写真中央の標本は 成長途中でケガをして殻の成長に不都合ができたものでしょう。
勝田層群や備北層群や鳥取層群また北但層群ではトウカムリ科の化石としては、それぞれ海進の進んだ堆積物から産出している Liracasis japonica が知られている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 吉良哲明 1977   原色日本貝類図鑑 第21図版 図5   
                      保育社  改訂23刷 発行




0400 掲 載 日 2020年8月13日(木)
標 本 名  1  Harpago chiragra (Linnaeus)
      ハルパゴ   キラグラ
 2  Lambis truncata sebae (Kiener)
       ラムビス  トゥルンカタ  セバエ
 3 Tricornis sinuatus (Lightfoot)
      トゥリコルニス   シヌアトゥス
産  地   マリアナ諸島南端の島 グアム島
 2  沖縄県八重山郡竹富町 西表島 南風見田浜
 3  沖縄県八重山郡竹富町 西表島 南風見田浜
時代 地層  現生貝類
標本写真





コメント 採集年月日    1. 不詳(円尾敏照氏より頂き物)  2.,3. 1996(平成8)年 3月25日
  ソデボラ科  1.. スイジガイ  水字貝  2. ラクダガイ  駱駝貝  3. ヒメゴホウラ  姫護宝螺 

 1. Harpago chiragra スイジガイ (水字貝)
    指状突起も含めると30cmに達する大型  指状突起で形どられる貝殻の形状がが漢字の「水」の字に見えることが和名の由来  水管溝は長く、大きく曲がり、指状突起のひとつに数えられる。 軟体部は美味である。
 2. Lambis truncata sebae  ラクダガイ  (駱駝貝)
    指状突起を除いた殻高が25cmに達する大型種。  水管溝も含めて7本の指状突起がある。指状突起は、形成された当初は管状だが、しだいに中空が石灰質で埋められて棒状になる。  螺塔の肩部には
強い板状強い結節があるが、体層では結節はほとんど認められない。この板状の結節がラクダのこぶを思わせることが和名の由来。尚 7本の指状突起からクモガイとも呼ばれる。
 3. Tricornis sinuatus  ヒメゴホウラ (姫護宝螺)
    殻高10cm程度。 前2種に比べ殻は薄いが、成貝では殻は重厚になる。 波打ったヘラ状突起が突出するが管状の指状突起を形成しない。

 これらのソデボラ科は 西表島で礁池内の砂地に少ないが生息している。 しかし これらに似たソデボラ科の化石は暖流系堆積層の中新世の地層からの報告を知らない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 
 横川浩治 サイト公開2005年7月18日  「西表島貝類館」   民宿 カンピラ荘
             尚、1996年に来島したときにこのカンピラ荘にお世話になった。 




0399 掲 載 日 2020年8月6日(木)
標 本 名   Chicoreus (Rhizohorimurex) capuchinus nagiensis Taguchi,Osafune et Obayashi
   キコレウス (リゾホリヌレクス) カプチヌウス ナギエンシス タグチ, オサフネ et オオバヤシ
産  地    富山県富山市(八尾町)土
 2   岡山県勝田郡奈義町柿
時代 地層  新生代  新第三紀 中期中新世  1 八尾層群 黒瀬谷層       2 勝田層群 吉野層
標本写真







コメント 採集年月日 不詳    アッキガイ科  ナギクリイロバショウガイ

 このタイプの巻貝の同定は、非常に難しい。殻は中型で、厚質、紡錘形、螺層は6層、成貝になると、体層がよく発達する。螺層は中央部で肩を張る、顕著な縦張肋が120度ごとに出現し殻頂からみると、縦張肋を頂点とした三角形状の殻形になる、縦張肋の間に2本の縦肋があり、殻口は卵型、外唇は肥厚し内縁は刻まれる。
 黒瀬谷層 それに吉野層ではともに Vicarya yokoyamai の随伴化石として産出しており、現生において同等の種においてはマングローブの気根の上で生活している様子が見られる。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 八尾町教育委員会  1998   化石の宝庫 やつおまち  ワクワク化石教室 化石産地ガイトブック
 富山県立山博物館  1997   富山に生息したいきものたち 黒瀬谷層の貝化石
 Eiji taguchi, et al.   1981   New Miocene Mollusea from the Katsuta Group,Nagi-cho Okayama Prefeeture, Southwest Japan
                    瑞浪市化石博物館研究報告  第8号 1-6 Plate 1




0398 掲 載 日 2020年7月30日(木)
標 本 名   Turritella kiiensis Yokoyama
   ツリテラ  キイエンシス   ヨコヤマ
産  地    和歌山県西牟婁郡白浜町藤島 現在 民有地 白浜シャンピア
 2   岡山県勝田郡奈義町福元
時代 地層  新生代  新第三紀 中期中新世  1  田辺層群白浜層    2 勝田層群吉野層
標本写真
 

 


コメント 1 1969(昭和51)年7月18日 採集 , 2 1981(昭和58)年10月18日 採集  キイキリガイダマシ

 全体像の見えるTurritella kiiensis を初めて採取させて頂いたのは南紀白浜の藤島の海岸の露頭で 砂岩層表面に波浪による浸食で浮き上がった個体があちこち見られた。しかし殻表に付いた砂は分離が悪く殻の表面の装飾は読み取りにくい。
一方 勝田層群のT. kiiensis は殻本体及び殻内部まで結晶化しており甚だ保存がよい。
 白浜町藤島産のものが全体的にズングリしてまるみを感ずるに対して 奈義町福元のものは細長くスマートに思え、殻は狭長な塔形で螺層数は甚だ多い、頂部は採取時に欠損しているものが多いが17〜18層まで数えられるものがある。
螺層の中央部が膨れず、直線的で、縫合は浅く、9本の螺肋があり、肋間に細肋もみられる、また湾曲した成長線も体層に近い螺層ではハッキリしている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 田辺団体研究グル ープ   1984   紀 伊 半 島 田 辺 層 群 の 層 序 と 構 造
                             地球科学 38巻 4 号   249?263




0397 掲 載 日 2020年7月23日(木)
標 本 名   Cultellus izumoensis Yokoyama
   クルテルス  イズモエンシス   ヨコヤマ
産  地  島根県松江市上乃木   特別養護老人ホーム 長命園 北側  (旧地名 田和)
時代 地層  新生代  新第三紀 中新世中期 出雲層群 布志名層 (約1300万年前)
標本写真



コメント 1980(昭和55)年5月3日 採集  マルスダレガイ目 Cultellus 属  イズモユキノアシタガイ

 Cultellus 属は 新生代に入って大きく繁栄してきた仲間で 始新世から中新世後期まで日本各地から報告されている。
ことに中新世中期には暖流系を代表する二枚貝類とされている。
前後に長い方形で中―大型 田和では 殻長160oにも達する大型のものも採取できた。 両殻は前後部で少し開いている。生息姿勢は立って水管を海底面から突き出して生活していたようだ。
 勝田層群吉野層では 奈義町柿の一部の泥岩層ではVicarya yokoyamai に伴って離弁のものをよくみる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 末広匡基 1979    島根県布志名層産中新世貝化石群
                   瑞浪市化石博物館研究報告 第6号 p.65-100 Plate 10-16
 坂之上 一  1998  出雲地方の貝化石
               島根県立三瓶自然館 坂之上一貝化石コレクション解説書


都合により しばらく新規掲載はお休みとさせていただきます。(済)
(2020年6月25日〜7月22日)

