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週に一度 想い出の化石として標本を紹介していきます。


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0459 掲 載 日 2021年9月30日(木)  
標 本 名  Fig.1  Anadara (Scapharca) abdita (Makiyama)

 Fig.2  Anadara (Hataiarca) kakehataensis Hatai et Nisiyama
    
産  地 Fig.1 岡山県新見市西方辻田   
Fig.2 岡山県津山市高尾 皿川  
時代 地層  新生代 新第三紀    中新世中期  Fig.1  備北層群 下部砂岩層   
                         Fig.2   勝田層群 吉野層         
標本写真
  
Fig.1a         Fig.1b         Fig.1c


Fig.2
コメント Fig.1  1997年(平成9) 5月 5日    採集 
Fig.2  2021年(令和3) 9月13日   採集  フネガイ科 Arcidae フネガイ属 Arca

 この仲間は 蝶番線が長く真っ直ぐで、多数の鋸歯が一列に並ぶのが特徴。
Vicarya などのウミニナ類の仲間とは共産することは少ない Anadara (Scapharca) abdita (Makiyama) は
殻は中形、やや丸いハコ型である、殻頂はやや前よりにありふくれ、そびえる、右殻では26〜31の放射肋があり顆粒状になり、肋間とほぼ等しい。肋上には浅い溝があり、2つに分かれる。肋間は角張り規則的な成長脈と交わって梯子状になる。左殻は26〜32本の肋をもち、やや丸く肋間より少し広い顆粒状になり、2分する傾向は弱いかあるいは不明瞭、肋間は浅くてせまい、靭帯面はせまく鈍角三角形。
Vicarya と共産する Anadara (Hataiarca) kakehataensis Hatai et Nisiyama は殻は中型〜大型で後方に著しく高まる、殻頂から後腹縁までの後部にそって著しく凹んでいる。殻表面には約25本の強くて高い、顆粒のある放射肋がある。
また、備北・勝田層群では Anadara (Scapharca) daitokudoensis (Makiyama) の産出も少なからずある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田口栄次 et al. 1979
    岡山県新見市および大佐町における中新世備北層群貝化石群集
    瑞浪市化石博物館研究報告 第6号 p. 1-15  pl. 1-4
 田口栄次  1981
    岡山県勝田層群からの Geloina および Telescopium を含む貝化石群集 (英文)
     ━ 特に本邦中新世における汽水性貝類の帯状ぶんぷについて ━
    瑞浪市化石博物館研究報告 第8号 p. 7-20  pl. 2-4




0458 掲 載 日 2021年9月23日(木)  
標 本 名   Clementia aff. papyracea Gray
   クレメンティア        パピレシア  
産  地  岡山県勝田郡奈義町柿 荒神谷  
時代 地層  新生代 新第三紀    中新世中期    勝田層群 吉野層
標本写真
 
Fig.1                     Fig.2a

Fig.2b
コメント 1997年(平成9) 5月 5日    採集   マルスダレガイ科 カミブスマガイ属

 田口栄次 1981で紹介されているフスマガイ属はClementia japonica Masuda とされているが、東北大学総合学術博物館 二枚貝データベースにあげられている東印内層の輪島市町野町徳成産出の C. japonica のHolotype標本の画像を見る限り、勝田層群のそれとは大きく異なる。 しかしこの貝、殻が大変薄く圧密で変形を受けやすく、外観からだけでの同定は注意がいる。
例えば干潟系化石の館 Arcid-Potamid 群集記念館に紹介されている津山の C. papyracea では扁平で膨らみが少なく殻頂はやや中央寄りに見え、一見徳成のものに近いと思える。
勝田層群では津山市新田を除いて、ビカリアに伴って見ることが多く産出は少ないが普通に見る化石といえる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田口栄次 1981
    岡山県勝田層群からの Geloina および Telescopium を含む貝化石群集
    瑞浪化石博物館研究報告 第8号  7-20  pl2-4
 干潟系化石の館 Arcid-Potamid 群集記念館
     https://higatakaseki.web.fc2.com/     2021/09/20 閲覧
 東北大学総合学術博物館 二枚貝データベース
     http://webdb2.museum.tohoku.ac.jp/t_bivalve/   2021/09/20 閲覧




0457 掲 載 日 2021年9月16日(木)  
標 本 名   Meretrix arugai Otuka
  メルトレックス   オルグアイ    
産  地  岡山県勝田郡奈義町中島東 院内大池  
時代 地層  新生代 新第三紀    中新世中期    勝田層群 吉野層
標本写真
 
Fig.1a                                 Fig.1b

 
Fig.2a                                 Fig.2b
コメント Fig.1 1999年(平成11)11月28日 
Fig.2 2008年(平成20) 1月 3日    採集    マルスダレガイ科   ハマグリ属

 殻は大型で、表面は平滑。 丸みを帯びた亜三角形をしており、前縁が丸く、後背縁はゆるやかに湾曲する。後端は狭くなるとともに殻頂は高まる。主歯・前側歯を持つ。套線湾入は浅い。
 特に現生のハマグリ (Meretrix lusoria Roding) はとても美味で、「その手は桑名の焼きはまぐり」として名が知られ、商品価値は高いが、全国の干潟で絶滅危惧種とされその数は減ってきている。 シナハマグリやチョウセンハマグリが、それにとって代わってきている。
 ところで、勝田層群、備北層群では、門ノ沢動物群の要素の指標する一つの種とされているが、きわめて産出は稀で、ビカリア等の泥質砂岩層からの産出はなく、この掲載標本もツリテラを多産する砂岩層の下部層の礫岩層に含まれていた。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Nakagawa, T., 1998
   Miocene Molluscan Fauna and Paleoenviornment in the Niu Mountains, FukuiPrefecture, Central Japan.
   Science reports of the Institute of Geoscience, University of Tsukuba. Section B, Geological Sciences, vol.19, pp.61-185.

 Eiji Taguchi 2002  
   Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan
   Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 29 (2002), p. 95-133, 8 pls., 33 figs., tables.




0456 掲 載 日 2021年9月9日(木)  
標 本 名   Inoceramus sp.
    イノセラムス  
産  地  山口県下関市豊田町大字手洗(石町)  豊田下郵便局 東
         34度10分35.92秒 131度3分48.05秒   
時代 地層  中生代  前期ジュラ紀上部 プリンスバキアン階上部〜トルアシアン階
           豊浦層群   西中山層
標本写真



コメント 1972年(昭和47) 8月 2日  採集      イノセラムス属

 この地区を流れる木屋川と豊田下郵便局の東側を北から合流する小さな河川、本浴川の合流部での採集。 当時大嶺高校の生物の教鞭をとられていた岡藤五郎先生に地図上で指導して頂いた産地で、昭和47年1月 車の免許を取ってから初めての一人での長距離遠征の巡検だった。
 ここを訪ねてから50年近く経っているが、今になっても現場の状況をありありと想いだす。 まだ採集道具も十分な物を持っていない頃で、現地の川底に広がる黒色葉理泥岩を割出すのに悪戦苦闘。 結果、小さなアンモナイトを数点確保でき、これが私にとって初めてのアンモナイト採集となった。 また、Inoceramus sp. (幼貝?)と思えるものも採取していた。 小林 1926では、Inoceramus utanoensis,  I. ogurai などが記載されている
尚、現在、この地域での化石採集は原則として禁止されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Teiichi Kobayashi (小林貞一) 1926
    Note on the Mesozoic Formations in Prov., Nagato, Chugoku, Japan.,
    日本地質学会   地質学雑誌 33(398), 1-9
 前田 晴良, 大山 望    2019
    山口県西部に分布する三畳系美祢層群とジュラ系豊浦層群の層序と化石群
       巡検案内書:第126年学術大会(2019山口大会)
    日本地質学会 地質学雑誌/125 巻 (2019) 8 号  p. 585-594




0455 掲 載 日 2021年9月2日(木)  
標 本 名   Modiolus sp.
    モデォルス  
産  地  岡山県高梁市川上町地頭
           34.733010, 133.478372  
時代 地層  中生代 三畳紀後期 ノーリアン階   成羽層群  地頭層
標本写真
  
コメント 1977年(昭和52)10月29日  採集   ヒバリガイ属

 地頭の Monotis ochotica といえば、三畳紀 Norian (ノーリアン) 階の示準化石で、国内有数の産地として古くから知られている。
今、Googleマッブのストリートビューで見る産地付近の景色には、採集に訪れた45年近く前の面影はほとんど残されていない。
只、「地頭橋」が唯一の手掛かりと思う、当時地形図(1/5万:油木)に産地をプロットしていなかったら思い出すのは無理かもしれない。 Monotis ochotica を採集目的に里山の中腹の山肌の含有層を掘って容易く多くを採取したことを思い出す。
この時に、ここに掲載した Modiolus sp. と思えるものを1個体採取していた。合殻の標本で殻の前後方向からの圧力変形を受けており殻頂から腹縁に掛けて割れ目が稜線の様に鋭く盛り上がっている。殻表には多くの細い輪肋が見られる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 正岡祐人・鈴木茂之 2015
     岡山県川上町地頭地域における上部三畳系成羽層群地頭層の層相解析
     OKAYAMA University Earth Science Reports, Vol.22, No1, 31-39,




0454 掲 載 日 2021年8月26日(木)  
標 本 名  "Inoceramus" awajiensis Matsumoto
    イノセラムス     アワジエンシス
産  地  兵庫県南あわじ市灘払川・灘山本
時代 地層  中生代 白亜紀後期 マストリヒチアン   和泉層群 下灘層
標本写真





コメント 2008年(平成20) 3月2日 他 採集

 この種は下灘の払川や山本の山間部に見られる砂質泥岩層から多く産している。払川では特に多産し、これらの離弁殻が密集した団塊も見られる。
 形態は Inoceramus 属の殻表の特徴的な大きく波打った輪肋装飾は見られず、イガイ属やヒバリガイ属の様な微かな成長線で平滑な殻表の形状から、一見 Inoceramus とは思えない。 Mytiloides 属に近い とする説もある。
 また九州大学総合研究博物館 データベースではTenuipteria awajiensis (Matsumoto)ともされている。
近年になって再び、白亜系のマストリヒチアン最上部を特徴づける “Inoceramus” 属として注目されている。この種のレンジの上限は古第三紀ダニアンまでのびる可能性があるとされ今後の研究の成果がまたれる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 利光誠一・松本達郎 et al. 1995
     本邦上部白亜系の大型化石−微化石層序および子地磁気層序の統合に向けて
     地質学雑誌 第101巻 第1号 p.19-29
 松本達郎・西田民雄 1995
     北海道の上部白亜系中部における二枚貝類Mytiloidesの層序的産出
     化石 59 (1995), p.47-66
 磯崎行雄・長谷川稜・益田晴恵・堤之恭  2020
     紀伊半島西部, 和泉層群最上部からの古第三系の発見
     地質学雑誌 第126号 第11号 p.639-644




