い出の化石(10)

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週に一度 想い出の化石として標本を紹介していきます。


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0511 掲 載 日 2022年 9月29日(木)  
標 本 名  Ostrea itoigawai Taguchi
  オストレア  イトイガワイ
産  地  岡山県津山市新田
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期  勝田層群  吉野層
標本写真
 

 

 
コメント 1977年(昭和52) 5月 2日 ほか採集    イタボガキ科 イタボガキ属

 掲載標本は 3 個体とも合殻標本で、それぞれ左右殻を示す。
カキ殻の外形は、それぞれの個体変異がはなはだしく、分類を困難にしている。
 Ostrea itoigawai は右殻が平らで表面が薄い板状になっており、同心円状の成長輪肋がある。
左殻は右殻より大きく、他の二枚貝のように二枚の殻が対称的でなく殻の腹縁部はかみ合わない。
左殻の殻頂部は他物に付着するために、殻の形状は変形がはなはだしい。
殻は、深く膨らみを持ち、殻表には殻頂から肋断面が丸みを持った稜をもつ放射肋が25から40近くあり、それはよく目立つ。腹縁部は放射肋がそのまま波状で殻は薄い。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Eiji TAGUCHI  1992
   Five New Species of Fossil Mollusca from the Miocene Katsuta
   Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan
   貝類雑誌 VENUS (Japanese Journal of Malacology)
   VoL 5t, No, 3 163-174




0510 掲 載 日 2022年 9月22日(木)  
標 本 名  Copepteryx sp.
  コペプテリクス 属
産  地  山口県下関市彦島西山町2丁目
時代 地層  新生代 古第三紀 漸新世中期  芦屋層群山鹿層
標本写真





コメント 1983年(昭和58) 4月28日 採集    ペンギンモドキ  (Plotopteridaeプロトプテルム科)
 
 地図にも史跡 “彦島西山の化石層” として紹介されている。Glycymeris cisshuensis 等を主とした貝類化石が多量に密集して見られる産地で、これらの層準で産出した。
 Plotopteridae プロトプテルム科はウ科やカツオドリ科に近縁な絶滅した海鳥で、翼がヒレ状に進化している。 
最近の研究では、前肢推進性のペンギンと形態が類似する点が特徴みられたり、脳の形態や前肢などの骨格形態からペンギンとの近縁性も指摘されている。 (ウィキペディア等より抜粋)
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 大橋智之・長谷川善和  2021
    北部九州に分布する芦屋層群(新生代漸新世)から産出したプロトプテルム科鳥類の新種
    日本古生物学会 化石 109  33頁
 Hirotsugu Mori and Kazunori Miyata  2021
    Early Plotopteridae specimens (Aves) from the Itanoura and Kakinoura Formations(latest Eocene to early Oligocene), Saikai, Nagasaki Prefecture, western Japan
    Paleontological Research Vol.25 No.2 145-159




0509 掲 載 日 2022年 9月15日(木)  
標 本 名  1. Angyomphalus aff. hashimotoi Shikama et Nishida
     アンギオンファルス    ハシモトイ
 2. Angyomphalus aff. okafujii Shikama et Nishida
     アンギオンファルス     オカフジイ
産  地  新潟県糸魚川市青海
時代 地層  古生代    ペルム紀〜石炭紀中期    青海石灰岩層群
標本写真


スケールバーは10mmを示す
コメント 1987年(昭和62) 10月10日 採集   オキナエビス亜目 ラフィストマ科 

 西南日本内帯における区分名の一つ「秋吉帯」は、おもに古生代石炭紀からペルム紀の付加堆積物が見られる。
これらは玄武岩質火山岩類、石灰岩、チャートなどのブロック(岩塊)を含むメランジュ、砂岩、泥岩などの砕屑物からなる。石灰岩体としては、糸魚川の青海石灰岩、岡山県の阿哲石灰岩、広島県の帝釈石灰岩、山口県秋吉台の秋吉石灰岩、福岡県平尾台の石灰岩などが代表的な分布地として知られ、青海石灰岩層群からは多くの軟体動物化石の産出がある。
 青海石灰岩層の腹足類(巻貝)と言えば、ムールロニア Mourlonia hayasakai が最も良く知られているが、他の巻貝類も少なからず産出するが、まとまった研究報告は少なく、山口県の秋吉石灰岩の報告を同定資料とした。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 山口県立山口博物館 1985
  山口県の古生物 ━古生代━   軟体動物(腹足類・二枚貝類など) 
  P.105-120