0396 掲 載 日 2020年6月25日(木)
標 本 名   Mesoglauconia sp.
   メソグローコニア  エスピー (スペシイス)
産  地  熊本県天草市御所浦町江の口  (?)
時代 地層  中生代 前期白亜紀  アルビアン階    御所浦層群  烏帽子層
標本写真

コメント 1993(平成5)年10月10日 採集

 この年、上天草の宿に2泊し姫浦層群の姫戸や龍ヶ岳町の樋島などで採集を楽しんだ。
巡検途中、龍ヶ岳町高戸の海岸線の道路脇に道路改良用として他所から持ち込まれたと思われる大きな岩砕が積み置かれていた。その岩には多くの巻貝化石が含まれていた。 硬い砂岩に含まれる化石は殻は保存されているのだが、はなはだ分離が悪く良品は得られない。
 ところでこの岩砕、地元の方に聞くと、このあたりの海岸線の改修工事や港湾工事には多くの場合、天草上島の南の八代海にある御所浦島の採石場から運ばれてきているとのことだ。姫戸小島にもアンモナイトを含む硬砂岩で組まれた防波堤が見られた。
 掲載標本は部分標本だが、先に紹介した (想い出の化石(7 )0325 2018/12/27) のOligoptyxis pyramidaeformis と同様に汽水域の干潟に棲む大型巻貝で螺層に1本の強い螺肋が見られるのが特徴的である。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 廣瀬浩司・近藤康生 1998    中期白亜紀の汽水生貝類群の古生態 ―御所浦層群における貝類群集の種組成と多様度―
                     高知大学学術研究報告 第47巻 自然科学
 廣瀬浩司・鵜飼宏明 2012   「トリゴニア砂岩化石採集場」の化石 ―御所浦層群江の口層雁の鼻部層の化石―
                     御所浦白亜紀資料館報  第13号 19-24




0395 掲 載 日 2020年6月18日(木)
標 本 名  Baculogypsina sphaerulata Parker and Jones (星砂)
  
バクロギプシナ      スパエルラタ   パーカーとジョーンズ
 Calcarina gaudichaudii d‘Orbigny (太陽の砂)
   カルカリナ ガウディチャウディ ディ・オウビィニー
 Marginopora kudakajimensis Gudmundsson (ゼニイシ)
   マージノフォーラ  クダカジィメンシス ガットモンディソン
産  地  沖縄県八重山郡竹富町字上原  星砂の浜
時代 地層  新生代 第四紀  完新世   現生
標本写真



星砂


太陽の砂


ゼニイシ
コメント 1996(平成8)年3月26日 採集  ロタリア目 Rotaliida カルカリナ科 Calcarinidae ・ ソリテス科 Soritidae

西表島の代表的な3種  (スケール 1目盛り1mm)
 西表島北方 東シナ海に面した上原の海岸。島を訪ねるほとんどの観光客が立ち寄る。海岸には琉球石灰岩の隆起サンゴ礁の小さな島が点々と浮かぶ、足元には海の青さに対比する様にベージュ色の有孔虫の殻が大量に打上げられている。
原生生物である有孔虫は小さな体の体表には極々細かな穴が無数にあり、そこから網状仮足を伸ばし海藻や海底のサンゴ類に付着し海藻の断片や微細藻類などの摂食活動を行っている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 藤田 和彦  2001   星砂の生物学   みどりいし, (12) : 26-29
                  阿嘉島臨海研究所 発行
 八田 明夫  1999   阿嘉島東方海岸の現生有孔虫   みどりいし, (10) : 11-13
                 阿嘉島臨海研究所 発行
 琉球大学理学部 物質地球科学科  サンゴ礁地球生命科学研究室(藤田研究室)HP
               https://sites.google.com/site/reefforamslab/




0394 掲 載 日 2020年6月11日(木)
標 本 名  Rhinoclavis kochi (Philippi)
  ライノクラビス   コチィ   フィリッピィ
産  地  大阪府大阪市北区梅田1丁目11−4 (大阪駅前第4ビル地下)
時代 地層  新生代 第四紀  完新世 (沖積層)    梅田粘土層  約6000〜10000年前
標本写真

コメント 1979(昭和54)年11月18日 採集  カニモリガイ上科 Cerithioideaオニノツノガイ科 Cerithiidae 、タケノコカニモリ属 Rhinoclavis    カニモリガイ

 ビル建設の地下掘削工事中の現場で見学採集させていただき、南港の残土埋立地も紹介いただいてこれらの場所で採取したもの。
 前回(2020年6月4日)に紹介したウミニナと同じカニモリガイ上科に属し、ニッポニカによると本州以南の西太平洋熱帯海域に広く分布し、潮間帯下から水深20メートルぐらいの細砂底に棲むとされている。
 高い塔形で、螺層は17階あり、各層に顆粒状の3本の肋を巡らし、褐色の螺条と褐色斑(はん)がある。殻口は小さく、後ろに強く曲がった水管溝がある。蓋(ふた)は薄く角質、すこし巻く。夏季に紐状の卵塊を砂中に産む。殻はヤドカリが利用するところから、カニモリの名がある。
 紹介する標本に丸い穴が開いているが、これは肉食性巻貝 ツメタガイ類によって襲われ殻を穿たれたもの。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 市原 実   1975   第四紀の日本列島―4 大阪層群と大阪平野   URBAN KUBOTA NO.11 特集「第四紀
                株式会社クボタ   発行
 金子寿衛男 1966   大阪地下の貝化石 ・ 大阪地下の貝化石(続)  Nature Study 12巻 8号 ・ 9号
                大阪市立自然史博物館 友の会 




0393 掲 載 日 2020年6月4日(木)
標 本 名  Batillaria flectosiphonata Ozawa
   バティラリア   フレクトシポナタ          オザワ
産  地  沖縄県八重山郡竹富町字古見 前良川の河口前浜  
時代 地層  新生代 第四紀  完新世   現生  
標本写真







コメント 2017(平成29)年7月18日 採集   カニモリガイ上科  ウミニナ科  バティラリア属  リュウキュウウミニナ

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
河口や内湾などの汽水域に生息し、干潟の砂泥上に群れをなす。多産地では潮間帯上部の一定区域がウミニナで埋め尽くされる。砂泥上に多いが、付近の転石帯や岩の上などにも見られる。和名に「海 ウミ」とあるが、淡水の影響がある所でないと見られない。
 干潮時に地上を這い、主にデトリタスを摂餌活動するが、連続した動きは少なくほとんど動かない時間が長い。 時には漂着した死がいに群がっていることもある。雌雄異体で、交尾によって繁殖する。
 マングローブ河口の前浜の干潟の砂泥上一面に群れをなして生息している状況は、勝田層群や備北層群で見られるタテイワイア属の産状の特性を示すものがある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 横川浩治 2005    『西表島貝類館』
                  サイト公開2005年7月18日
       http://www.kanpira.com/iriomote_museum/shell/index.htm#contents
 糸魚川淳二・井津伸恵 2002  南西諸島マングローブ沼の軟体動物相
                  豊橋市自然史博研報 Sci. Rep. Toyohashi Mus. Nat. Hist. , No.12, 17-28





0392 掲 載 日 2020年5月28日(木)
標 本 名  Munida sp.
   ムニィダ   エスピー (スペシイス)    
産  地  広島県三次市布野町大判  
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世   備北層群 下部砂岩層  
標本写真
  