0453 掲 載 日 2021年8月19日(木)  
標 本 名  Inoceramus balticus Bohm
  イノセラムス    バルティカス
産  地  兵庫県南あわじ市灘黒岩(東)
時代 地層  中生代 白亜紀後期 マストリヒチアン   和泉層群 下灘層
標本写真


コメント 上図 2006年(平成18) 7月16日  採集
下図 2010年(平成22) 11月3日  採集     ウグイスガイ目  イノセラムス科

 これまで下灘層のInoceramus と言えば下灘の山間部の沢から産出する "Inoceramus" awajiensis だけしか見たことがなかった。 これらは海岸礫からの採集品。   2006年と2010年に各一個体採取。
 2010年のこの日、明石海峡大橋の供用が1998(平成10)年の4月5日に開始され、明石淡路フェリー愛称「たこフェリー」の乗船客は大幅に減り、フェリーの運航は無理となり、ついに2010年11月15日の運航をもって航路が休止(廃止)された。
 私にとってこの日、40年近く島へ渡る交通手段として親しんできた「たこフェリー」最後の乗船となった。

 参照 http://pravito.web.fc2.com/skcoll-168web.htm
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田代正之 1992  「化石図鑑」  日本の中生代白亜紀二枚貝    自費出版




0452 掲 載 日 2021年8月12日(木)  
標 本 名  Meretrix lusoria Roeding
  メレトリクス    ルーソーリア
産  地  兵庫県姫路市広畑区小松町 地下2.5m
時代 地層  新生代  第四紀  完新世   播磨海成砂質粘土層                          
標本写真




以下 参考資料



コメント 1986(昭和61)年12月?日 採集    マルスダレガイ上科 マルスダレガイ科 ハマグリ属

 今から凡そ10,000年から6,000年前、最終氷期が終り、海水面が上昇した縄文海進時代と呼んでいる、大阪の梅田粘土層が堆積した時と ほぼ同じころ我が町広畑も海の底。
 下水道本管埋設工事で自宅前の道路を2.5m掘削したときの採集品、下図の梅田粘土層の標本は1979年に大阪梅田の第四ビル建設時に基礎工事の掘削現場地下7.5mを見学させていただいたのち大阪南港の残土処分場で採取したもの。
 現在の浜辺でも見られる ハマグリとチョウセンハマグリ(Meretrix lamarckii Deshayes)は、それぞれ単品で見るとなかなか区別するのは難しい。 下図の梅田粘土層の標本で見られるように、殻はハマグリの方がより丸みが強く、チョウセンハマグリは殻幅がやや広く横長であり、内殻に残された貝柱の筋痕また外套線の形状にも違いがある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 佐藤裕司 2008   瀬戸内海東部、播磨灘沿岸域における完新世海水準変動の復元
                第四紀研究 (The Quaternary Research) 47 (4) p.247-259
 Blog beachmollusc ひむかのハマグリ   https://beachmollu.exblog.jp/   2021/8/10 閲覧




0451 掲 載 日 2021年8月5日(木)  
標 本 名  Vicarya yokoyamai Takeyama
  ビカリア     ヨコヤマイ
産  地  鳥取県八頭郡若桜町舂米 
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世 鳥取層群 岩美層 諸鹿礫岩部層                          
標本写真


 
コメント 1996年(平成8) 5月26日ほか 採集     ヨコヤマビカリア

 この産地のビカリアは殻が圧密変形を受け扁平に潰されているのが多く、殻は勝田層群などで産出のものと比べ黒色をしており“黒いビカリア”と呼ばれマニアには人気が高い。
先日7月30日に久々に採集に訪れた。 木々のうっそうとした深い谷底の権現滝のそばの産地。木陰で滝の水しぶきを浴びながらの採集は真夏には最高の贅沢といえる。
 早速河床の泥岩層に、川ズレのビカリア発見。 しかも内部がケイ酸塩鉱物に置換して殻の黒さに対比して白く輝いている、しかも殻の潰れはなく丸みがある素晴らしい標本になると思える良品だ。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 山名 巌  1997    鳥取県化石誌      株式会社 富士書店 発行




0450 掲 載 日 2021年7月29日(木)  
標 本 名  Orectospira sp. cf. O. shikoensis (Yokoyama)
   オレクトスピラ属             シコエンシス
産  地  兵庫県美方郡香美町村岡区大糠(オオヌカ) 湯舟川河床 
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世 北但層群 村岡層 湯舟川部層                          
標本写真

コメント 2005年(平成17) 8月16日 採集   ウズラカニモリガイの仲間

 螺塔は伸び、円錐状に広がり、それぞれの縫合下部と螺層の肩に多くの顆粒が並び 螺層には輪脈と縦方向の、それぞれの顆粒に対応した成長脈が見られる。
 ウズラカニモリガイの仲間は深海域に棲息するとされる種が多く、兵庫の近県では、鳥取層群普含寺層、備北層群上部泥岩層、勝田層群高倉層や野介代部層などの海進が進んだ海に堆積した泥岩層からの産出が知られている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 山名 巌  1997    鳥取県化石誌      株式会社 富士書店 発行




0449 掲 載 日 2021年7月22日(木)  
標 本 名  Clinocardium (Ciliatocardium) shinjiense (Yokoyama)
   クリノカルディウム   キリアトカルディウム  シンジエンゼ  
産  地  島根県松江市宍道町東来待鏡の国道9号線沿い (鏡の地蔵堂の西) 
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世 出雲層群 布志名層                          
標本写真



コメント 1980年(昭和55) 5月4日 採集   

 この年 血気盛んな32才、化石の趣味にどっぷりはまり込んで、月に2度のペースでフィールドへ出ていた。
岡山・広島の勝田・備北層群、滋賀の鮎河、京都の綴喜、和歌山の外和泉、滋賀多賀の権現谷層、三重の一志、島根の出雲、兵庫の北但、岐阜大垣の金生山、兵庫の神戸層群、淡路の和泉層群、滋賀の古琵琶湖層群 西へ東へ北へ南へ 忙しく走り回った、世間の景気がすこぶるよかった時代だった。
全国いたるところで大規模な開発工事か始まり 化石の産出層が現れ、各地からの情報がわんさか入ってきた。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 末広匡基  1979  島根県布志名層産中新世貝化石群  
               瑞浪市化石博物館研究報告  第6号  66-100  Plate 10-16
 大久保雅弘編  1980  改訂 山陰地学ハイキング (株) たたら書房 刊




0448 掲 載 日 2021年7月15日(木)  
標 本 名  Acila (Acila) divaricala submirabilis Makiyama
   アキラ      ディバリカタ       サブミラビリス  
産  地  島根県松江市宍道町東来待鏡の国道9号線沿い (鏡の地蔵堂の西) 
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世 出雲層群 布志名層                          
標本写真



コメント 1980年(昭和55) 11月3日採集 クルミガイ目 クルミガイ科 オオキララガイ属

 この科 (Family) については 私自身 これまで後期白亜紀以降更新世まで各地の地層から採取している。 棲息期間が長い仲間で、その特徴も長く保たれている。
 この掲載種 A. (A.) divaricala submirabilis は 殻頂は前方に方寄り、殻表には分岐状の放射肋が刻まれ、前背縁と後背縁のなす殻頂角は115度内外で大きく開いている。 
 A. submirabilis では (想い出の化石(5) 0249 掲載日2017年7月13日参照) では殻頂角は90度前後とほぼ直角に近い。
また、この科の殻は厚く内面は真珠光沢があり、また櫛歯状の小歯が多く並ぶという特徴がある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 坂之上 一 1998  『出雲地方の貝化石』 糸魚川淳二監修 島根県立三瓶自然館 刊行

 末広匡基  1979  島根県布志名層産中新世貝化石群  
               瑞浪市化石博物館研究報告  第6号  66-100  Plate 10-16




0447 掲 載 日 2021年7月8日(木)  
標 本 名  Eoscaphander sp.
   エオスカファンデル 属  
産  地  三重県津市美里町 分郷 
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世 一志層群 大井層 三ケ野部層                          
標本写真


      

 
スイフガイの歯と胃板
JAMARCのHPより借用
コメント 1983年(昭和58) 10月9日採集 スイフガイ科 Family Cylichnidae オオスイフガイ属の一種(水夫貝)

 殻は薄質で卵形、殻頂は生貝では穴にならず滑層で埋まっている。殻表には螺状溝(成長線)が密に走る。殻口は大きく開き下膨れになる。この仲間は殻以外に"胃板"という独特な石灰質の部位を持ち、歯(A)はへの字型,胃板(B)は亜三角形で凹凸が多い形状。この仲間は、現生では日本近海の半深海の200m以深で生息しているものが多い。
 三ケ野部層の産出化石種を見ると、堆積環境 (吹き溜まりを示す多種が入り交ざって産出する)からすれば浅海域での堆積を想像できる。
このことは、共産化石それぞれの現生種の生息環境からみて、深い海底の環境でなく海水温が低かったのではないかと思える。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 JAMARC ホームページ     2021年7月5日 閲覧
    国立研究開発法人
        水産研究・教育機構 開発調査センター
            http://jamarc.fra.affrc.go.jp/index.htm
        スイフガイ科(Scaphadridae)    
            http://jamarc.fra.affrc.go.jp/database/zukan/c/c-2/c-m091/c-309.htm




0446 掲 載 日 2021年7月1日(木)  
標 本 名  Inoceramus shikotanensis Nagao & Matsumoto
   イノセラムス   シコタネンシス  
産  地  兵庫県洲本市由良町 
時代 地層  中生代  白亜紀後期  マーストリヒチアン前期   和泉層群  北阿万層
標本写真





コメント 上図 2015年(平成27) 5月15日 採集
中図 2011年(平成23) 4月24日 採集
下図 下記 西村 2021より引用 穂別博物館のキャラクター

 この種はこの産地では普通に産出しており 亜成体から成体まで見る、合弁の産出も多い。
殻頂付近の成長の初期段階を示すと思える殻の同心円肋は細かく数多く規則的で密である。一定の成長段階を過ぎると、同心円肋は急に緩く幅広く、低い不規則な肋に変わる。
 松永2008で蝦夷層群の函淵層からPravitoceras sigmoidale の産出が報告され、また、その共産化石の中に Inoceramus shikotanensisAnisomyon problematicus があるとのことだが、淡路島ではP. sigmoidale はカンパニアン最上部層とされている西淡層でのみで知られている。 それに I. shikotanensis A. problematicus はこの由良町の北阿万層(マストリヒチアン下部)でのみ産出している。それぞれの棲息期間を詳しく知りたいものだ。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 西村智弘 2021 イノセラムス科二枚貝のキャラクター;「いのせらたん」の教育・普及活動および評価
              むかわ町穂別博物館研究報告 第 36 号7-31 頁
 Matsunaga et al.  2008  First discovery of Pravitoceras sigmoidale Yabe from the Yezo Supergroup in Hokkaido, Japan.
              Paleontological Research, 12, 309-319.
 田代正之 1992  「化石図鑑」  日本の中生代白亜紀二枚貝    自費出版