 中澤 努  1997
  青海石灰岩層群石炭系の堆積環境と造礁生物
  地質学雑誌/103 巻 (1997) 9 号

 茨木洋介 et al. 2009 
  新潟県青海地域小滝川における石灰岩転石から産出したデボン紀床板サンゴ類
  地質学雑誌 第 115 巻 第 8 号 423−426




0508 掲 載 日 2022年 9月 8日(木)  
標 本 名  Zelandites varuna (Forbes)
 ゼランディテス     バルナ
産  地  兵庫県南あわじ市灘仁頃
時代 地層  中生代  後期白亜紀  マストリヒチアン階  和泉層群 下灘層
標本写真

スケールバーは10mmを示す
コメント 1996年(平成8) 3月10日  採集   ゴードリセラス科

 白亜紀末のマーストリヒチアン階中部から上部層とされる下灘層から産出する
ゴードリセラス・マカロベンゼ Gaudryceras makarovense とゼランディテス・バルナ Zelandites varuna が、この時代のアンモナイト生層序の時代対比に特に有用なアンモナイトとされ、和泉層群と蝦夷層群、根室層群の地層の時代対比が可能となったそうだ。
 しかし、下灘層で、それらアンモナイトの産状は、海岸転石からの採取がほとんどで、直接露頭からの産出は稀である。
Z. varuna は海岸転石から地野・仁頃で産出が知られ、払川では山間部の沢の転石から産出した。 また、西淡層(カンパニアン上部)とされる Pachydiscus awajiensis と共に開発工事に伴う造成地の広田からも産出した。
今後、淡路島での生層序の言及を考えるのには、下灘層でのそれらの詳しい産出地層の解明が必要ではないかと思う。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 むかわ町立穂別博物館  2015   閲覧日  2022/09/4
    北海道東部の白亜紀末アンモナイト新研究
      〜国立科学博物館収蔵資料 根室層群産アンモナイト展示〜
    ホッピーだより No.365 2015年4月1日発行
    http://www.town.mukawa.lg.jp/secure/3641/hoppy_letter_365.pdf
 Yoshiro Morozumi  1985   (英文)
  Late Cretaceous (Campanian and Maastrichtian) ammonites from Awaji Island, Southwest Japan
  (淡路島産の後期白亜紀(カンパニアン〜マストリヒチアン) アンモナイト)
  大阪自然史博物館研究報告 No.39  p.1-58  Pl.1-18 




0507 掲 載 日 2022年 9月 1日(木)  
標 本 名  Striarca elongata Taguchi,Osafune et Obayashi
  シトリアルカ   エロンガータ
産  地  岡山県勝田郡奈義町柿   (なぎビカリアミュージアム用地内) 
時代 地層  新生代  新第三紀 中期中新世  勝田層群 吉野層
標本写真
1a

1b

2
コメント 1981年(昭和56) 10月18日 ほか採集  フネガイ科  ヨコナガミミエガイ

 前掲(No.488 2022/4/21)させて頂いた S. uetsukiensis と同産地で採集したもので
フネガイ科の特徴であるヒンジは直線状で細かな鋸歯状の歯が並ぶ。
S. uetsukiensis では殻頂は前方に偏り、また成長に従って巻き込むと共に殻の膨らみが大きくなるという特徴があるが S. elongata では殻幅は大きく(厚く)ならない。
またS. elongata の方が殻頂の前方への片寄方は大きく、全体として殻長が長く見える。
しかし、それぞれの個体の外観の形状は個体差が大きいので注意が必要だ。 
備北・勝田層群ではVicarya yokoyamai と必ずと言っていいほど共産する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田口栄次・長船忠夫・大林篤繕 1981
     勝田層群産貝化石新種   (英文)
     瑞浪市化石博物館研究報告 第8号 p.1-6   pl. 1




0506 掲 載 日 2022年 8月25日(木)  
標 本 名  1  Glycymeris cisshuensis Makiyama
       グリキメリス     キッシュウエンシス
 2a,b Glycymeris cf. subcostata Matsukuma et Okamoto(MS)
          グリキメリス      サブコスタタ
産  地  島根県出雲市上塩冶町菅沢
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  出雲層群  布志名層―大森層
標本写真