コメント 1993(平成5)年11月27日ほか 採集 ヤドカリ下目(Anomura) コシオリエビ上科(Galatheoidea) チュウコシオリエビ属

 この産地を知ったのは 1992年6月13日 美祢歴史民俗資料館に訪問時、美祢自然史友の会の土井さんや石田さんから頂いた友の会の会誌『カルスト』の第12号(1992.3刊)の記事だった。
 そこには素晴らしいノジュールインの手足付きのカニ化石の写真と布野川での採集風景が紹介されていたが、その産地露頭の具体的な場所については紹介されていなかった。
 これだけの資料を基に一人現地に赴いて、偶然にも布野川の河原を覗き込んだ一ケ所目が、この素晴らしいカニ化石の産地だった。
ところで、コシオリエビは現生では比較的深い海(100m以上)で生息しているものが多く、ここで多産しているカニ類のMiosesarma japonica, Cyclograpsus aff. directus, Carcinopax antiqua また二枚貝類ではAnadara abdita, Crassostrea gravitesta は比較的浅海域に生息域を持つ種であることから、このコシオリエビも浅海域に棲む小型種のチュウコシオリエビ属の仲間であろう。小種名まで決定するには産出個体数も少なく、そのほとんどが脱皮殻の甲背のみの産出で、今後の保存の良い資料の蓄積が待たれる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 美祢自然史友の会   会誌  『カルスト』   第12号 (1992年3月 出版)
 三宅貞祥  1982   原色日本大型甲殻類図鑑(T)     保育社 刊   143-150




0391 掲 載 日 2020年5月21日(木)
標 本 名  Operculina complanata japonica (Defrance) Hanzawa
   オパキュリナ     コンプラナータ     ジャポニカ      (デフランス)  ハンザワ
産  地  兵庫県豊岡市日高町万場 
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  北但層群  村岡層  
標本写真

コメント 1996(平成8)年5月6日  工藤智巳氏より頂き物   有孔虫類  オパキュリナ属
 
 北但層群化石研究会の谷口正夫氏(当時和田山高校教諭)によって万場地域の沢より転石の粗粒砂岩から発見された。
 万場では魚化石の産出が良く知られ、これは小西知己(1979)『但馬の地誌』で報告があり、その後当初、産出報告のあったスキー民宿(火吹水荘)の北側で、後にスキー客用として使用されている日高町万場第4駐車場の造成工事現場で多産することを北但層郡化石研究会のメンバがーが1990年に発見した。これに伴って同会がこの万場地域の地質を精査し、多くの中期中新世のビカリアを始めとする貝化石などや有孔虫類の発見があった。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 三木武行 谷口正夫 松本俊雄 瀬戸浩二 1999  北但層群からのMiogypsina, Operculinaの産出とその意義
                        日本地質学会学術大会講演要旨  第106年学術大会(99’名古屋)
 松本俊雄 瀬戸浩二 1994   鳥取層群からの Operculina の産出とその生層序学的・古生物地理学的意義
                         島根大学地質学研究報告 13.47〜56
 北但層群化石研究会 1993   “北但層群から兵庫県初のオパキュリナを発見”
                        北但層群化石研究会 会報 43
 北但層群化石研究会編 1992  兵庫県城崎郡日高町万場周辺の新第三紀化石について : 万場化石調査報告書
                         日高町教育委員会 発行




0390 掲 載 日 2020年5月14日(木)
標 本 名  Baculites cfr. inornatus Week
   バキュリティス      イノラナータス   ウィーク
産  地  兵庫県南あわじ市八木大字大久保
時代 地層  中生代 白亜紀後期  マーストリヒチアン階   和泉層群 北阿万層   
標本写真



コメント 2014(平成26)年8月14日ほか 採集   棒状アンモナイト  バキュリティス属の仲間

 南あわじ市の八木地区近郊には北阿万層が分布する。これらの地域には第四紀層の淡褐色の礫岩・砂岩・泥岩の互層に覆われながら、北阿万層の黒っぽい泥質砂岩層の小規模な露頭が至る所で見られる。
 笹井 1936 によれば当時広田村徳原とされていた地区より多くのBaculites 属の産出が報告されている。これらは笹井は B. anceps に対比していた。
 東京大学の博物館に収蔵されていたこれらのBaculites 属の標本が再検討されその中の一つがアズダルコ科(?)翼竜の第四中手骨の一部であると同定記載された。化石は保存全長約13.5cmで、著しく薄い骨壁、外側表面がつやつやと、しゅす状に滑らかなことから翼竜化石と分かり、骨軸の断面がD型をなすので翼中手骨と判明した。中手骨の長さから翼指竜類であると分かるが、軸幅が顕著に挟まることや遠位観で横断面が太り気味のD型を呈し、カナダ恐竜公園層産のアズダルコ類の中手骨や、米国テキサスのジャベリナ層産ケツァルコアトルスの中手骨と類似する。 (小畠郁生 国立科学博物館名誉館員 / 2008年) 
  以上コトバンクより (出典 朝日現代用語 知恵蔵)    
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 笹井博一  1936  淡路島の和泉砂岩層
               日本地質学会 地質学雑誌 43号 590-603
 両角芳郎  1985  Late Cretaceous (Campanian and Maastrichtian) ammonites from Awaji Island,Southwest Japan
              大阪市立自然科学博物館研究報告, 第39巻
 古谷 裕 ・ 清水大吉郎  1995   兵庫県産化石  その2. 中・古生代大型動物化石
                         兵庫県立人と自然の博物館 人と自然 第5号 




0389 掲 載 日 2020年5月7日(木)
標 本 名  Pyramidellidae  gen. et sp. indet.
   ピラミッドエリディ    ジーナス イ-ティ スペシイス インターミナータ 
産  地  兵庫県洲本市千草庚(明田)
時代 地層  中生代 白亜紀後期 マーストリヒチアン階    和泉層群 北阿万層
標本写真


コメント 2007(平成19)年8月12日 採集      トウガタガイ科の属・種未定の仲間

 洲本市近郊に分布する北阿万層では微小二枚貝類や微小巻貝類の産出を見ることがある。
それらは同種と思える個体が密集して産出しているが、現生の微小貝類と同様に分類学的な研究は今後の進展が望まれる。
 今回取り上げたトウガタガイ科の仲間と思える微小巻貝類は螺層は5〜7層、縫合は明瞭であるが浅い、殻表は平滑、殻口は大きく広がらず長円形。現生貝類の研究によると、トウガタガイ科の貝類は寄生性腹足類として特化したグループとして知られ、軟体動物や環形動物、半索動物、星ロ動物に外部寄生することが報告されている。ロ吻を寄主動物に向かって伸ばしてロ吻先端の吸盤を寄主に吸着させ、吻針で寄主の表皮を貫通し、ロ部ポンプを収縮させて体液を吸引するという食性を持っている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 吉良哲明・波部忠重・伊藤 潔・小菅貞男   原色日本・世界貝類図鑑 (4冊) 保育社刊行
 堀 成夫 1997   日本周辺産トウガタガイ科貝類の系統および寄生様式の研究
               東京水産大学大学院 水産学研究科 1997年度学位授与論文
 Tomoki Kase 1984  Early Cretaceous Marine and Brackish-water Gastropoda from Japan
               National Science Museum, Tokyo




0388 掲 載 日 2020年4月30日(木)
標 本 名  Comptonia naumanni (Nathorst) Huzioka
   コンプトニア  ナウマンニィ  (ナソースト) フジオカ
産  地  岡山県津山市高尾 皿川河床
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期     勝田層群 吉野層
標本写真