0445 掲 載 日 2021年6月24日(木)  
標 本 名   Modiolus sp.
   モデォルス 
産  地  三重県津市美里町三郷 柳谷(やないたに)   
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期    一志層群  大井層   三ヶ野部層
標本写真

  
コメント 1976年(昭和51) 2月28日 採集    ウグイスガイ目 イガイ科 ヒバリガイ属

 三重県天然記念物に指定された美里町三郷(柳谷集落内)貝石山(かいせきざん)の近くにある民家の裏山の竹林中にある露頭で採取したもの。
 一志層群は大きく波瀬(はぜ)・大井・片田の3層に区分され、さらに大井層は下位の井関部層と上位の三ヶ野部層に区分されている。
 アマチュアの愛好家の間で一志の化石といえば、この三ヶ野部層(頁岩砂岩層)からの産出が大方だと思う。
イガイ科の仲間は 鰓で周囲の海水をろ過して海水中の有機物や微細藻類などを食物として摂取しているため、それと共に海水中の汚染物質を取り込み、 体内に蓄積しやすいと言われ、沿岸域海水中の汚染物質のモニタリング生物 (バイオモニタリング) として注目されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 柴田 博 1967   三重県中部の中新統一志層群
               地質学雑誌 第73巻 第7号  337-346
 あうるの森    貝殻拾い・木の実拾い・散歩で見つけた色々
               https://owlswoods.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-7e38.html




0444 掲 載 日 2021年6月17日(木)  
標 本 名   Macoma optiva (Yokoyama)
     マコマ    オプティバ
産  地  島根県松江市浜乃木8丁目(旧地名 田和) 松江市立湖南中学校 東    
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期    出雲層群   布志名層
標本写真
    

    
コメント 1980年(昭和55) 11月2日 採集    ダイオウシラトリガイ

 亜円形で中型、殻幅の膨らみは弱い二枚貝、前端は丸く、後端は細くなり 右側に反っている。殻表の成長輪脈は美しい。
M. optiva 横山又次郎が玉湯町の布志名や宍道町鏡から産出した標本より命名されたものだ。
田和では多産し、生息状況を思わせる様に、殻の反りを上方に向けて埋設されており、ほぼ全てが合弁で産出した。
 島根大学の標本資料類データベースにある M. optiva は出雲市でそろばん塾を経営されていた内田賢治氏によって菅沢産の標本を寄贈された物で、内田氏とは2001年8月12日に菅沢の産地でお会いし、その日、同氏のお宅にお邪魔し菅沢の素晴らしい標本群を拝見させていただいた経験がある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 坂之上 一  1998    出雲地方の貝化石
                島根県立三瓶自然館   坂之上一貝化石コレクション解説書
 島根大学ミュージアム 島根大学標本資料類データベース
    URL : http://museum-database.shimane-u.ac.jp/specimen/metadata/9204




0443 掲 載 日 2021年6月10日(木)  
標 本 名   Pachydiscus aff. fleuxosus Matsumoto
     パキディスカス    フレキソーサス
産  地   兵庫県南あわじ市灘黒岩海岸    
時代 地層  中生代 白亜紀後期 中期Maastrichian  和泉層群 下灘層
標本写真

コメント 1995年(平成7) 7月11日 採集

 白亜紀末期を特徴づける指標種として知られ、殻表面の装飾は目立たず、弱いS字状の肋が見られる。
下灘層ではこのほか大型の平巻きのアンモナイトとして P. subcompressus が産出している。 
ただ、 P. fleuxosus は灘黒岩から吉野にかけての海岸だけでしか採取されていない。地野や仁頃・潮崎ではまったく見ない。
灘黒岩海岸の波浪対策のため海岸に設置されたテトラポットの改修と海岸道路拡幅・防波堤工事が1990年代から灘黒岩地域の海岸で継続して行われ、古いテトラポットがより沖合に出され、過ってテトラが置かれていた場所が掘削された。
 この掘削でこれまで海岸に埋もれていた大小様々なノジュールが掘り出され我々を楽しませてくれた。
しかし、新たな防波堤が作られ、その前に新たなテトラポットが設置されたため、以前はテトラの前(沖合)に、台風時の大波によって動かされた大小の礫が大潮の干潮時には見ることができたのだが、今では残念だがその様な光景は見られない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 YASUNARI SHIGETA, TOMOHIRO NISHIMURA AND KO NIFUKU   2015
 Middle and late Maastrichtian (latest Cretaceous) ammonoids from the Akkeshi Bay area, eastern Hokkaido, northern Japan and their biostratigraphic implications
Paleontological Research, vol. 19, no. 2, pp. 107-127




0442 掲 載 日 2021年6月3日(木)  
標 本 名   Siratoria siratoriensis (Otuka)
     シラシリア    シラトリエンシス
産  地   和歌山県西牟婁郡白浜町江津良    
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  田辺層群 白浜層 
標本写真



コメント 2000年(平成12) 3月15日 採集     マルスダレガイ科   シラトリアサリ

 日本各地の中新世中期の砂岩層からごく普通に産出する。
これまでに島根県浜田の唐鐘累層、広島県の備北層群、岡山県の勝田層群、兵庫県の北但層群、滋賀県の鮎河層群などでも採取できている。
 殻頂は少し前方に片寄り、殻は横長で、殻表の成長輪肋と殻頂から放射状に微細な縦肋が広がり布目状を呈する装飾が特徴で、他の二枚貝類との区別は容易。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 和歌山県立自然博物館 所蔵化石標本データベース
    http://muse.jpaleodb.org/wakayama-p.m/?wb=ali




0441 掲 載 日 2021年5月27日(木)  
標 本 名   上図  Miosesarma japonicum Karasawa
                ミオセサルマ    ジャポニカム
  下図  Turritella s-hatai Nomura
                ツリテラ    エス ハタイ 
産  地 上図 ・下図  京都府綴喜郡宇治田原町奥山田    
時代 地層 上図 ・下図  新生代 新第三紀 中期中新世  綴喜層群 奥山田層 栢(カヤ)凝灰質泥岩層
標本写真



コメント 上図 1973年(昭和48)  5月20日 採集
下図 2016年(平成28) 10月10日 採集

 1965年に始めて化石の採集を経験してから 数年がたった1970年代、一人で車を使用しての化石採集が何とかできるようになった。産地の情報が色々の方から得られようになり、まだ近場の産地が主だがフィールドに出る機会が極端に増えてきた。
そんな中、綴喜層群は1975年までは度々訪れた産地だった。
 (下記資料の日本地科学社の清水照夫氏に厚かましくも書簡で産地の情報をお聞きしたことを思い出す。)
 綴喜層群でのこの標本、化石をやりだして初めてのカニ化石で、小さな甲羅だけの標本だが、すごい宝物を得た気持ちで嬉しくて仕方がなかった。
 化石仲間が増えるのと比例するように産地の情報が格段と増えて、いつの間にか綴喜層群からは遠のいていった。
2015年2月に奥山田の307号線のバイパス工事現場よりイルカ化石が発見されたニュースを聞き、すぐにでもバイパス工事現場を見に行きたくて機会を待っていた。 2016年になって当時人博の研究員Kさんが同行してくださることになり40年ぶりに綴喜層群に採集に入った。
工事は地層の開削が完了していて、道路用地になるところに転々と化石を含む岩石は見えるのだが、すでにきれいに整地がされ掘り起こしてまで採集作業をするのは気が引ける状況だったので、良品は得ることは出来なかった。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 京都自然研究会編 1966   京都の自然 全195頁  
                 (株) 六月社 刊行  一冊単価 280円
                    宇治田原地方の第三紀層 (168-176) 
                       分筆著者担当  荒木孝治・清水照夫




0440 掲 載 日 2021年5月20日(木)  
標 本 名   上図   Cultellus izumoensis Yokoyama
                クルテルス    イズモエンシス
  下図   Solen sp.
                ゾレン 属
産  地   上図     島根県松江市浜乃木8丁目(旧地名 田和) 松江市立湖南中学校 東
  下図     岡山県勝田郡奈義町中島東福元
時代 地層   上図     新生代 新第三紀 中期中新世 出雲層群 布志名層
  下図     新生代 新第三紀 中期中新世 勝田層群 吉野層 
標本写真



コメント 上図 1980年(昭和55) 5月3日 採集    イズモユキノアシタガイ
下図 1992年(平成4) 4月13日 採集    マテガイ

 これら二種の二枚貝は マルスダレガイ目のマテガイ科に分類されている。
Cultellus izumoensis Yokoyama は漸新世から中新世、鮮新世まで報告がある。一方 Solen sp. に関して、中新世の地層から報告されているものは、何故か属までの “sp.”の場合が多い。
 しかし、鮮新世以降更新世及び現生種には小種名が付けられ分類されている。
確かに S. sp. の殻の形態、及び装飾には大きな違いがなく、勝田層群産出の C, izumoensis が泥岩層からの産出が多く、一方S. sp. は砂岩層からの産出がほとんどであり、殻は圧密による変形が大きかったり、風化作用を受け殻表の保存は良くない。
今後もこの勝田層群のSolen sp. に関して、追加標本が増え、分類記載されることを願う。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

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0439 掲 載 日 2021年5月13日(木)  
標 本 名   Anomia sp.
    アノミア 属
産  地   兵庫県南あわじ市阿那賀水口 ・ 湊
時代 地層   中生代  白亜紀後期  マーストリヒチアン前期   和泉層群  西淡層    
標本写真




コメント 2002年(平成14) 10月20日 ほか 採集   ナミマカシワ科

 Pravitoceras sigmoidale の殻に二枚貝類のナミマカシワ科の Anomia sp. が取り付いたものをよく見る。
これらは北九州市のいのちのたび博物館の御前(みさき)研究員によって詳しく調査研究されている。(下記 : AKIHIRO MISAKI et al. 2014)
 P. sigmoidale の殻にAnomia sp. が取り付いて、成長する過程でP. sigmoidale の殻の肋を模して成長することが多く、取り付かれた P. sigmoidale の螺管が膨れ上がって見える。 またP. sigmoidale の殻をシェルターにして、殻の廻りに多くの Anomia sp. が集まって化石化している物も多く見る。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 TATSURO MATSUMOTO et al. 1981   
   NOTE ON PRAVITOCERAS SIGMOIDALE YABE : CRETACEOUS HETEROMORPH AMMONITE
   Volume 1981 Issue 123 Pages 168-178_1
 AKIHIRO MISAKI et al. 2014
   COMMENSAL ANOMIID BIVALVES ON LATECRETACEOUS HETEROMORPH AMMONITES FROMSOUTH-WEST JAPAN
   Palaeontology, Vol. 57, Part 1, pp. 77-95 