スケールバーは1.0p
コメント 2001年(平成13) 8月12日 ほか 採集   @ キッシュウタマキガイ  A タマキガイの仲間 

 Glycymeris subcostata はMATSUKUMA 1986で(MS)と記されている。 これは1986年の時点で記載論文が出ていないという事で、仮の学名と言える。(現在もその記載がなされていないかは定かではない)
 坂之上 1998によると、出雲層群からGlycymeris sp.は Q. cisshuensis, Q. subcostata(MS), Q. izumoensis(MS) なと3種が松江層・神西層・布志名層から報告している。
ここに紹介する標本は菅沢の布志名層の最上部と大森層最下部の漸移部からの産出で、現場で見る限り岩質からすれば大森層に含まれるものと考える。
 尚、小種名の “subcostata” は多くの動植物の小種名として使われており、特に知られているのは植物のサルスベリ属のシマサルスベリ (Lagerstroemia subcostata) がある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Akihiko MATSUKUMA  1986
      CENOZOIC GLYCYMERIDID BIVALVES OF JAPAN
      Edited by Tamio KOTAKA  JAPANESE CENOZOIC MOLLUSCS-THEIR ORIGIN AND MIGRATION
      PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN SPECIAL PAPERS NUMBER 29
 坂之上 一  1998    
      出雲地方の貝化石
      島根県立三瓶自然館   坂之上一貝化石コレクション解説書




0505 掲 載 日 2022年 8月18日(木)  
標 本 名   上の図 植物化石 (海藻のアマモの仲間か?)
  下の図 ホタテガイの仲間?
産  地  上の図 新潟県佐渡市沢根
 下の図 新潟県佐渡市戸中平根崎 
時代 地層  沢根    新生代  新第三紀   鮮新世   沢根層
 平根崎   新生代  新第三紀   中期中新世   下戸層(おりとそう)
標本写真




 
コメント 1974(昭和49)年 8月15日  採集

 当時私は25歳 道路地図を持って 中古車の1600 CC ブルーバードSSSで全コース車中泊でのドライブ旅行に出た。
勿論 48年もの前の事 高速道路など名神高速道路は開通していたがほとんどないに等しい時代。一般国道が目的地への唯一の道路。 お盆の帰省ラッシュは各地で凄い状態で、何とか直江津のフェリー乗り場に到着したのは夜中、勿論行き当たりばったりでフェリーの予約など取っていない。 キャンセル待ちの車列に加わった。
 何とか佐渡に渡れた。 佐渡の化石について当時は木造だったと思う小さな佐渡博物館を見学して 「鮮新世の沢根層」と「平根崎の下戸層(おりとそう)」の二か所の産地に関して情報を得て、見学できたのは上に紹介する写真の2か所。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 佐渡ジオパーク  HP    閲覧日 2022/08/16
     佐渡でめぐる大地と人の物語
     https://sado-geopark.com/




0504 掲 載 日 2022年 8月11日(木)  
標 本 名   Astrophiura ? sp.
   アストロフィウラ 属
産  地  島根県出雲市(旧平田市)小伊津町 旧小伊津トンネル 港側口横
 35°30'01.0"N 132°50'18.1"E
時代 地層  新生代 新第三紀  中新世中期   出雲層群 成相寺層
標本写真



コメント 1981(昭和56)年10月11日 採集  クモヒトデ(ハスノハクモヒトデの仲間)

 現在の小伊津トンネルは2004年に新たに旧トンネルの南側に開通しもので、当時採集した露頭も新トンネル工事で大きく様変わりしているものと思う。
 『山陰化石物語』の52-59頁に紹介されている。 それによると1975年地元の中学生の夏休みの自由研究の課題として提出されたクモヒトデの化石標本が中学校(旧佐香中学校)の先生から島根大の大久保先生の元に届けられたそうだ。
 小伊津海岸には黒色頁岩層が広く分布しており、出雲層群の成相寺(じょうそうじ)層と呼ばれている。
これらの層からは小型で殻が薄いペッカムニシキなどの二枚貝もよく見る。
 島根半島・宍道湖中海ジオパーク HPに、小伊津海岸の地質については写真入りで詳しく紹介されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 大久保雅弘・赤木三郎 編  1981 
         山陰化石物語
         米子プリント社  刊行
 島根半島・宍道湖中海ジオパーク HP  閲覧日 2022/08/09
         成相寺層の頁岩の露頭
         https://kunibiki-geopark.jp/geo-study/2018/10/05/koizu02/