コメント 2019(平成31)年1月14日 採集   ヤマモモ科 コンプトニア属 ナウマンヤマモモ

 この標本私にとって勝田層群で初めてのものだったのに何故か持ち帰っていない。 写真は発見時現場で撮影したもの。
このナウマンヤマモモ、化石を始めたころComptoniphyllum naumanni として先輩に教えてもらった記憶がある。 調べてみるとナウマンヤマモモの学名は何度か変更されている。
 日本各地の中新世の地層の植物化石を研究したNathorst(1888)によって Comptoniphyllum japonicum と名付けられたのが最初で、その後Endo and Morita(1932)が小種名をjaponicum から naumanni に再定義して記載した。また、台島型植物群の研究を進めていた藤岡,1963;藤岡・植村,1979 は Comptonia = Comptoniphyllum としComptonia naumanni (Nathorst) Huzioka と新たに記載した。
これらの他 Comptonia japonica Kryshtofovich (1920), Myrica (Comptoniphyllum) naumanni 等も使われたこともある。

 [注]  “シノニム” (synonym )とは、 同一と見なされる分類群(種や属など)に付けられた学名が複数ある場合に、ある学名がシノニムであると言う 。(Wikipediaより)
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 永戸秀雄 2008   茨城県大子地域における中新世植物化石群
               日本古生物学会 化石 84,37-46




0387 掲 載 日 2020年4月23日(木)
標 本 名  Thalassina tsuyamensis Ando & Kishimoto  と 
      タラシナ      ツヤメンシス        アンドウ &  キシモト
   Vicarya yokoyamai Takeyama (おさがり)
      ビカリヤ   ヨコヤマイ         タケヤマ
産  地  岡山県津山市高尾 皿川河床
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期     勝田層群 吉野層
標本写真


 
コメント 2019(平成31)年1月14日 採集   オキナワアナジャコ属  タラシナ・ツヤメンシス

 ここでの採集品で、これまでに剖出できた標本は46個体目になる。
通常はこの産地、河川の水面下にあり、化石採取を望むことは不可能である。
この事が産地を今まで20年近くも保存している。
 1998年10月に台風で甚大な被害の洪水が発生し、その翌年からの川幅を大きくする災害復旧工事で出現したこの産地、年に数回不定期に河川の水位を下げる事があり、このチャンスには研究者や化石マニアをいまだに楽しませてくれている。しかし最近では T. tsuyamensis を含むノジュールの数は随分少なくなっいている。
 これらのノジュールには、植物の破片を多く含み、また ビカリヤやタテイワイアまたゲロイナなども殻の破損が少ない状態でしばしば同含している。掲載標本の様な“おさがり”は少ない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 岸本眞五 2015  岡山県津山市の勝田層群から化石十脚類 オキナワアジャコ属の産出
               兵庫県立人と自然の博物館 共生のひろば 10号 8-13
 Ando & Kishimoto & Kawano  2016  Two new species of Thalassina (Decapoda, Thalassinidae) from the Miocene of Japan
     Neues Jahrbuch fur Geologie und Palaontologie - Abhandlungen, Volume 280, Number 1, April 2016, pp. 107-117(11)




0386 掲 載 日 2020年4月16日(木)
標 本 名  Acesta goliath (Sowerby )
     アセスタ  ゴライアス    サワァベイ
産  地  三重県津市美里町南長野  南長野川 河床
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  一志層群 三ヶ野頁岩砂岩層 
標本写真
コメント 1997(平成9)年7月6日 採集    ミノガイ目ミノガイ上科ミノガイ科

 オオハネガイ類は勝田層群では私自身未だに確認できていないが、備北層群では上部泥岩層で Fulgoraria sp. と共に産したのを確認している。
Acesta属 は足糸付着型生活者とされ、半深海の岩石底に付着し、群れて生息しているとのこと。
その生活は、海底の砂泥底には潜らず海水中に漂って摂食活動をしている様で、殻表面には、キサンゴ類やゴカイ類など、多くの付着生物がみられる。
 ここに紹介する標本はVenericardia sp.などの浅海に生息する貝類を産する層準に介在した一部狭い範囲でそのほとんどが、合弁で産出した。尚 殻は溶け去っている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 近藤 康生・菊池 直樹 2005 新生代二枚貝オオハネガイ類の古生態学
                      東京地学協会 地學雜誌 114(4), 650-654,
 菊池 直樹  2006   オオハネガイ類化石産出層の特徴
                   日本地質学会学術大会講演要旨 113, 115,




0385 掲 載 日 2020年4月9日(木)
標 本 名  Lutraria maxima Jonas
     ラットラリア  マキシマ  ジョナス  
産  地  兵庫県豊岡市気比(けひ)
時代 地層  新生代  第四紀  完新世   円山川下流域の沖積層(粘性土層)   
標本写真




  
現生の標本 
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑より
コメント 2016(平成28)年4月25日 入手   和田山の工藤氏よりの頂き物  
          マルスダレガイ目 バカガイ科 オオトリガイ

 掲載標本は大きく破損しており石膏で補修されている。 当初和名のオオトリガイから想い出の化石(5)の0216 2016年11月17日に掲載したトリガイ(ザルガイ科)を思い浮かべ、名前を誤認していると思っていた。 しかし誤認していたのは私の方で不勉強を恥じた。
 兵庫県北部の豊岡市を流れる円山川は日本海津居山湾に河口をもち、県内の日本海に流れ込む河川の内最も大きい川とされており、下流域のほぼ20kmに渡って河川勾配が小さく緩やかな流れの川として、大雨など増水時には氾濫が恐れられている。
 この流域に更新世後期から砂礫層から砂質層また、粘性土層へと連続した堆積が見られ、そこには多くの軟体動物群の遺体が埋もれている。 これらの研究は近年やっと研究に手が付けられたばかりだ。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 小林文夫・先山 徹  2011 山陰海岸ジオパーク現地現地見学基礎資料 ―円山川下流域―
                     人と自然  第22号 67-80
 谷川晃一朗  2009  兵庫県円山川下流域における沖積層の層序・堆積環境と完新世の相対的海水準変動
                 第四紀研究   第48号(4)   255-270




2020年4月2日(木)の掲載は都合によりお休みとさせていただきます。




0384 掲 載 日 2020年3月26日(木)
標 本 名  Archaeopus ezoensis (Nagao)
    アーケオパス  エゾエンシス   (ナガオ)
産  地  兵庫県南あわじ市灘黒岩
時代 地層  中生代  白亜紀後期  マストリヒチアン階     和泉層群  下灘層
標本写真

コメント 2000(平成12)年5月3日 採集    ガンメンガニ ガンメンガニ

 2019年下記論文でユウレイガニ上科・ガンメンガニ科・ガンメンガニ属・ガンメンガニと新たに和名を提唱された。
淡路島の和泉層群では、後期白亜紀のマストリヒチアン階の北阿万層と下灘層からのみ産出が知られ、ことに下灘層では灘海岸の地野・大川 また山間部の灘山本・払川 等々が知られ また水仙郷の近く灘黒岩海岸の海岸礫からも得られた。北阿万層では洲本市由良町の泥岩層から少ないが保存の良いものを産する。
 掲載標本は灘黒岩産で真っ黒いシルト質のノジュールで波打ち際で波によって磨きあげられ、水に濡れていたこともあり表面はくろ光しており海岸の他の礫に比べ目立っていた。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 Hiroaki Karasawa, Shingo Kishimoto, Masaaki Ohara, and Yusuke Ando 2019
Late Cretaceous Decapoda from the Izumi Group of Japan, with descriptions of two new genera and one new species of Axiidea and one new family of Brachyura
      Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 45 p.43-85