0438 掲 載 日 2021年5月6日(木)  
標 本 名   Anisomyon problematicus Nagao & Otatume
    アニソミオン      プロブレマチカス
産  地   兵庫県洲本市由良町
時代 地層   中生代  白亜紀後期  マーストリヒチアン前期   和泉層群  北阿万層    
標本写真
    


コメント 1997年(平成9) 6月22日 ほか 採集      
 
 一見して二枚貝類のイノセラムスのように見えるが、笠形の巻貝。この産地では普通に見かける。
カサガイといえば海岸の潮間帯の岩肌に取り付いて生活しているのを思い起こす。
この産地のA. problematicus の産状は 泥岩層の層理面に凸面を上に向けたり、下に向けたりして堆積姿勢は不定ではっきりしていない。
また、この大きさの殻が付着するような岩礁・岩は勿論見られず、この産地はタービダイトの地層であることから他所で生活していた個体が混濁流で転がり込んで来たとは考えられるが、ここでA. problematicus と共産する化石にInoceramus sp. がある。想像の域を出しないが、丁番部分を海底に泥に刺さるように生活していたと思われる I. sp.の大きな殻に取り付いていたのかもしれない。
 ところで、あのハドロサウルス科の恐竜 Kamuysaurus japonicus (カムイサウルス・ジャポニクス) が産出したむかわ町の函淵層からも、このA. problematicus の産出の報告があることは興味深い。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 利光誠一 加納 学 田代正之 1992 白亜紀二枚貝 Sphenoceramus schmidti (Michael) の産状と古生態
                       日本古生物学会 化石 52 ,p,1-11   




0437 掲 載 日 2021年4月29日(木)  
標 本 名   Martesia sp.
    マルテシア属
産  地   岡山県津山市高尾 皿川河床
時代 地層   新生代 新第三紀 中期中新世  勝田層群  吉野層    
標本写真

コメント 2000年(平成12) 5月21日 採集     ニオガイ科   カモメガイの仲間

 ニオガイ科の穿孔性二枚貝類で、主に岩石に穿孔して生活する Penitella sp. ペニテラ属などが知られている。
Martesia sp. マルテシア属は木材だけに穿孔して削り出した木屑を食用に摂取し、それを腸に貯蔵し、消化することができるとのこと。
 2004年に淡路島の和泉層群でハドロサウルスの仲間の右下歯骨(デジタルバッテリー)を発見した時に、まず最初に脳裏に浮かんだのが、今回紹介する沈埋木に穿孔貝が穿孔しているこの標本。“材化石部が骨” “穿孔貝部が歯冠”と気が付くには数秒の時が必要だった。気付いたと同時に興奮で膝がガクガクと震えたのを覚えている。
 2021年4月26日 この恐竜に新属新種『ヤマトサウルス・イザナギイ Yamatosaurus izanagii』と小林快次北大博教授ほかによって論文記載命名されて報道関係者に説明会が開かれました。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田島知幸 近藤康生 2003 ニオガイ科二枚貝の機能形態と穿孔基質の関係 日本古生物学会 化石 73 5-19




0436 掲 載 日 2021年4月22日(木)  
標 本 名  単子葉植物 草本類 (草・クサ)の化石?
産  地   兵庫県洲本市由良町
時代 地層   中生代 白亜紀後期  マーストリヒチアン前期 和泉層群  北阿万層    
標本写真
@人博標本

Aa

Ab
コメント @ 2004年(平成16) 5月25日 採集
A 2017年(平成29) 5月27日 採集    平行脈を持つ単子葉類 ”草”

 2004年5月2日 植物食恐竜 ハドロサウルスの仲間のデジタルバッテリー 右下歯骨他を発見 その後の二回の調査で得た標本の中に興味ある植物化石がある。
発見時にコメントを頂いた札幌医大の鈴木大輔先生の指導の中に
 『白亜紀後期、ハドロサウルス類が大繁栄したのは同時期に繁栄した固い被子植物の葉を噛み砕けるようになったため、といわれています。その様なわけであの歯骨と被子植物が共産しているのはとても面白いと思います。』

 現場では時折植物化石は見るものの保存の良いものは少なく、標本として持ち帰ることはほとんどないない。そんな中最近になって、被子植物の中の単子葉植物らしいものが見つかってきた。被子植物は、子葉が一枚の単子葉類と、子葉が二枚の双子葉類に分けられ、葉の葉脈を見て、平行葉脈なら単子葉類、網状脈なら双子葉類と分けられる。単子葉植物は、その大部分が草本(そうほん)であり、木本(もくほん)になるものが少ない。
 ”草”である草本性の植物が誕生したのは、”白亜紀後期とされている。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

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0435 掲 載 日 2021年4月15日(木)  
標 本 名  Linthia tokunagai Lambert
  リンシア      トクナガイ
産  地   鳥取県日野郡日南町多里 (旧新屋地区 通称赤岩)
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期   多里層 (備北層群相当層?)    
標本写真

コメント 1982年(昭和57) 月日不詳  採集  ブンブクチャガマ科 トクナガムカシブンブク

 多里といえば、あまりにも“フォラドミア”(Pholadomya sp.)がよく知られていて一時期 始〜漸新世の地層ではと騒がれたこともあった。大久保ほか(1980,1981)を参考に 一度だけ訪ねた。
 日野川沿いの小さな露頭での採集 備北層群でも見られる Vasticardium sp., Ennucula sp., Nassarius sp. 等が採取できた。
 掲載しているウニ化石の標本は圧砕されているが花紋は明らかで、周りの針状のものはブンブク目の特徴である体毛の様な細い棘で、このように棘の残された標本は稀である。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 大久保雅弘 編  1980  改訂 山陰 地学ハイキング  たたら書房

 大久保雅弘・赤木三郎 編 1981 山陰化石物語 たたら書房

 山名 巌  1997  鳥取県化石誌   (株) 富士書店




0434 掲 載 日 2021年4月8日(木)  
標 本 名  Hiatula aff. minoensis (Yokoyama)
  ヒァチュラ    ミノエンシス 
産  地   広島県庄原市東本町  西城川 河床
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期  備北層群 下部層     
標本写真

コメント 2016年(平成28) 8月20日 採集   キヌマトイガイ科 Hiatellidae ミノイソシジミ

 Hiatula minoensis はキヌマトイガイ科(Hiatellidae) に含まれる二枚貝類である。 この科には以下の様なGenus(属)が含まれ、Hiatella sp., Panomya sp., Panopaea sp.. Panope sp., Panopea sp., Saxicava sp.等々。
それに何故か、歯盤構造も櫛歯で殻の表面装飾も殻頂からの放射肋と成長輪脈が目立ち布目状の装飾を持つGlycimeris sp.が含まれている。(jPaleoDB)
 これには違和感があったので調べてみると、Glycymeris 属はArcoida 目(フネガイ目)のGlycymerididae タマキガイ科 の二枚貝で、このデータベースに記述しているMyoida 目(オオノガイ目)Hiatellidae キヌマトイガイ科のGlycimeris 属はスペルの“y”と“i”の違いだけでなくGlycimeris 属は存在せず、キヌマトイガイ科に含まれるものでない。
 H. minoensis の殻は中形、前後に長い卵形、ふくらみは弱い、殻頂は低く、多少前よりに位置する、殻頂から後腹隅へごく微弱な稜が走る、殻厚は薄く、殻表は平滑で、成長線のみという派手さのない装飾である。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 日本古生物標本横断データベース(jPaleoDB) http://jpaleodb.org/index.php




0433 掲 載 日 2021年4月1日(木)  
標 本 名  Temnopleurus sp.
     テムノプレウルス   
産  地   岡山県津山市大田 宮川河床 TA-46
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期      勝田層群  吉野層
標本写真





コメント 2008年(平成20) 6月8日 採集 ほか 正形ウニ ホンウニ目, サンショウウニ科(TEMNOPLEURIDAE) テムノプレウルス属
 
 
津山市の宮川は市街地の中心部の東部を、ほぼ南北に流れ、津山城のある鶴山公園の東側を過ぎて、吉井川に合流する。
 津山市大田の北の街橋の下流には基盤の粘板岩類の変成岩類と勝田層群吉野層と思える粗粒砂岩層の不整合が観察され中国高速道路の高架橋の下にある美作大学あたりでは宮川河床はシルト質の泥岩層(野介代層:田口2002)が見られる。
 北の街橋下流の粗粒砂岩層はおよそ10mほどの厚さがあり多種のモラスカ化石を含むが、そのほとんどは異地生と思われる。離弁の二枚貝、巻貝類の破片、フジツボ類、またウニ類ではサンショウウニ類の破片が散在して見られる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Taguchi   2002  Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan
Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 29, p. 95-133, 8 pls., 33 figs., tables.




0432 掲 載 日 2021年3月25日(木)  
標 本 名  Callianassa nishikawai Karasawa
   カリアナッサ      ニシカワイ    
産  地   岡山県勝田郡奈義町柿 荒神谷  (TA-8)  他 TA-35,50,17
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期      勝田層群     吉野層
標本写真
 
@
院内大池 TA-35          A植月中 TA-50

B柿 荒神谷 TA-8

C院庄 吉井川・戸島川合流地 TA-17
コメント 1983年(昭和58) 12月31日 採集 ほか  ニシカワスナモグリ

 ニシカワスナモグリはアマチュア化石研究家の広島県神石郡神石高原町油木の西川酒店 店主西川功氏(2016年3月没)に献名されたもので、1981年3月15日に同氏のご自宅に訪ね西川コレクション展示室を見学させていただいたことがあり、その後も備北層群の産地をご指導して頂き同氏が90歳を過ぎても交流を続けさせていただいていました。
 現在 同氏の展示室は、神石高原町の油木協働支援センターの分室「にしかわ」として開設され、地元の宝として地域活性化に貢献しているとのことで、たいへん素晴らしいことです。
  油木協働支援センター   https://www.yukikyoudou.com/
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 柄沢宏明  1993   西南日本の新生代十脚甲殻類 (英文)
              瑞浪市化石博物館研究報告 第20号 p.1-92 Plate 1-24
 作本達也  1999   島根県益田市の中部中新統益田層群から産出した
                Callianassa nishikawai Karasawa,1993の頭胸甲の化石
              島根大学地球資源環境学研究報告 No.18,p.91-96




0431 掲 載 日 2021年3月18日(木)  
標 本 名  Hyotissa cf. hyotis Linnaeus
   ハイオティサ      ハイオティス    リナエウス
産  地   岡山県津山市楢     (TA-42)
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期      勝田層群     吉野層
標本写真