0503 掲 載 日 2022年 8月 4日(木)  
標 本 名  Flabellum sp.
 フラベリュウム  属
産  地  広島県庄原市板橋町 庄原IC工事現場
 現生種は和歌山県串本町沖産
時代 地層  新生代 新第三紀  中新世中期    備北層群 板橋層  
標本写真


現生種

スケールバー は 10mm
コメント 1977(昭和52)年10月30日 採集   センスガイ

広島県神石高原町の故西川功氏の案内で、当時工事中の中国高速自動車道の庄原ICの造成工事現場で採集させてもらった。
風化したシルト質の泥岩層に含まれ、サンゴの殻自体は残されていない。
 勝田層群でも海進の進んだ堆積とされる高倉(野介代)層からも産出している。
現生種の標本は左向幸雄氏からのいただき物。
 以下 「コトバンク」より引用
六放サンゴ亜綱イシサンゴ目センスガイ科に属する、フラベリウム属Flabellumは莢心(きょうしん)に軸柱の発達が悪く、下端はややとがり、根様突起を備えず、サンゴ体は側方に扁圧(へんあつ)された形になる。幼時は付着生活をするが、成長すると柄部が切れて自由生活をする。世界中の海域に分布し、普通は100〜300メートルの大陸棚上にみられるが、3000メートル以深にも生息する。センスガイはサンゴ体上縁が半円状に突出し、側稜(そくりょう)のなす角度は80〜110度で、側方から見ると扇子を開いた形に似る。世界共通種で、日本沿岸でも太平洋および日本海の大陸棚70〜600メートルにもっとも普通に産する深海サンゴである。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 コトバンク     閲覧日 2022/08/01
  センスガイ 




0502 掲 載 日 2022年 7月 28日(木)  
標 本 名  Fissidentalium yokoyamai (Makiyama)
 フィシィデンタリユム  ヨコヤマイ
産  地  高知県室戸市羽根町登(のぼり)  (羽根産業社ポラゾン採掘場)
時代 地層  新生代 新第三紀鮮新世   唐の浜層群 登層  
標本写真

コメント 1982年(昭和57) 10月10日 採集  ヤスリツノガイ

 この年の8月にこの産地を知って 2度目の挑戦 魚の耳石を狙っての訪問だったが、現地の採掘が進み切り取り層準が変わったのか、耳石は殆ど手にできなかったが、写真の潰れのない10p近い立派なツノガイ化石の発見があった。
 軟体動物に分類される“貝類”の仲間とされるツノガイ類は形態や生態から二枚貝綱と腹足綱の間に位置づけられて、細い側の孔を後口、太い側の孔を殻口と呼ぶ。 鰓は持たないため、外套膜が代わりとなり海水中の酸素を取り込む。なお、蓋は持たない。 生息深度も幅広く、潮間帯〜深海まで広く分布するが、生息環境は比較的軟らかい海底に限られる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 ウイキペディア     閲覧日 2022/07/25
 掘足綱( くっそくこう、Scaphopoda )

 千葉県立中央博物館分館 海の博物館   閲覧日 2022/07/25
  http://www2.chiba-muse.or.jp/www/UMIHAKU/index.html




0501 掲 載 日 2022年 7月 21日(木)  
標 本 名  Philyra sp.
 フィリラ  属
産  地   滋賀県甲賀市土山町山女原(あけびはら)
時代 地層   新生代 新第三紀  前期中新世  鮎河層群 黒川層 山女原部層 
標本写真
 