 岸本眞五 2012  淡路島の和泉層群から産出する化石十脚類
             兵庫県立人と自然の博物館  共生のひろば  第7号  31-35




0383 掲 載 日 2020年3月19日(木)
標 本 名  魚類のウロコ  密集
産  地  兵庫県洲本市由良町
時代 地層  中生代  白亜紀後期  マストリヒチアン階     和泉層群  北阿万層
標本写真

コメント 2018(平成30)年12月23日 採集    魚鱗

 この産地では、この様に鱗が不規則な方向に密集して団子状態で産出することがしばしば見られる。
これらのノジュールにはウロコだけでなく魚の骨片と思われるものも含まれており、またノストセラスやイノセラムスの殻の破片などが混在して含まれることがあり、これらの事を踏まえて、このノジュールができた状況を考えてみるのも大変興味を引くことだ。
 魚が死後海底でどの様に化石化するのか、またウロコや骨片が何故不規則に団子状に集まって化石化しているのか、それに他のモラスカ類の殻の破片を伴っていることが多いのか等々、これらを知るためにも、その資料の蓄積が待たれる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 吉富友恭 2007  魚のウロコのはなし  成山堂書店 ベルソーブックス 027 (社)日本水産学会 監修




0382 掲 載 日 2020年3月12日(木)
標 本 名  Neverita (Glossaulax) didyma (Roding)
         ネベリタ  (グロソラックス) ディディマ  (ローデング)
産  地 @ 名古屋港 南陽層   A 大阪市北区梅田  梅田層  B 姫路市広畑区  播磨層
時代 地層  新生代 第四紀  完新世  ノースグリッピアン期 (約1万年〜)
標本写真
@ 名古屋港 南陽層 産出





A 大阪市北区梅田  梅田層 産出





B 姫路市広畑区  播磨層 産出



コメント 南陽層 1979(昭和54)年1月3日  梅田層 1979(昭和54)年11月18日  播磨層 1986(昭和61)年12月?日 採集
                   タマガイ科 ツメタガイ
 ウィキペディアによると ツメタガイは生息環境により形が変化し、内海のものは臍索中央の溝が殻軸と直角方面に伸び、臍穴がふさがらないが、外洋に分布するものは臍索の中央の溝が曲がっていて、臍穴が密閉する形となり、ホソヤツメタ (Glossaulax didyma hosoyai Kira) とされる。
 ツメタガイは肉食性で餌は貝で、殻の幅の倍以上はあろうかという広くて大きな足でダイナミックに進み、その足で餌となる貝類を包み込み2〜3mm位の穴を貝殻に開ける。
 現生種のツメタガイ類については、特に臍穴の形状の特徴等によって分類され下に紹介するWebサイトのuni 2008〜 によると、Naticarius concinnus, Euspina fortunei, Glossaulax reiniana, Glossaulax vesicalis, Polinices sagamiensis などが知られている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 吉良哲明 1954    原色日本貝類図鑑  保育社刊
 佐藤裕司 2008    瀬戸内海東部、播磨灘沿岸域における完新世海水準変動の復元
                第四紀研究 (The Quaternary Research) 47 (4) p.247-259
 uni2 2008〜      淡路島の生き物たち 3  




0381 掲 載 日 2020年3月5日(木)
標 本 名  Panopea tyugokuensis (Otuka)  
    パノペア  チュウゴクエンシス  オオツカ     
産  地  兵庫県養父市関宮町八木谷大鍋 ・ 葛畑 ほか
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期 北但層群 豊岡層(大谷砂岩礫岩層) ・ 村岡層(大野峠砂岩層)
標本写真




 
コメント 1996(平成8)年8月25日ほか 採集     キヌマトイガイ科 ナミガイ  (チュウゴクナミガイ)

 閉殻時 左右の殻は前後端部で閉じられず常に開いている。特に後端部(水管のある方)は裁断されたようになり、左右の殻は外部側へ大きくロート状にそり反る個体も見られる。
 また殻の厚さが薄く、殻表には波状の粗い成長輪肋があり、生息状況の姿勢で、つまり堆積層に対して殻の前縁側(足の出る側)を下に、また水管の出る後縁側を上にした態勢の合弁で立った状態での化石化過程の地層の圧力でできたと考えられる“シワ”が多くあり殻の変形が見られる。
 日本海側に分布する中期中新世から鮮新世にかけての地層から P. nomuraeP. japonica  とされる種の産出が知られるがこれらとの対比も興味ある課題だと思う。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 岸本眞五 2003  勝田層群からの Panopea nomurae KAMADA (ノムラナミガイ)の産出と2〜3の検討
              http://pravito.web.fc2.com/panopea1.htm
 兵庫県養父郡関宮町教育委員会 2003  兵庫県養父郡関宮町葛畑化石調査  (北但層群化石研究会 谷口正夫 編著)




0380 掲 載 日 2020年2月27日(木)
標 本 名 Turbo (Marmorostoma) ozawai Otuka 
    タルボ マーモロストマ オザワイ オオツカ            
産  地  岡山県津山市楢   蓋標本は勝田郡奈義町柿
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  勝田層群 吉野層
標本写真
 



コメント 1996(平成8)年8月25日ほか 採集    オザワサザエ

 殻は中型、重厚で、膨れた円錐形、胎殻は2つで平滑、螺層は5でよくふくれる。螺肋は数多く、縫合下で顆粒状になるものがある。縫合は明らかで溝状となる。殻口は亜円形、殻軸は短い、臍孔は閉じる。
蓋の外形は亜円形、一面が大きく膨らんだレンズ状、内面は平らで、ゆるく巻きこむ螺状縫合があり、外面は凸でふくれ顆粒を具える。
この蓋はOtuka (1938)よってTurbo ozawai と命名された。その後 瑞浪層群から産出したサザエの殻を Itoigawa (1960) によってTurbo (Marmorostoma) minoensis とされ、一方能登半島の東印内層より、蓋を伴った殻の化石が産しこれを (MASUDA1966) はT. ozawai の殻と同定した。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 中川登美雄 2009  福井県内浦層群下層から産出した熱帯砂底ならびに岩礁棲軟体動物化石群集
                瑞浪化石博物館報告 35  p. 127-151
 福井市自然史博物館 2018  福井県大飯郡高浜町  小黒飯の化石 図版 中川登美雄 編集




0379 掲 載 日 2020年2月20日(木)
標 本 名  @, B Mercenaria yokoyamai (Makiyama)
             メルセナリア   ヨコヤマイ
 A, C,D Mercenaria chitaniana (Yokoyama)
                 メルセナリア   チタニアーナ
産  地  @, B 島根県出雲市塩治町菅沢
 A, C,D富山県富山市八尾町井栗谷(深谷)
時代 地層  @, B 新生代 新第三紀 中新世後期  出雲層群 布志名層
 A, C,D 新生代 新第三紀 中新世後期  八尾層群 音川層 
標本写真
@  A