コメント 1997年(平成9) 5月25日 採集  Gryphaeidae ベッコウガキ科  Hyotissa シャコガキ属

 クリーニングせず放置していた20年以上前の採集品。
この産地では甲殻類のCarcinoplax antiqua (ムカシエンコウガニ) を多産する吉野層の砂岩層が小規模な住宅地の造成工事によって現れて、しばらくの間採集を楽しませていただいた。
 主な産出化石としてはVepricardium okamotoi, Melongena ? sazamami, Cernina nakamurai, Chelyconus sp. Siphonalia ? fujiwarai が卓越する。これらのほか、Phacosoma nomurai, Chlamys sp., Ruditapes siratoriensis,Cyclina sp., Turbo minoensis, Euspira meisensis などを産した。これらの中で他の産地ではあまり見られないのはCernina nakamurai の幼貝が多産することや、ノジュール中に保存の良い有孔虫のOperculina sp.を産し、また 工事の転石からクジラ類の頭蓋骨の一部と思えるものも産した。
 2020年現在残念なことに、この産地は住宅こそまだ建設されていないが、長年放置されていて草木が茂り始め化石を含む砂岩層の観察できるところはほとんどない状態 尚、地面を掘り起こしての採集は禁じられている。 次に住宅が建設される場合、その基礎工事の時には是非とも現場を訪れたいものだ。
 勝田層群から確認できたカキの化石は、このシャコガキ(シャコガイではない)で、マガキ属(Crassostrea sp.)イタボガキ属(Ostrea sp.)オハグロガキ属(Saccostrea sp.)ベッコウガキ属(Pycnodonte sp.)に加えて5属となる。
 よく似た形態を持っているイタボガキ科 (Ostreidae)の仲間にトサカガキ属 (Lopha sp.)があるが 今一度これらを合わせて検討してみたい。
(参照 : 白亜紀後期の和泉層群産出のLopha sp.は 想い出の化石(7)No.0340 掲載日2019年4月11日)
備 考 引用・参考文献・Webサイト

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0430 掲 載 日 2021年3月11日(木)  
標 本 名  Barbatia okamotoi Oyama & Nishimoto
   バルバティア   オカモトイ
産  地   岡山県勝田郡奈義町柿 荒神谷    (TA-8)
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期      勝田層群     吉野層
標本写真

コメント 1995年(平成7)11月5日 採集  Arcida フネガイ目 Arcidae フネガイ科 Barbatia エガイ属

 下記の論文に新種記載されたもので、当時広島大学理学部地質学教室に在籍しておられた現島根大学学術研究院環境システム科学系准教授の瀬戸浩二先生の広島県庄原市宮田町に分布する備北層群下部層での採集品、パラタイプとして瑞浪市化石博物館に収蔵されている。(Mizunami Fossil Museum, Paleontological Database MFM_No : MFM20014 尚、この データに記載されているDiscoverer : S. KISHIMOTO とされているのは間違いで瀬戸浩二先生の採集物です)
 これは余談になりますが、同じ論文に私の採集した標本も新種記載されています。( Pythia kishimotoi  MFM20011 )   想い出の化石(2) No.0046 掲載日2013年8月15日 参照
 今回掲載の標本は勝田層群吉野層産出で、奈義ビカリアミュージアムが建設される前に鶏舎が撤退した跡地での採集物。敷地の地面に広がる砂質泥岩層の露頭に多量のVicarya yokoyamai が表出し、V. yokoyamai を求めて毎日の様にあまりにも多くのマニアが集まり、地権者から一ヶ月弱で採集禁止措置が取られた。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Oyama & Nishimoto  1988  New Fossil Mollusca Indicating Tropical Sea Elementa from the Miocene Bihoku Group, Southwest Honshu, Japan Part 1
        BULL. MIZUNAMI FOSSIL MUS., NO. 15  p. 1-6, Pl. 1, Figs. 4a,b




0429 掲 載 日 2021年3月4日(木)  
標 本 名  Fabulina sp.
   ファブリナ
産  地   岡山県勝田郡奈義町柿 荒神谷    (TA-8)
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期      勝田層群     吉野層
標本写真


 スケールバーは10mm
コメント 1995年(平成7) 11月3日ほか 採集  マルスダレガイ目 Tellinidae ニッコウガイ科 ファブリナ属

 サクラガイ(桜貝)とされるニッコウガイ科の二枚貝。殻は薄く殻頂はほぼ中央で殻長は概ね20〜23o、殻高は10o程度。殻幅の膨らみは弱いく扁平で卵形、殻表は滑らかで多くの成長輪脈が見える。
 ところで、吉良図鑑(保育社1959年の改訂版)でサクラガイはウズザクラ・カバザクラ・ハツザクラ等と共に Fabulina sp. として記載されている。 一方シノニム(英語: synonym)として Nitidotellina sp. が知られていて、最近ではネットで“サクラガイ”と検索すると Nitidotellina sp. に行き当たることが多い。
 ここに紹介したFabulina sp. は現在奈義ビカリアミュージアムがある場所で Vicarya yokoyamai と共に多産したが、ほとんどが離弁で片殻での産出で、殻は母岩と遊離しやすく、母岩から離れるとその殻の薄さから粉々に割れて標本として持ち帰るのは難しい。母岩についた状態で持ち帰ったとしても、すぐに母岩の乾燥分離を防ぐためにパラロイド等でコーティングが必要。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 吉良哲明  1959 改訂版  原色日本貝類図鑑   保育社 刊行   第60図版 Fig.7  p.157  
 Taguchi  1981  Geloina/Telescopium Bearing Molluscan Assemblages from the Katsuta Group, Okayama Prefecture -with Speciial Reference to Brackish Faunal Zonation in Miocene ofJapan
         BULL. MIZUNAMI FOSSIL MUS., NO. 8  p.7-20  Plate 2  Fig.11




0428 掲 載 日 2021年2月25日(木)  
標 本 名  Tellinella osafunei Taguchi
   テリネラ      オサフネイ
産  地   岡山県津山市新田    (TA-1)
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期      勝田層群     吉野層
標本写真





コメント 1977年(昭和52) 3月27日ほか 採集  Tellinidae ニッコウガイ科  オサフネニッコウガイ

 この標本はこの産地では普通種で多産した。当初ニッコウガイ科の Macoma sp.としていた標本で、広島大学理学部地質学鉱物学教室に当時在籍していた田口栄次氏によって瑞浪化石博物館研究報告で新種記載された。(Taguchi 1983b)
 ここで産出する二枚貝類の中で、 T.osafunei の他 Perna oyamai, Angulus okumurai など殻の薄い二枚貝類は、保存が良く合殻で産し、これら三種は貝殻の厚みが非常に薄く、殻表面の装飾も凹凸はなく滑らかで、多くの成長輪脈を見ることができる。
 化石には、その生物が生きていた当時の色についての情報は残されていないことがほとんどだが、これら三種の殻にはカラーバンドが残されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Taguchi  1983b   New Middle Miocene Mollusca from the Katsuta Group at Shinden,Tsuyama City,Okayama Prefecture, Southwest Japan Part 2  Description of Nipponarca japonica and Tellinella osafunei
Bulletin of the Mizunami Fossil Museum No.10 p.23-28




0427 掲 載 日 2021年2月18日(木)  
標 本 名 Mursia takahashii Imaizumi
  ムルシア   タカハシイ
産  地   島根県出雲市上塩冶町菅沢  斐伊川(ひいかわ)放水路
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世      出雲層群 布志名層  
標本写真



コメント 2009年(平成21) 5月9日  採集 Family Calappidae カラッパ科 タカハシキンセンモドキ

 
この種はすでに、このHPで紹介している。
   (参照  http://pravito.web.fc2.com/skcoll-photo10/skcoll-0735.htm)
 M. takahashii を初めて採集したのは1980年5月で、玉造温泉の玉湯中学校そばの植物の炭化片を挟む布志名層の最上部あるいは来待層の最下部と思われる砂岩層からの産出で、ほとんどの場合甲背(甲羅)部分だけが残されており、圧密により変形を受けているものが多かった。
 今回紹介の標本は斐伊川放水路工事の布志名層から採取したもので、玉湯中学校の産地と同様に甲羅だけの標本で、しかしその殻の保存状態は圧密による変形もほとんど見られず、甲羅の小さな顆粒まで観察でき、眼孔部も素晴らしくきれいに残されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 今泉力蔵  1959   力 二 (Mursia)の 進 化     地球科学 第45号
 KARASAWA  1993  Cenozoic Decapod Crustacea from Southwest Japan.
                Bulletin of the Mizunami Fossil Museum No.20 pp. 1-92
 安藤佑介et al.  2015  島根県に分布する中部中新統布志名層から産出した十脚類の追加標本
                 瑞浪市化石博物館研究報告  no. 41    p. 35−39,
 jPaleoDB 日本古生物標本横断データベース  Mursia 属    リンク




0426 掲 載 日 2021年2月11日(木)  
標 本 名 上図 Gaudryceras izumiense Matumoto and Morozumi
       ゴウドリセラス  イズミエンゼ
下図 Gaudryceras makarovense Shigeta and Maeda
        ゴウドリセラス  マカロベンゼ
産  地   兵庫県南あわじ市灘黒岩
時代 地層   中生代  後期白亜紀  マーストリヒチアン階   和泉層群 下灘層  
標本写真




コメント  上図 1991年(平成3) 1月12日  採集
 下図 1997年(平成8) 6月22日  採集

 これらの“Gaudryceras”は淡路島の同じ場所、灘黒岩海岸の海岸礫(転石)から採取したものです。
1991年採取の標本は大阪の和泉山脈産出の標本から新種記載された Gaudryceras izumiense に同定した。 1997年になって下図のアンモナイトを採取 G. izumiense の定期的に現れる強い肋がないが、G. sp.と思えるもので、翌年1998年7月に両角先生が拙宅に来られた時に標本を見て頂いたが、この時は具体的な分類についてのご指導はなかった。 そののちサハリンの標本でG. makarovense が新種記載され(Maeda and Shigeta et al. 2005)、これで標本名については一応解決した。 その後 Shigeta,Tanabe and Izukura  2010 , Shigeta,Nishimura and Ko 2015 等々が発表され、これらの論文の中で淡路・大阪和泉山脈・北海道函淵・厚岸・中頓別・サハリン・アラスカのマーストリヒチアンの下部〜中部のアンモナイト類について議論がなされて、淡路島の下灘層の産出のアンモナイト群集の重要性が増々分かってきた。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Matsumoto & Morozumi 1980   Late Cretaceous Ammonites from the Izumi Mountains, Southwest Japan
Bulletin of the Osaka Museum of Natural History,33,
 Morozumi 1985  Late Cretaceous (Campanian and Maastrichtian) ammonites from Awaji Island, Southwest Japan.
Bulletin of the Osaka Museum of Natural History, no. 39, p. 1-58
 Maeda and Shigeta et al. 2005   Maastrichtian Ammonoid Fauna from the Pugachevo Area, Southern Sakhalin, Russian Far East.    National Science Museum Monographs, 31: 121-136
 Shigeta,Tanabe and Izukura 2010  Gaudryceras izumiense Matsumoto and Morozumi, a Maastrichtian ammonoid from Hokkaido and Alaska and its biostratigraphic implications. Paleontological Research, vol. 14, no. 3, pp. 202-211
 Shigeta,Nishimura and Ko 2015  Middle and late Maastrichtian (latest Cretaceous) ammonoids from the Akkeshi Bay area, eastern Hokkaido, northern Japan and their biostratigraphic implications. Paleontological Research, vol. 19, no. 2, pp. 107-127