スケールバーは 5 mm を示す
コメント 1979(昭和54)年 4月 8日 採集   マメコブシガニの仲間

 国道1号線 三重県との県境の鈴鹿峠の北部に位置し、近年、山女原地区中心部に東西に新名神高速道路の、鈴鹿トンネルが開通している。この新名神の工事で、鮎河層群の地層がが大きく表出し 保存の良い化石が大量に採取されたようだが、私はその恩恵を受けていない。
 この日、午前中に皮膚科の開業医岡村喜明氏の草津地学同好会,滋賀県青少年地学センター岡村化石博物館「石心館」の見学訪問をさせて頂いた、岡村氏は後の1991年には滋賀県足跡化石研究会を設立され、足跡の研究者として華々しい活躍が知られている。 1997(平成9年の春 琵琶湖博物館が開館し、2000年には「石心館」のすべての標本資料は寄贈移管されている。
 先に紹介させて頂いた、Phos minoensis ムシロガイ (No.493 掲載日 2022年5月26日)と共産して産出した。 5mm内外の甲背の殻だけの産出がほとんどだが、まれに分離したハサミ脚や足の一節も観られたが、手足付きのものは見てない。甲背の正中線上の胃域・心域は丸く膨れ、鰓域との境は浅い窪みが見られる。額域は一対の眼上突起がかろうじて読み取れる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 草津地学同好会 1977
     鮎河層群貝類 化石写真特集
     草津地学同好会誌 第3号
 柄沢宏明  1997
     西日本の新生代大型甲殻類
     瑞浪市化石博物館 専報  第8号




0500 掲 載 日 2022年 7月 14日(木)  
標 本 名  Gaudryceras sp.
  ゴードリセラス
産  地  兵庫県南あわじ市灘大川海岸
時代 地層  中生代  後期白亜紀  マストリヒチアン階  和泉層群 下灘層
標本写真




スケールバーは1.0 p

  
コメント 2008(平成20)年 9月14日   採集    コードリセラス属の一種

 螺環は密巻でヘソは広く、螺環断面は円形である。殻は薄く、殻表には多数の直線的な非常に繊細な肋があり、それらの微細肋が5〜8本ごとの前後に少し強い肋が見られる。
 下灘層の仁頃と地野では、過って Saghalinites sp. されていた Gaudryceras sp. は殻表が風化して本来あるべき殻表の装飾が見られないもので、圧力を受け変形したものが多い。
 大川海岸の波打ち際の大きな泥岩の転石に、なんとも悩ましいノジュールを発見、タガネとバールを使ってノジュールを取り出す。浜でノジュールにハンマーを入れると、植物片を多く含み二枚貝類の破片もの覗いていた。 次の一撃で出てきたのが、この淡路の和泉層群では珍しい飴色をしたアンモナイトです。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 
 Matsumoto & Morozumi 1980   
     Late Cretaceous Ammonites from the Izumi Mountains, Southwest Japan
     Bulletin of the Osaka Museum of Natural History,33,
 Morozumi 1985  
     Late Cretaceous (Campanian and Maastrichtian) ammonites from Awaji Island, Southwest Japan.
     Bulletin of the Osaka Museum of Natural History, no. 39, p.




0499 掲 載 日 2022年 7月 7日(木)  
標 本 名  Pododesmus macroschisma Deshayes
  ポードデスマス      マクロスキシマ
産  地  岐阜県瑞浪市土岐町天徳 瑞浪北中学校敷地造成工事現場
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世  瑞浪層群 明世層 山之内-戸狩部層
標本写真
 
コメント 2016(平成28)年10月27日 採集    ナミマガシワモドキの仲間

 瑞浪北中学校敷地造成工事現場での調査に、瑞浪市の化石博物館のはからいで2日間参加させていただいた。
殻頂部が破損した標本だが、殻表には明瞭なひだ状の成長線とやや不規則に波うつ粗い放射肋が見られる.肋間はやや広く,溝は明瞭である.殻の内側には筋痕が 2 か所見られ,それぞれ閉殻筋痕と足糸牽引筋痕とみられる.(安藤 ・糸魚川 2018)
 殻表に白色の石灰質の棲管が付着が見られる,これは環形動物の多毛類に分類されるゴカイの仲間が造った物
以前このコーナーの“想い出の化石”(3)の0083 2014/5/1 掲載の土岐川の河川敷で採取した Monia sp. との差異については、安藤 ・糸魚川 2018 で紹介されているのでここでは省く.
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 安藤佑介  2018
    瑞浪北中学校敷地造成工事現場(瑞浪市土岐町)に露出した下部中新統瑞浪層群明世層から産出した化石
    瑞浪市化石博物館研究報告 no.44. 特別号 p. i−xi, 14 figs., 2 table.

 安藤佑介 ・糸魚川淳二  2018
    瑞浪北中学校敷地造成工事現場に露出した明世層中のCrenomytilus(エゾイガイ)密集部から産出した貝類化石
    瑞浪市化石博物館研究報告 no.44. 特別号 p. 13?24, 3 figs., 4 pls., 2 table.