 B

 C  D
コメント 2008(平成20)年8月15日ほか 採集     マルスダレガイ科  ビノスガイ

 ビノスガイ類は寒流が流れ込む海域に生息するとされており、中新世後期の日本海側の地層から産出報告がある。 ここに掲載した音川層の標本は風化が進み殻表の装飾は読み取りがたいが、M.chitaniana の殻は中〜大型で厚質、ふくらみは中程度、殻形は卵形の三角形状である。殻表には粗い成長脈と、これと交わる細かい放射脈があり、布目状をしている。殻頂はややふくらみ内側に向かう。套線は湾入し、腹縁の内面は鋸歯状に刻まれる。
 布志名層より記載された M.yokoyamai は極めて似ている。 しかし M.chitaniana の後腹縁はやや裁断状になり、殻頂から後腹縁に向かってかすかに稜が認められる。
一方、M.yokoyamai は腹縁から後腹縁までなだらかにつながる。(富山県立山博物館 1997より引用)
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 末広匡基 1979 島根県布志名層産中新世貝化石群
        瑞浪市化石博物館研究報告 第6号 p.65-100 Plate 10-16
 坂之上 一 1998 出雲地方の貝化石  島根県立三瓶自然館
 富山県立山博物館 1997 「富山に生息したいきものたち 黒瀬谷層の貝化石




0378 掲 載 日 2020年2月13日(木)
標 本 名  Nucula hizenensis Nagao
   ヌクラ   ヒゼンエンシス  ナガオ     
産  地   長崎県長崎市伊王島町千畳敷
時代 地層   新生代 古第三紀 前期漸新世     伊王島層群 船瀬層
標本写真

コメント 2013(平成25)年10月31日ほか 採集    クルミガイ科 Nuculidae

 以前、私自身の過ちで Nucula mazeana Mizuno としていたもので、下記資料によると
N. hizenensis は、小型で膨らんだ殻をもち殻頂は後方に寄り 著しく不等側で 前部は後部のおよそ3倍となり、
後縁部は窪みハート型をなす、殻表には共心円状の成長脈と無数の放射状の細脈が発達し、腹縁内側も細かに刻まれる。前後の背縁にそって多数の櫛状の歯が並ぶ。
この産地では合弁で多産する層準が見られる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 鎌田泰彦 1984  九州炭田地域の第三紀貝化石(沖ノ島階貝化石)  築地書館 日本化石集 第56集




0377 掲 載 日 2020年2月6日(木)
標 本 名  Nostoceras hetonaiense Matsumoto
  ノストセラス     ヘトナイエンゼ   
  マツモト    
産  地   兵庫県洲本市由良町
時代 地層   中生代 白亜紀後期 マストリヒチアン下部   和泉層群 北阿万層
標本写真





コメント 採集年月日 不明        ノストセラス ヘトナイエンゼ 

 最初の画像はノストセラス ヘトナイエンゼの成長初期の殻が多く含まれたブロックで、 この産地でこの様な産状を示す標本はこれが初めてで、ノストセラスの成長過程を考えるのに、非常に重要な標本と思われる。
 その後の成長過程で、ノストセラスの気房部の螺管上には二列の鋭い棘があらわれはじめ、これらの棘は殻が成長するとともに、棘は鋭さをなくし 住房部では丸みを持った水疱状の突起として肋上に並ぶようになる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
                                     ━


2020年1月2日〜30日 入院治療の為更新できず


0376 掲 載 日 2020年1月2日(木)
標 本 名  Nostoceras hetonaiense Matsumoto
  ノストセラス     ヘトナイエンゼ   
  マツモト    
産  地   兵庫県洲本市由良町
時代 地層   中生代 白亜紀後期 マストリヒチアン下部   和泉層群 北阿万層
標本写真

大きさ  115×85 mm
コメント 1999(平成11)年7月11日 採集   ノストセラス ヘトナイエンゼの亜成体殻の集合標本

 松本 1977 の新種記載には N. hetonaiense の初期の成長段階の殻を次の様に説明されている。
The spire is low, with the later whorl embracing the earlier one with a slight touch or in some part with a slight separation (?) .

 また、掲載図譜の標本図では、記載文の説明を残念ながら充分に補完出来る様な標本ではなく、その実態をこれらの論文からは素人の私には知ることが難しい。
 また、むかわ町立穂別博物館の展示標本でも初期の成長段階の殻が保存されておらず、初期殻の残された標本は函淵層群からは発見が少ないようだ。
 和泉層群北阿万層では  N. hetonaiense の特徴的なU字型に垂れ下がった住房だけではなく初期殻の直線的な尖塔が残されたものもしばしば産出する。   これらについては、また紹介する機会を持ちたい。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 Matsumoto,T.,1977 : Some heteromorph ammonites from the Cretaceous of Hokkaido.
             九州大学理学部紀要、シリーズD、地質学、vol.23、p.322?323




0375 掲 載 日 2019年12月26日(木)
標 本 名  @,A Telescopium schencki (Hatai and Nisiyama)
          テレスコピウム    シェンキィ
 B      Telescopium telescopium (Linnaeus)
          テレスコピウム    テレスコピウム
    
産  地   @, A 岡山県津山市高尾 皿川河床
  B   沖縄県八重山郡竹富町字古見  後良川(しいらかわ) 河口
時代 地層   @, A 新生代 第三紀中期中新世  勝田層群 吉野層
  B   完新世    現生 (200〜300年前)
標本写真
  


コメント @, A 2018(平成30)年5月13日 入手 ムカシセンニンガイ
B    2017(平成29)年7月19日 採集   センニンガイ オニノツノガイ超科 ウミニナ科 センニンガイ属

 勝田層群からはVicarya yokoyamai Takeyama の産出層準から稀に産出することが知られている。ここに紹介するムカシセンニンガイもヨコヤマビカリアの多産する層準から産出したもので、殻は保存されていないが頂角がヨコヤマビカリアの23度〜26度に比べ大きく32度〜36度あることからムカシセンニンガイとした。
 現生のセンニンガイは西表島のマングローブの広がる後良川の河口の前浜にほかの貝類と共に打ち上げられていたもので、殻の色彩は退色していて、死後の時間の経過は分らないが、南西諸島からセンニンガイが見られなくなったのは200〜300年前と云われている。この標本は過ってはマングローブの泥の中に埋もれていたものが洗い出されてきたものではないかと考えられる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 中川登美雄 1998 石川県加賀市山代の河南層 (中期中新世)から産出したTelescoρium schencki
              地球科学52巻, p240-243 
 Eiji Taguchi 2002  Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan
Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 29 (2002), p. 95-133, 8 pls., 33 figs., tables.




0374 掲 載 日 2019年12月19日(木)
標 本 名  Ova lacunosus (Linnaeus)
    オブァ  ラキュノサス リンネ
産  地   福岡県北九州市小倉北区馬島
時代 地層   現 生
標本写真 図1 反口側                   図2 口側


図3 口                    図4 肛門
 
コメント 2008(平成20)年10月11日 採集   ブンプクチャガマ 不正形類ブンプク目ブンプクチャガマ科

 北九州市立いのちの旅博物館の岡崎・御前両先生の案内で芦屋層群での巡検、足元に広がるグリキメリスの化石床、これらの貝化石に満喫しながら、現生貝類の浜辺に打ち上げられたものも採集を楽しんだ。
勿論 とげはほとんど抜け落ちてはいるが 本体は崩れず残され 各部の殻の特徴は残されていて化石との対比標本と思い持ち帰っていた。 手で持つだけでも乾燥した薄い殻は今にもつぶれそうなので、口の部分から細かな砂とセメントを混ぜて満杯に詰め込み、少量の水を流し込んで内部から固め補強した。ずっしりと重くなり 完新世前期の化石と間違うほどの標本になった。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 
 田中 颯 et al.  2019  ウニハンドブック   株式会社 文一総合出版




0373 掲 載 日 2019年12月12日(木)
標 本 名  Peronella japonica Mortensen
    ペロネラ      ジャポニカ     モーテンセン 
産  地   沖縄県八重山郡竹富町字南風見田(はえみだ)  南風見田の浜
時代 地層   現 生
標本写真