0425 掲 載 日 2021年2月4日(木)  
標 本 名   硯石層の石灰岩角礫岩
産  地   岡山県高梁市成羽町羽山
時代 地層   中生代   前期白亜紀      関門層群相当層?  硯石層
標本写真



コメント 1973年(昭和48) 1月T日  採集

 当時 24歳 正月休み ライトバンに毛布と10sプロパンボンベと一口ガスコンロ (カセットコンロなどない時代) 鍋・ヤカンそれに少々の食糧を積み込んでの1人巡検です。
 成羽町の枝の不整合露頭を見学ののち、島木川沿いを上流に見学コースをとった。 景色はすぐに道路下には急浸な深い渓谷が見え 道路サイドは石灰岩の壁がそそり立っていた。誰もいない冬場のこの時期に見るには悲壮感を感じる光景でした。
 河床に降りる所があり 写真の亜角礫の石灰岩を含む 基質の赤や緑の泥岩に白い石灰岩が浮き上がっている礫岩。掲載写真のハンマー側には見えていませんが3p程度の厚さで赤色の砂岩の層が貼りついている。
 下の写真は 泥岩層に密集して見られる微小二枚貝?と思えるもの。 これもこの河床から拾ってきたもので成羽層群に起因するものかも分かりませんが、130×80〜50ミリまた厚さは30ミリ前後の小さな転石で両面にギッシリと3ミリ前後のものがみえ、その形状は潰されているのか形はそろっていない。未だに植物か軟体動物の仲間なのか特定できていない。
 元旦の夜は小雨降る中 道端で駐車し何とか車の暖房も一時的に使いながら少しは睡眠がとれた。夜が明けると車の廻りは水浸しで氷まで張っていた。 あくる日は地頭方面を見学する予定。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 横田修一郎 et al. 1998  成羽層群とそれを覆う石灰岩体の構造関係
                     島根大学地球資源環境学研究報告 17,  p. 31-47
 平松英志 1969  成羽の化石  研究シリーズ第一輯   成羽町公民館 成羽地学同好会

 光野千春 et al. 1982  岡山の地学     発行所 山陽新聞社




0424 掲 載 日 2021年1月28日(木)  
標 本 名  Globularia izumiensis Kase
   グロブラリア    イズミエンシス
   
産  地   兵庫県洲本市由良町
時代 地層   中生代    白亜紀後期   マストリヒチアン      和泉層群  北阿万層
標本写真



コメント 1992年(平成4) 6月10日ほか 採集  Family Naticidae タマガイ科 

 Kase 1990 で新種記載されたタマガイ科の巻貝。 中型で螺搭は高くなく、少なくとも螺層の数は5層見られる。.螺層の縫合部は深まらず線状で、また殻表はなめらかで、多くの細い成長線がある。内唇には縦長の臍がある。
大阪では畦の谷泥岩層からの産出が知られている。 淡路島からは長田の西淡層、ことに由良の北阿万層からの産出が目立つ。また、下灘層からも小型の Globularia sp.と思えるものも産する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

Kase, T. 1990.  Late Cretaceous gastropods from the Izumi group of southwest Japan.
             Journal of Paleontology. 64, 563-578.




0423 掲 載 日 2021年1月21日(木)  
標 本 名  Pseudoperissitys bicarinata Nagao & Otatume
   シュードペリシチス          ビカリナータ
産  地   兵庫県洲本市由良町
時代 地層   中生代    白亜紀後期   マストリヒチアン      和泉層群  北阿万層
標本写真





スケールは全て 10 o

コメント 2013年(平成25) 11月13日  採集

 大阪の和泉層群の標本は想い出の化石 (4)の2015年9月3日に掲載させて頂いていますが 淡路島の北阿万層からも不完全なものが5個体、産出している。
 P. bicarinata は 三笠市の上部蝦夷層群から報告があり、また、むかわ町穂別の函淵層等からも産出し、函淵層ではInoceramuss sihikotanensis ゾーンで見られるととのことで この由良の産地でも同様に I. sihikotanensis の産出があることは興味深い。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Kase, T. 1990.  Late Cretaceous gastropods from the Izumi group of southwest Japan.
             Journal of Paleontology. 64, 563-578.




0422 掲 載 日 2021年1月14日(木)  
標 本 名  Nipponaphera taguchii Oyama, Hirose et Nishimoto
   ニッポンアフェラ       タグチィ
産  地   岡山県津山市新田
時代 地層   新生代 中期中新世  勝田層群 吉野層
標本写真
  
スケールは10o
コメント 1977年(昭和52年) 8月 採集        Cancellariidae オリイレボラ科

 Nipponaphera taguchii の小種名は岡山県新見市の在野の研究者田口栄次氏に献名されたものですが、1980年代に3度拙宅へ西本博行(1934-2004)先生が来られた時に、備北層群・勝田層群のMolluscaモラスカ化石の研究して頂くために数点の標本を託した。
それらにこの標本が含まれていて、最近になって瑞浪化石博物館古生物学データベースに私の提供した標本が Paratype 標本として紹介されているに気が付いた。
 というのも記載論文の別刷りが入手できていなくて、情報がなく長年そのままにしていた。
最近になってネットで検索を掛けて 何とか1995年の比婆科学に掲載されているらしいことを知ったが論文名もわからず未だにその記載を見ていない。 ここに掲載した標本はParatype とは別の個体
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 糸魚川淳二  2004  西本博行さんの思い出
               瑞浪市化石博物館研究報告第31号 p.99-100
                  「付」 西本博行氏(1934年〜2004) : 略歴と研究業績一覧




0421 掲 載 日 2021年1月7日(木)  
標 本 名  @,A,C Biplica osakensis Kase
             ビプリカ     オオサカエンシス
 B,D  Biplica sphaerica Kase
             ビプリカ     スパーリカ
産  地  兵庫県洲本市由良町 
時代 地層  中生代 後期白亜紀   マーストリヒチアン  和泉層群 北阿万層
標本写真



コメント 1998年(平成10) 6月28日ほか  採集    マメウラシマ科

 カルフォルニアのサントニアン(85.8〜84.9Ma)の白亜紀層から産出した Biplica heteroplicata Popenoe を対比標本として研究され
大阪府の和泉山脈の和泉層群信達層(下部層)産出のものをタイプ標本として B. osakensis として新種記載された。(KASE 1990)
 この巻貝はRingiculidae マメウラシマ科に属し 小型種で殻高 5〜7o でほぼ球状の形状、殻頂は高まらず螺塔は低く縫合も浅い、殻表には多くの浅くて細かな 25〜30本の螺肋が見られる。殻口の内唇は滑らかで、外唇は厚く反りかえる。
 KASE 1990では B. sphaerica も大阪和泉層群産出標本から新種記載されており、B. osakensis に比べ殻径はやや大きく殻表の装飾の螺肋の数も20本前後と少し粗い、
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 KASE & MAEDA 1980 千葉県銚子地方の前期白亜紀腹足類 (英文)
                  日本古生物学會報告・紀事 新編 1980(118), 291-324
 KASE 1984  Early Cretaceous marine and brackish-water Gastropoda from Japan
              . National Science Museum, Tokyo  pp. 1-263, pls. 1-31
 KASE 1990  Late Cretaceous Gastropods From The Izumi Group Of Southwest Japan
              Journal of Paleontology, V,64, No. 4




0420 掲 載 日 2020年12月31日(木)  
標 本 名   Tetraseptata   
    テトラセプタタ 目
  四放サンゴ (単体サンゴ) 類の仲間
産  地  高知県高岡郡越知町横倉山
時代 地層  古生代  シルル紀中期   横倉山層群  G2層
標本写真



コメント 1982年(昭和57) 8月7日 頂き物   四放サンゴ(四射サンゴ) の仲間の単体サンゴ

 四放サンゴは古生代のオルドビス紀初頭から出現し、シルル紀、デボン紀にもっとも繁栄し、ペルム紀(二畳紀)の終わりに絶滅。単体のものと群体のものがあり,円筒状の殻の内側にある隔壁が 4または 4の倍数になっているのでこの名がある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 浅野 清  編 1973  新版 古生物学 T朝倉書店 発行  5 腔腸動物 p164-272




0419 掲 載 日 2020年12月24日(木)  
標 本 名   Plicatula sp.
  プリカテュラ
産  地  和歌山県有田郡湯浅町栖原 矢田池南
時代 地層  中生代  白亜紀前期 (約1億3000万年前)   有田層 
標本写真

コメント 1978年(昭和53) 2月11日 採集 ウグイスガイ目 イタヤガイ超科 ネズミノテガイ科 ネズミノテガイ

 これを採集した当時 この露頭は有田層(砂質泥岩層)の風化したものをミカン畑の用土として採取していた。現場では風化が進み赤茶けて割りやすくなった石からアンモナイトのシャスティクリオセラスやクリオセラティテスまたアナハムリナ等を狙って採集する中に殻が溶けた放射状肋がめだつネズミノテガイ属の一種が時たま産出する。
 殻の外形は縦長の卵形で前後対象な小耳を持つらしいがこの標本では不明瞭。また、殻内側の丸い大きな肉柱(貝柱)痕がある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田代正之 1992  「化石図鑑」 日本の中生代白亜紀二枚貝 自費出版(全307頁)




0418 掲 載 日 2020年12月17日(木)  
標 本 名  Isurus hastalis (Agassiz)   イスルス ハスタリス
 左下標本 Isurus cf. planus (Agassiz) イスルス プラヌス
  
産  地  石川県羽咋郡志賀町笹波 関野鼻 
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   関野鼻石灰質砂岩層  
標本写真



コメント 1986年(昭和61) 8月13日 採集    アオザメの歯

 近隣のヤセの断崖と共に能登半島の西海岸能登金剛の観光名所として知られ、カルスト地形 ドリーネの見られる関野鼻では1964年に関野鼻パークハウスが開業されて多くの観光客が訪れていた。
 今は亡き石友と二人で初めて能登半島巡検での採集標本のサメの歯、当時 観光遊歩道脇の露頭表面にムカシチサラガイやトウベイヤチイトカケガイ等と共に表出していた。
 2007年3月25日の能登半島地震で景勝地の崖は大きく崩れ、パークハウスの建物も大きな損傷を受け使用不能となり、遊歩道と共に一時立ち入りを制限されていた。2012年ころから遊歩道は少しづつ整備されてきて有料駐車場のみの営業が再開され、磯釣りを目的とする方達が少し戻ってきたようだ。 この地震でこの海岸は隆起があり、この波蝕台の礫層・砂岩層にサメの歯化石が多く含まれていることが知られ、サメの歯化石の一大産地として多くのマニアが訪れた。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 松浦信臣  2009    新版『石川の化石』   北國新聞社刊