0498 掲 載 日 2022年 6月30日(木)  
標 本 名  Olivella iwakiensis Nomura et Hatai
  オリベラ     イワキエンシス
産  地  島根県出雲市上塩冶町菅沢
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  出雲層群  布志名層
標本写真

スケールは1.0 cm
コメント 2009年(平成21) 5月9日 ほか 採集       マクラガイ科 イワキホタルガイ

 マクラガイ科の巻貝で殻高約 1.0cm。紡錘形で殻表には装飾はほとんど見られない。殻口部の体層の内唇下部(軸壁)には明瞭な2本の襞(ヒダ)がある。
 これに近い現生種は日本の中部以南の浅海の砂底にすみ、干潟をはい回って二枚貝の稚貝を丸呑みにして食べる獰猛な肉食性種として知られている。
 勝田層群・内浦層群などの砂岩層からも産出が知られている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 坂之上 一  1998    
    出雲地方の貝化石
    島根県立三瓶自然館   坂之上一貝化石コレクション解説書




0497 掲 載 日 2022年 6月23日(木)  
標 本 名  Crassostrea gigas Thunberg
  クラッソオステリア   ギガス
産  地  岡山県津山市新田
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  勝田層群  吉野層
標本写真
  
スケールは1.0 cm
コメント 1977(昭和52)年 4月24日 採集      イタボガキ科   マガキ  

 先週紹介したアツガキ Crassostrea gravitesta はビカリアと共産するが、このマガキはビカリアが見られるところには産出しない。 稀にマガキ類が生息している所にビカリアが運ばれてくることがある。(産地例 奈義町の院内大池)
マガキもアツガキと同様に、普通は岩や杭など固いものに付着して成長するが、干潟では時にはそれぞれの個体が付着し群生してカキ礁を造ることがあり、時には大きく広いカキ床を造る。
保存の良い標本だが、当時、剖出技術がまったくなく 恥ずかしい傷だらけの標本 何とか補修したいものだ。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 せとうちネット(環境省)  閲覧日 2022/06/21
   https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/setonaikai/clm9.html

 Wikipedia マガキ     閲覧日 2022/06/21
   https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%AD




0496 掲 載 日 2022年 6月16日(木)  
標 本 名  Crassostrea gravitesta (Yokoyama)
  クラッソオステリア グラビティスタ
産  地  岡山県津山市高尾  皿川河床
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世  勝田層群  吉野層
標本写真
コメント 2022(令和4)年 4月17日 採集     イタボガキ科  アツガキ

 HP “干潟系化石の館”の管理者は、カキ化石にについて次のように紹介している。
 「カキ、干潟の貝化石のなかで、重要であるにもかかわらず採集者から、これほど疎んじられているものはない。 なぜなら多産するが、大きくてかさばる、完全体を採集するのが面倒、形が不規則でカッコ悪い、種類の同定が困難、などの理由による。 しかし、このような一般的な種類ほど生態や古環境を研究する上では重要なので、機会があればまじめに取り組みたい。」・・・・   これには私も同意見である。
 この産地では、どの化石よりも多産し、現場では足元にあちこちで見えている。 また、ここでは干潟の砂泥底に生息していたとされる Vicarya yokoyamai, Tateiwaia yamanarii , Anadara (Hataiarca) kakehataensis, Cyclina (Cyclina) takayamai, Hiatula minoensis, Geloina stachi. などと共に、このアツガキが、多くの個体が群生して見られたり、大きなノジュールの核として産出する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 中川登美雄・福井県立羽水高等学校自然科学部 2020
    福井県福井市国見町から産出した前期中新世干潟貝化石群集
    瑞浪市化石博物館研究報告 第 47 号, 65?87, 4 pls., 7 figs., 5 tables

 干潟系化石の館      
    Arcid-Potamid 群集記念館
    https://higatakaseki.web.fc2.com/   閲覧日 2022/06/11




0495 掲 載 日 2022年 6月 9日(木)  
標 本 名  Nanonavis cf. sachalinensis (Schmidt)
  ナノナビス    サハリエンシス
産  地  兵庫県洲本市由良町
時代 地層  中生代  白亜紀後期  マストリヒチアン階  和泉層群  北阿万層 
標本写真
コメント 2016(平成28)年 3月20日 ほか採集   フネガイ目   シコロエガイ科