コメント 2017(平成30)年7月19日 採集  ヨツアナカシパン 不正形類タコノマクラ目カシパン科ヨツアナカシパン属

 この南風見田(はえみだ)の浜は、西表島の南の海岸で、ずっと南の沖合には波照間島を望む遠浅の美しい白砂のビーチで、数キロにわたって真水の流れ込む大きな河川が見られずマングローブ湿地が形成されていない海岸。
これらの事からマングローブ域の海岸とは違った現生貝の打ち上げが見られ、中でも今回紹介するヨツアナカシパンは破損したものが多いがたくさん打ち上げられている。 
 尚、よく似たものにヨツアナカシバンモドキというものもあるが、これは花紋の先端はわずかに開いていて、肛門はヨツアナカシパンよりもっと内側ある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田中 颯 et al.  2019  ウニハンドブック   株式会社 文一総合出版

 うみうさぎ堂 海で出会うさまざまなこと  http://umiusagi-do.net/umi/umiindex.html

 あうるの森   http://owlswoods.cocolog-nifty.com/blog/
          http://owlswoods.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-968c.html




0372 掲 載 日 2019年12月5日(木)
標 本 名  Acila (Acila) vigilia Schrenc
    アシラ  (アシラ)    ヴィジリア   シュレンク 
産  地   北海道石狩市厚田区望来(もうらい)   望来海岸
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世後期    南厚田層群  望来層
標本写真
 


コメント 1984(昭和59)年6月22日 採集       カラフトキララガイ

 石狩市厚田区望来浜付近海岸では,数 kmにわたり泥質堆積物を主体とする断崖露頭が連続して露出しシロウリガイ属化石が多産することが知られている(Amano, 2003など) このシロウリガイは冷水湧出帯生物群集(Cold Seep Community)を構成する種のひとつであるとされ (Wikipediaより)  2000年代初頭に注目され多くの研究がされている。
 これらに伴って 今回紹介するカラフトキララガイの産出も知られている。この日は2時間程度の採集で、殻の風化が進んで殻表の装飾が溶け内殻が真珠光沢に輝いたものが多く、良品はなかなか得難かった。
 尚 カラフトキララガイ Acila (Acila) vigilia Schrenck は現生種に与えられた名前である。
備 考 引用・参考文献
 対馬坤六,垣見俊弘,植村 武 1956  5万分の1地質図幅および説明書「厚田」.  地質調査所




0371 掲 載 日 2019年11月28日(木)
標 本 名  Acesta goliath (Sowerby)
    アセスタ ゴライアス 
産  地   兵庫県香美町村岡区大糠(おおぬか) 湯舟川河床
時代 地層   新生代 新第三紀 中期中新世     北但層群  村岡層 湯舟川頁岩層
標本写真




コメント 2015(平成27)年5月20日 採集   ミノガイ科 オオハネガイ属

 ぼうずコンニャク市場魚貝類図鑑によると 北海道南部・相模湾・富山湾など水深100-1400mの砂泥地に生息するとされている。
この大糠のシルト質泥岩(頁岩)も、北但層群の村岡層の 海進の進んだ海(深い海)に堆積したとされる湯舟川頁岩層と呼ばれる地層であり、水温も比較的に低い環境に堆積したものと考えられている。
 尚、掲載の標本は殻の保存がなく 凸型の標本であるが 現場では薄い殻が残されたものをみることもある。
それらの殻には細かな放射肋と成長輪脈交叉が、特に腹縁部近くに残されている。
備 考 引用・参考文献
 松原尚志 2011 兵庫県但馬地域の北坦層群産中新世浅海軟体動物(英文) 
            瑞浪市化石博物館研究報告 第37号 p. 51-113
 山名 巌 1997 鳥取県化石誌    発行 (株)富士書店 




0370 掲 載 日 2019年11月21日(木)
標 本 名  “Teredo” sp.  
     テレド 属
産  地   福井県大飯郡高浜町小黒飯(おぐるい)
時代 地層   新生代新第三紀中新世     内浦層群  下層 (しもそう)
標本写真



コメント 2008(平成20)年5月4日 採集    テレド属  フナクイムシ類の生痕
   ※参照 想い出の化石(5) 0236 掲載日 2017年4月13日
 フナクイムシ(二枚貝類)の沈埋木の樹幹に残された摂食跡あるいは生活痕で時として生痕化石として扱われる。
 下記の中川氏によると 海底に沈んてTeredo sp. に穿たれた樹幹と、この産地で最も注目されたAturia cubaensis キューバ アッリアの殻の浮力が似ていたためオウムガイ (Aturia cubaensis) を探す目印とされたようである。
この現象は中生代のアンモナイト類の産状にも見られことでよく知られていて、樹幹化石産出には注視する必要がある。
備 考 引用・参考文献
 中川登美雄 2009  福井県内浦層群下層から産出した熱帯砂底ならびに岩礁棲軟体動物化石群集
                瑞浪化石博物館報告 35  p. 127-151
 福井市自然史博物館 2018  福井県大飯郡高浜町  小黒飯の化石 図版 中川登美雄 編集




0369 掲 載 日 2019年11月14日(木)
標 本 名  Inoceramus amakusensis Nagao and Matsumoto
     イノセラムス  アマクセンシス
産  地  熊本県上天草市姫戸町姫浦 
時代 地層  中生代 白亜紀後期   姫浦層群 樋の島層 
標本写真


コメント 1987(昭和62)年1月1日採集     イノセラムス 属  
      ※参照 前掲 0241 掲載日 2017年5月18日とは別標本

 姫浦層群で初めての一人巡検、この頃はインターネットの環境はなく、一般市販書籍の情報を頼りに現地を訪ねた。
前掲の想い出の化石(2) 0051 掲載日 2013年9月19日の記事と同一場所
 大矢野島の義理の伯母に、お節料理を弁当として持たせてもらっての化石採集、元旦早々いい思いをさせてもらった。
工事に出くわさなければこの様な標本を持ち帰ることはなかっただろう。 
備 考 引用・参考文献
 小城祐樹ほか 2011  天草上島東部に分布する上部白亜系姫浦層群の層序と詳細な地質年代
     地質学雑誌 第117巻 第7号 398-416
 田代正之 1992 「化石図鑑」日本の中生代白亜紀二枚貝(自費出版本) p86 図版19-4 




0368 掲 載 日 2019年11月7日(木)10/24と一括投稿
標 本 名  Enchodus sp.   (遊離歯)
     エンコードゥス 属
産  地  兵庫県洲本市由良町
時代 地層  中生代 後期白亜紀  マストリヒチアン階    和泉層群  北阿万層 
標本写真




引用先   http://oceansofkansas.com/Enchodus.html
The skull of an Enchodus gladiolus on exhibit in the Sternberg Museum of Natural History, Hays, KS.
コメント 2014年(平成26年)5月25日 採集  Enchodontidae  エンコードス  標本写真再掲載

 Enchodus sp. の化石は白亜紀後期の地層の分布するアメリカ中西部など、ほぼ世界中から産出している。 E. sp. の最も顕著な特徴は、上顎と下顎の前部に大きな"牙"の存在で、白亜紀後期に繁栄した獰猛な魚食性の硬骨魚類であるとされるが、しかし当時のサメ類やモササウルス類の胃の中からも一般的に見られるらしい。
 淡路島洲本市南部の北阿万層では、属種不詳の魚鱗のほとんとは散在して産することが普通であり、魚類の歯は、軟骨魚類(サメ類)と同様に、それぞれ遊離歯として稀に産している。
備 考 引用・参考文献
 Enchodus sp.
    The Sabre-Toothed Fish of the Cretaceous (白亜紀のサーベル歯をもつ魚類)
    Copyright c 2003-2013 by Mike Everhart
    Created 10/26/2003: last updated 026/12/2013
 http://oceansofkansas.com/Enchodus.html