0417 掲 載 日 2020年12月10日(木)  
標 本 名  Hypophylloceras (Neophylloceras) hetonaiense Matsumoto
  ハイポフィロセラス  (ネオフィロセラス)  ヘトナイエンゼ  マツモト
産  地   兵庫県 洲本市 由良町
時代 地層   中生代   白亜紀後期  前期マストリヒチアン  和泉層群 北阿万層
標本写真


コメント 2010年(平成22)2月14日採集   フィロセラス科 ハイポフィロセラス属  ネオフィロセラス亜属

 淡路島の和泉層群では、産出数は多くなく これまで西淡層と北阿万層それに下灘層で産出が知られ ことに下灘層の山間部の産地の払川では Inoceramus awajiensis  の密集したノジュール中にかなり潰された状態で発見され、また海岸部の地野・黒岩の下灘層では稀に10〜20p程の大型の Hypophylloceras sp.をノジュール中に産出する。
 北阿万層では 洲本市南部の砂質泥岩層のノジュール中に含まれ長径2〜3pの概して保存の良いものを見る。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 重田康成 et al. 2017  An early Maastrichtian (latest Cretaceous) ammonoid fauna from the Soya Hill area, Hokkaido, northern Japan (英文)
     むかわ町穂別博物館研究報告第 32 号, p.7−41.
 両角芳郎  1985  Late Cretaceous (Campanian and Maastrichtian)ammonites from Awaji Island,Southwest Japan (英文)
     大阪市立自然科学博物館研究報告, 第39巻 p.1-58 pls.1-18




0416 掲 載 日 2020年12月3日(木)  
標 本 名  Heterocentrotus mammillatus (Linnaeus)
  ヘテロセンタローテゥス     マミラテゥス       (リンネ)
産  地   沖縄県八重山郡竹富町波照間島
時代 地層   現生
標本写真





出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コメント 1970年(昭和45)頃 友人採収品の頂き物 カマロドント目 ナガウニ科 Echinometridae  パイプウニ属 Heterocentrotus

 太い大きな棘を持つことからキダリス目に属していると思いきや カマロドント目に分類されている。パイプのような太く長い棘をもつ。棘の先端部は尖らずに平たい形状、 棘の先端部近くに淡色の帯がいくつかある。棘疣(とげいぼ)の丸く盛り上がった乳頭部頂には、キダリス目に見られる穴は存在せず滑らかである。
 夜行性で昼間は隠れ 強靭な太い棘を岩の隙間に押し広げ外敵からの攻撃をかわしている。そのため生体標本を採取するのは困難である。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 
  田中 颯 et al.  2019  ウニハンドブック   株式会社 文一総合出版




0415 掲 載 日 2020年11月26日(木)  
標 本 名  Tateiwaia tateiwai (Makiyama)
   タテイワイア     タテイワイ     (マキヤマ)
産  地   岡山県津山市新田(にっだ)    (TA-21)
時代 地層  新生代 新第三紀  中期中新世   勝田層群 吉野層
標本写真





コメント 1993年(平成5) 5月26日ほか 採集  ウミニナ科 タテイワイア属 タテイワウミニナ

 この産地は 新田(にっだ)のかって大崎瓦製造工場があった場所から、ほぼ北に1qの位置し、現在、岡山第一発電所(ソーラ発電所)のソーラパネルが並んでいる。
当初 この場所は鶏舎設営を目的に造成されていたようで、南北約300m東西150m程の面積が南下がりのスロープ状に開発され、東側の切端は白亜紀後期のディサイトがあらわれていた、また造成地の中ほどから西側は勝田層群の砂質泥岩が、それらの火成岩を覆っていた。
 この工事が行われているのを知ったのは中国自動車道を走行中 山肌が削られているが見えて、急きょ現地を確認。 
すでに現場は粗造成が終わり一時造成工事用の重機も引き上げられた状態で、削り取られた勝田層群の砂質泥岩層の上にはビカリアを主とする貝化石が白く浮き上がって大量にコロコロと転がっていた。
レジ袋にポイポイと化石を放り込みながら拾い、5分程度で一杯になったレジ袋をその場に置き、次のレジ袋を広げて同様に貝拾いを一時間程度楽しんだ。あちこちに置いたレジ袋を回収して、短時間で数百本のビカリアを得るというかってない経験をさせて頂いた。ただ、個々のビカリアは工事による破損が大きく良い標本になるものは少なく、そのほとんどをイベントの度に後進の方々にあげ、今は20本程度しか手元にない。
 三枚目の写真は 東京大学総合研究博物館収蔵標本のT. tateiwai  
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 東京大学総合研究博物館   収蔵資料 データベース 標本探索

 Makiyama, J., 1959  Matajiro Yokoyama's Tertiary fossils from various localities in Japan. Part 3.
         Palaeontological Society of Japan, Special Papers, no. 5, pp. 1-4, pls. 58-86.




0414 掲 載 日 2020年11月19日(木) 
標 本 名  Ostrea sunakozakaensis (Ogasawara)
 オストレア    スナコザカエンシス          (オガサワラ)
産  地  兵庫県美方郡香美町村岡区口大谷
時代 地層  新生代 新第三紀  中期中新世   北但層群 村岡層
標本写真



コメント 1977年(昭和52) 10月23日  採集 イタボガキ属 スナコザカガキ   

 化石を求めて、北但層群のフィールドを先人の研究者の文献を頼りで、何とか一人歩き出来るようになったころ、
1979年(昭和54)8月28〜29日 一泊二日 (湯村温泉泊)
高校の恩師に同行して兵庫地学会(公立の中・高の理科の先生方の研究会)の巡検に参加させて頂いた。勿論、会員でもない一般人の参加は私だけ、当時大阪市立大学の助教授 弘原海 清先生(1932-2011)のご指導でした(赤矢印)。
弘原海先生は高校の恩師と同郷の豊岡市のご出身で、郷里但馬の地質のご研究に力を注がれておられ、当日は下記資料にあげた日本地質学会年会の地質見学の1日目・2日目と同じコースをめぐる盛り沢山の巡検だった。
化石こそ採取できませんでしたが、北但層群の地層・地質構造、またそれらを覆い、貫入する火山岩類、また変成岩類の露頭を前に素晴らしい解説をされ、私にとって初めて耳にする用語・事象等々、当時の私にとっては心ときめかせるものでした。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 池辺展生・弘原海清・松本隆, 1965: 北但馬・奥丹後地域の新第三系火山層序.
                     日本地質学会第72年年会地質見学案内書但馬丹後地域
 Takashi Matsubara  2011   兵庫県但馬地域の北坦層群産中新世浅海軟体動物(英文)
                     瑞浪市化石博物館研究報告第37号 p.31-113  




0413 掲 載 日 2020年11月12日(木)
標 本 名  Zeuxis minoensis Itoigawa
 ゼアキシス   ミノエンシス      イトイガワ
産  地  岡山県津山市新田     (TA-1)
時代 地層  新生代 新第三紀  中期中新世   勝田層群 吉野層
標本写真





コメント 1977年(昭和52) 3月27日ほか 採集 ムシロガイ科 ゼアキシス属 ミノ ハナムシロガイ

 40年以上前の話ですが、鳥取県立博物館の山名巌先生から紹介いただき、鳥取大学の赤木三郎先生指導のもと山陰地団研(鳥取支部)の勝田層群の巡検に参加させていただいた。
 この日の私にとって最もインパクトのあった新田(にっだ)の化石産状は暗灰色の砂質泥岩層の表面に貝化石が白く浮き上がって地層から、それぞれ遊離した状態で見られ、まるで海岸での貝拾い状況だった。この微小な巻貝はムシロガイ科に属し 干潟や砂浜に潮間帯または潮間帯で生息し、ほとんどのナサリウス属は非常に活発なScavengerスカベンジャーであり、死んだ魚や、カニ等の腐肉を餌としている。
その後何度もこの産地では素晴らしい体験をさせて頂いた想い出多い産地だ。
 下記文献の糸魚川等の記載によると
Z. minoensis Itoigawa   Nassarius (Z.) minoensis Itoigawa 1960 ナサリウス (ゼアキシス) ミノエンシス イトイガワ
 殻は小、長卵形、重厚である。螺塔は塔型、殻口より少し大きい、胎殻は3で平滑で球状、後の螺層は6で膨れるれ、螺溝は4で、細く、縦肋の上にも刻まれ、溝の間は巾広い、縦肋は強く、少し傾き、次体層で13〜15、肋間より少し広い、体層はふくれ、10〜12の螺溝を持つ、縫帯には5つの螺溝を持つ、殻口は卵形で、反転する水管を伴う。内唇は平滑、外唇はきざまれる 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 糸魚川淳二・柴田博・西本博行 1974   瑞浪層群の貝化石  (p.164  図版 50 図 4・5) 
  瑞浪市化石博物館報告 瑞浪の地層と化石 第1号 開館記念号 p.43-204  図版 1-63




0412 掲 載 日 2020年11月5日(木)
標 本 名  Solenoceras cf. texanum Shumard
   ゾレノセラス          テキサヌーム    シューマード
産  地  1〜12 兵庫県洲本市由良町
 13,    兵庫県南あわじ市湊 (旧西淡町湊)
 14.    兵庫県南あわじ市阿那賀 (旧西淡町木場奥)
 15.   兵庫県洲本市千草
時代 地層  中生代 後期白亜紀 カンパニアン 〜 マーストリヒチアン 和泉層群 西淡層 ・ 北阿万層
標本写真











コメント 2002年(平成14) 8月14日 ほか採集  ディプロモセラス亜目 ポリプチコセラス亜科 ゾレノセラス属

 淡路島の和泉層群からは 洲本市近郊の北阿万層のNostoceras hetonaiense に伴って産出する。また、西淡層のPravitoceras ゾーンからも産出が知られているヘアーピン状の小型のアンモナイト。
多くの標本は住房部の殻口は残されているが気房部は殻口と並ぶところで破損しそれより先の成長はじめの形態が分らないものが殆どである。 数少ないが殻口側に細い螺管が緩やかに反り返っている様に延びた個体も見られるが、それもまた途中で破断している。 螺管の殻表にある肋は鋭く稜をなし背側(軟体部の形態では腹部側)にはそれぞれの肋上に2列の顆粒(いぼ)が見られる。
 下記の文献に紹介されている Spiroxybeloceras sp. (スピロキシベロセラス属)の様な平面的に巻きこむ初房が存在しているのか興味を引く。 
 まずはS. texanum の記載はShumard によって1861年になされたようだが原記載論文を見てみたいものだ。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 W. JAMES KENNEDY et al.  2000  Heteromorph ammonites from the middle Campanian Baculites scotti Zone in the U.S. Western Interior   Acta Geologica Polonica, Vol. 50 No. 2, pp. 223-241




0411 掲 載 日 2020年10月29日(木)
標 本 名  Vicarya yokoyamai Takeyama に取り付いた Balanus sp.
産  地  1 a,b  岡山県新見市大佐田治部 戸谷
 2 a,b  岡山県津山市高尾  皿川河床
時代 地層  1 a,b  新生代 新第三紀 中新世中期    備北層群 下部砂岩層
 2 a,b 新生代 新第三紀 中新世中期    勝田層群 吉野層
標本写真

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コメント 1.1980年(昭和55)3月3日 2.2020年(令和2) 6月20日 採集 バラヌス属の一種

 フジツボはカニやエビと同じ甲殻類でありながら 自身では移動手段を持たず 他物に付着して生活している。
磯の岩場にいるものや、海底の岩や沈埋木に付いているのをみかける。 これまで新生代第三紀層の芦屋層群のツリテラ、備北・勝田層群のビカリア、八尾層群の沈埋木等々に沢山のフジツボが密集して取付いているのを見てきた。
 広い海底で何故小さな巻貝や木片に密集しているのか不思議だ。
他の甲殻類同様に孵化したばかりは、ノープリウスとかキプルスという幼生で、
プランクトンとして浮遊性の生活を経て他物に固着して成体の殻を持った形に変態していく。フジツボの生殖活動は、カニやエビとは違い、雌雄同体で隣にいる個体に交接器を伸ばせば そこにいる個体は異性という環境で、それでは浮遊生活の幼生期に何故親のいるそばに着床するのか不思議だ。 これは 成体(親)の分泌する物質に起因されていると考えられている。 こうして繁殖に有利な生活が過密と思える群集を作っていく。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 福田芳生 1977  フジツボの化石はどのようにして調べればよいか
             地学団体研究会 地学教育と科学運動  6 巻  p.107-120

 佐藤武宏 2005  磯の付着生物に見られる生き残るための工夫
             神奈川県立生命の星・地球博物館 自然科学のとびら  Vol.11, No.2

 山口 寿之, 久恒 義之  2006  フジツボ類の分類および鑑定の手引き
                     日本付着生物学会 Sessile Organisms 23 巻 1 号 p.1-15 




0410 掲 載 日 2020年10月22日(木)
標 本 名  骨化石か?
産  地  兵庫県南あわじ市灘地野海岸
時代 地層  中生代 後期白亜紀 マーストリヒチアン階  和泉層群 下灘層       
標本写真


 




コメント 2014年(平成26) 6月15日 採集   現認者 (NK氏・KM氏の2名)

 海岸の砂岩の転石に骨と思える断面が発見された。 骨は岩の割面に見え、岩が割れたときに悲しいかな骨も縦断され、その破断面が見えている状態で保存も悪く風化が進んで白くなり、現場から持ち帰られる大きさに岩を小さくするにも注意が必要な状態だった。 何とか骨を含んだ石(母岩)を持ち帰ったが、骨を剖出するには、骨が見えている面からではなく、反対側から掘り出す必要がある。
そこで、デスクグラインダーを使い 母岩をできるだけ小さく切断し セメントを木工ボンドで練り合わせたものを型枠に1cm程度流し込んで骨の見えている面を下にして置き、母岩の廻りにも剖出時の振動に耐える様にセメントと木工ボンドを練り合わせたもので囲い込み、その後 乾燥を待ち母岩への掘り込みを始める。 やはり骨は思っていた通り相当脆く少しの振動でクラックが入る。
アロンアルフアとパラロイドを浸透させながらなんとか形状を確認できるまでになった。
 海棲爬虫類の仲間の肋骨の一部か?
備 考




0409 掲 載 日 2020年10月15日(木)
標 本 名  Menilite;Opal   こぶり石
   メニライト    オパール
産  地  石川県珠洲市正院町平床
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世 能登層群南志見(なじみ)層 飯塚珪藻土層 (1400万年前)       
標本写真

コメント 1986年(昭和61) 8月15日 採集 子ぶり石 仏石 菩薩石 オパール 珪乳石 

 化石ではありませんが、平床層の貝化石を採集時に近くの珪藻土の露頭で始めてみる変な形状をした“ノジュール?”が多く表出していたので、当時 それが何かわからないまま少し採取して持ち帰っていた。

下記 HPの説明をそのまま引用させて頂くと・・・・
 奇石・珍石−その3【子ぶり石】
この何とも不思議な形をしたものが“オパール”だと言ったら信じられるだろうか。
『珪乳石(けいにゅうせき)』と呼ばれるもので、不純物を多量に含有するオパールである。
地層中の珪藻化石から供給された珪酸が形成した“ノジュール nodule”で、石川県能登の珠洲市の本村に産する。新生代第三紀中新世の海底堆積物である『珪藻土』の中で、その時代以降に形成されたと考えられている。土地では『子ぶり石』と呼ばれるが『仏石』とも呼ばれる。
 この珍石は江戸時代の『雲根志』にも“仏石”とか『菩薩石』の名で記載されている。柔らかな珪藻土の中に過飽和な珪酸の部分が生じ、その部分に周囲の珪藻化石から供給された珪酸が付着することにより、この不可思議な形の塊りを形成した。その際の生成の温度が低かったのでオパール状態の珪酸の“ノジュール”となったわけである。しかしそれらには同じ形態のものが2つと無いと言われ、仏像や人形(ひとがた)のもの、動物の形をしたもの、子供をおぶったように見えるものなど実に不思議なものが多い。

 また、小ぶり石と共に直径は5mm〜50mm,長さ10cmを超える大小さまざまな珪質の棲管状コンクリーションを伴う、これを地元では鉄砲石と呼んでいる
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 
 日本彩珠宝石研究所 HP
   https://www.saijuhouseki.com/publics/index/23/detail=1/b_id=134/r_id=110/

 赤羽久忠・大森昌衛 et. 2000 能登半島北端の新生界から産出する特異な形態の珪質コンクリーション
                      地質学雑誌 Vol.106,No.9

 柳沢幸夫 1999  能登半島珠洲地域の中新統の珪藻化石層序
             地質調査所月報,第50巻第3号,p.167−213




0408 掲 載 日 2020年10月8日(木)
標 本 名  Macrouridae gen. et sp. indet.(Otolith)
   マクロユリディ         属種不明の一種           (耳石)
産  地  高知県室戸市羽根町登(のぼり)  (羽根産業社ポラゾン採掘場)
時代 地層  新生代 新第三紀鮮新世   唐の浜層群 登層 
標本写真

コメント 1982年(昭和57) 8月7日 採集   ソコダラ科の属種不明の一種 の耳石

 この年初めて唐の浜層群(甲藤1980・甲藤・増田, 1993 岩井 et.2006)の巡検に参加した。そこで初めて魚の“耳石(じせき)”というものを採取した。現場は室戸岬近い北西方の登にある、羽根産業社のポラゾン採掘場で灰白色シルト層ないし砂質シルト層から貝化石や耳石・珊瑚などを産する。 ことに耳石は地層から雨水等の作用で表出している物を拾い上げるハンマーいらずの採集法だった。
 硬骨魚類の耳石は小粒な平板状の石灰質の塊で聴覚と平衡感覚に関わっているとされ三半規管の硬組織の一部で、形は円形,楕円形,三角形,四角形不定形等多様なものがある。 このような耳石は内耳の小嚢,壷嚢と通嚢の3嚢の内壁からの分泌物によって形成される3個の炭酸カルシウム主体の結晶であり,内耳は頭蓋骨の耳核内に左右一対あるので,魚類一尾の耳石数は合計6個となる。(飯塚 et.2008)
 また ソコダラ科は、世界中の水深100m 前後の大陸棚から水深6000m を超える大洋底や海溝域まで広く分布する深海底棲性の分類群と云われている。 尖った吻端、下顎先端にあるヒゲ、背鰭が2基(第2背鰭は短く見にくい)、ひも状に伸長する尾部、尾鰭がないなどの特徴をもつ。 それに、ほとんどの種が腹部に発光器を持っている。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 岩井雅夫・近藤康生
 菊池直樹・小田太良 2006  鮮新統唐の浜層群の層序と化石
                      地質学雑誌 第112巻 補遺. 27−40

 飯塚景記・片山知史 2008  日本産硬骨魚類の耳石の外部形態に関する研究
                      水研センター研報,第25号,1−222,

 大江文雄  2011  唐ノ浜層群登層に見られるソコダラ科ノボリダンゴヒゲ(新和名)の耳石とその時空分布
                 日本古生物学会例会(第160回) 講演予稿集 p37




0407 掲 載 日 2020年10月1日(木)
標 本 名  Mizuhobaris izumoensis (Yokoyama)
  ミズホバアリス      イズモエンシス       (ヨコヤマ)
産  地  島根県出雲市上塩冶町管沢  斐伊川放水路
時代 地層  新生代 新第三紀中新世中期 出雲層群 大森層 布志名層
標本写真


     
コメント 2006年(平成18) 8月14日 ほか採集 頭足類 アオイガイ科, ミズホバリス属  ミズホタコブネ

 斐伊川放水路工事中の露頭での採集物。 40年程前に瑞浪の研究報告(第6号)を読んでからワクワクしながら巡検に行けるチャンスを待っていた。1980年に初めて1人で末広(1979)を手にして布志名層を訪ねた この時、他の貝類やクジラの骨の断片と共に、宍道町の国道9号線沿いの鏡の大露頭等でミズホタコブネと思える断片を採取していた。その後狙っていたタコブネ、25年もたって、何とかこの菅沢で大森層からのものも含め保存の良いものを数個体を見ることができた。
最近でも M. izumoensis は布志名層からは産出の報告はある(松浦康隆 et at.2013)。今後も布志名層の分布地域で大規模な開発工事かあれば、他の軟体動物類と伴って産出はあるものと思う。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 安藤佑介 et al,  2015  島根県に分布する中部中新統布志名層から産出した十脚類の追加標本
                瑞浪市化石博物館研究報告 第41号 35−39
 松浦康隆 et al.  2013  島根県中部中新統布志名層下部から産出したタコブネ類化石と共産する微化石群集
                地質学雑誌 第119巻 第4号 312−320
 坂之上 一 1998    出雲地方の貝化石   刊行 島根県県立三瓶自然館

 大久保雅弘編 1980  改訂山陰地学ハイキング  たたら書房刊  90-97

 末広匡基 1979     島根県布志名層産中新世貝化石群 
                瑞浪化石博物館研究報告  第6号  65-100





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週に一度 想い出の化石として標本を紹介していきます。


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