0367 掲 載 日 2019年10月31日(木)10/24と一括投稿
標 本 名  Pugilina mimasakaensis (Yokoyama)
   プギリーナ ミマサカエンシス
産  地  岡山県津山市上野田  広戸川 河床
時代 地層  新生代中期中新世  勝田層群  吉野層 
標本写真

コメント 2018年(平成30年)8月10日 採集     ミマサカテングニシ

 この年岡山県倉敷市真備地域では犠牲者もでる大変な水害に襲われた。この豪雨は同県津山地域でも大きな被害こそ出なかったが、多くの河川は激しく増水し、河川敷の様子が大きく変貌した。これまで草木で覆われていた川の中州がきれいにむしり取られ、川底の堆積物が取り除かれ本来の川底の中新世の砂岩層が現れていた。
不謹慎かもしれないが、このチャンスを得て初めて採取できた標本、川ズレで完全なものがないが、狭い範囲に表出していたもの。
備 考 引用・参考文献
 中川登美雄 2009  福井県内浦層群下層から産出した熱帯砂底ならびに岩礁棲軟体動物化石群集
              瑞浪市化石博物館研究報告 35 p.127-151
 Eiji Taguchi  2002   Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan
              Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, 29 p.95-133



0366 掲 載 日 2019年10月24日(木)
標 本 名  Mizuhopecten yessoensis yokoyame Masuda
   
ミズホペクテン エゾエンシス ヨコヤマ
産  地  石川県金沢市大桑 犀川河床
時代 地層  新生代 第四紀 前期更新世       大桑層 ( 大桑砂岩層 ) 
標本写真



コメント 1986年(昭和61年)9月15日 採集  ヨコヤマホタテ

 大桑・万願寺動物群 (Otuka,1939) とは石川県金沢市郊外の大桑 (おんま) 付近、および秋田県由利本荘 (ゆりほんじょう) 市万願寺付近から産出する動物化石群をいい、主として日本海側に分布する鮮新世か ら初期更新世の主に貝類群から構成され、日本海が生物地理的に独立していた日本海側を中心に栄えた動物群で、沖合性種を含み寒流系の貝類を主体としている
備 考 引用・参考文献
 天野和孝 2007  大桑 ・ 万願寺動物とその変遷過程
             日本古生物学会  化石 第82号, p.6-12
 金子敦志 et .al. 2016   日本海中部沿岸域における前期更新世の環境変動による底生動物群への影響
             :富山県小矢部市田川周辺の大桑層産軟体動物群の検討を通じて
             日本地質学会 地質学雑誌,122,  p.193-206




0365 掲 載 日 2019年10月17日(木)
標 本 名  Gaudryceras tenuiliratum Yabe
   
ゴードリセラス  テヌイリラタム
産  地  熊本県上天草市龍ヶ岳町高戸椚島 (くく゛しま)
時代 地層  中生代 白亜紀 (サントニアン〜カンパニアン)  姫浦層群 樋の島層 
標本写真

コメント 1993年(平成5年)10月30日採集        ゴードリセラス属

 樋の島層の分布する椚島 (くく゛しま)は周囲3.5km程の小さな島。 サメの歯化石の産出で知られている龍ヶ岳町高戸 和田の鼻、また地層名の模式地となっている樋の島、それらを隔てる水道を渡る橋で繋がれ隣接する。 
 島は大まかに見て南の海岸を底辺とする L 字形をしていて、地層の走行はほぼ南北方向で、海岸線の植生は島の西海岸では薄く干潮時には地層が広く見ることができる。
 化石は主に西海岸での産出が知られ、アンモナイト類、二枚貝類のイノセラムスやグリキメリスをしばしば見る。
※参照 想い出の化石(1) 0001 掲載日 2012年9月30日
備 考 引用・参考文献
 小城祐樹 et al. 2011  天草上島東部に分布する上部白亜系姫浦層群の層序と詳細な地質年代
                  地質学雑誌 第117巻 第7号 p398-416




0364 掲 載 日 2019年10月10日(木)
標 本 名  Nanonavis splendens (Ichikawa & Maeda)
   
ナノナビス  スプレンデンス
産  地  兵庫県南あわじ市灘黒岩
時代 地層  中生代 白亜紀後期 マストリヒチアン階    和泉層群 下灘層 
標本写真






コメント 2000年(平成12年) 7月30日  採集   シコロエガイ科

 下灘層は淡路島の南の海岸線に沿って東西に凡そ11q、北側は多くの東南東―西北西方向の断層線で切られ、最大幅2.5qと細長く分布し北阿万層と接している。
 下灘層におけるN. splendens の産地は偏りがあり、その産状にも違いが見られる。特に黒岩・吉野では海岸の転石として見られ、海底の地層から洗い出されたと思われる植物片を多く含む泥質ノジュールから産出することが多い。また、これらのノジュールには、しばしば長径20〜30cm大の Pachydiscus cf. subcompressus P. aff. fleuxosus また Gaudryceras izumiense それに G. makarovense 等のアンモナイト類の保存の良いものが多く含まれている。
 この産地のN. splendens は合弁で殻は半開きのものも多い。 また殻の保存は良いが、はなはだ分離が悪く剖出は難しい。今回掲載した標本は長径20cm程のノジュールの中央に保存されているのだが、殻の表面部の装飾は溶けている。よって分離が良く剖出は容易だった。ただ、この標本の続成作用のどの段階で殻が溶けたのか考察するのも興味がある。
備 考 引用・参考文献
 岸本眞五 2016  淡路島の和泉層群から産出する二枚貝類化石
             兵庫県立人と自然の博物館  共生のひろば  11号  p.56-61




0363 掲 載 日 2019年10月3日(木)
標 本 名  Linuparus japonicus Nagao
  
リヌパルス ジャポニカス
産  地  兵庫県南あわじ市広田 広田(長田) 
時代 地層  中生代 白亜紀後期 カンパニアン階    和泉層群 西淡層 
標本写真

コメント 1989年(平成元年) 1月29日  採集   ハコエビの仲間  ニッポンハコエビ

 この年の1月7日 午前6時33分に天皇裕仁(昭和天皇)が崩御され 翌1月8日に 皇位継承により、元号法に基づき、元号「平成」が始まる。
 不謹慎にも日本中が喪に服している1月8日 当時マニアの間で長田(ナガタ)と呼ばれていた県の公園開発工事現場へ パキディスカスを求めて尋ねていた。
掲載標本は西淡層から産出した唯一の L. japonicus で保存状況は芳しくないが、左わき腹部に細かな条線が見られる。 これらの構造は発音器官の一部だと云われている。
 標本は下記の論文の資料一つとして紹介され、これに伴って2018年10月8日に兵庫県立人と自然の博物館に収蔵され 同館の収蔵 D1048491が与えられた。
備 考 引用・参考文献
 Hiroaki Karasawa, Shingo Kishimoto, Masaaki Ohara, and Yusuke Ando 2019
Late Cretaceous Decapoda from the Izumi Group of Japan, with descriptions of two new genera and one new species of Axiidea and one new family of Brachyura
      Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 45 p.43-85



い出の化石(8)

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週に一度 想い出の化石として標本を紹介していきます。


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