 ナノナビス属は淡路島の和泉層群では比較的産出が多い仲間で、ことに、N.splendens, N.awajiensis, N.brevis が最下位層の西淡層から産出が見られ、最上位層の下灘層からも N.splendens が多産する層準が見られる、しかし 下灘層ではN.awajiensis, N.brevis は産出しなくなる。 また北阿万層では N.awajiensis, N.brevis の産出しており、これらの標本を再検討していて、これらの仲間より先に出現していたとされる N.sachalinensis に似たものが産出しているが分かった。
 N.sachalinensis は後稜の角張りは、殻頂付近で強いが次第に弱まり、腹縁近くでは先端が丸まった高まりに変わる。個々の標本では左右殻の肋の強さの差はあまり目立たなくなるが、同一個体の両殻が揃っている場合は、やはり左殻が強い。N.awajiensis, N.brevisと比べ殻長は長く、殻高は小さい。
 但し、N.sachalinensis はサントニアン〜カンパニアンに現れた種とされており、北阿万層のマストリヒチアン前期とは符合しない。
これらは、先行研究の調査と化石資料の蓄積を待ち、今後検討していきたい。。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田代正之・佐光本徳・中村彰男 1986
    愛媛県西条市周辺の和泉層群二枚貝化石
    高知大学学術研究報告 第35巻 自然科学

 小松俊文・三宅優佳・真鍋 真・平山 廉・籔本美孝・對比地孝亘  2014
    甑島列島に分布する上部白亜系姫浦層群の層序と化石および堆積環境
    地質学雑誌 第 120 巻 補遺 19−39

 Blog 田代正之絵画集(趣味の絵画)
     https://bayard.exblog.jp/page/20/  閲覧日 2022/06/05




0494 掲 載 日 2022年 6月 2日(木)  
標 本 名  Laternula marilina Reeve
  ラテルラ  メリリナ
産  地  愛知県名古屋市 名古屋港浚渫造成地 東部  (詳細な場所?)
時代 地層  新生代  第四紀  完新世  南陽層 
標本写真


 
コメント 1979(昭和54)年1月3日 採集  ウミタケモドキ目 オキナガイ科 オキナガイ属 ソトオリガイ

 殻は長楕円形で、膨らみは強い。殻は非常に薄く、白色で、そとおり(衣通)の名が示す通り殻が半透明。殻頂には下方に向かう裂け目がある。殻の後端は開いていて太い水管は内包されず出たままである。また、殻の外周囲には薄い殻皮がある。
潮間帯から水深10メートルの砂泥地で、河川などの流れ込む干潟に生息する。
近似種のオキナガイ Laternula anatina と比べ殻は、いくぶん細長く、両種とも殻は真珠光沢をもつ。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑  閲覧日 2022年5月26日
     https://www.zukan-bouz.com/

 生きもの好きの語る自然誌 管理・執筆 鈴木雅大  閲覧日 2022年5月26日
     https://tonysharks.com/ 




0493 掲 載 日 2022年 5月26日(木)  
標 本 名  Phos minoensis Itoigawa
 フォス   ミノエンシス 
産  地  滋賀県甲賀市土山町山女原(あけびはら)
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世  鮎河層群 黒川層 山女原部層
標本写真



コメント 1979年(昭和54) 4月 8日 採集   ムシロガイ

 トクサバイ属 Phos sp. はムシロガイ科 ( オリイレヨフバイ科 ) Nassariidae に属するとされ、過ってはエゾバイ科 Buccinidae とされていた。
 ムシロガイは干潟から水深5m位から、やや深い海にまでの砂底に生息している巻貝で、肉食性でゴカイやその他の動物などを襲って捕食する他、魚の死体などの死んだ動物の臭いを敏感に察知して集まり、積極的に食べる腐肉食性の巻貝。
 山女原(あけびはら)の砂岩層では、幼貝から成貝が同じ場所で、それぞれ多産した。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 草津地学同好会 1977
     鮎河層群貝類 化石写真特集
     草津地学同好会誌 第3号
 吉田 史郎  1977
     滋賀県鈴鹿山脈西麓の鮎河層群
     地質調査所月報(第29巻第7号)




0492 掲 載 日 2022年 5月19日(木)  
標 本 名  Yoldia cf. notabilis Yokoyama
  ヨルディア    ノタアビリス
産  地  三重県津市榊原町 榊原温泉
 34°42'32.9"N 136°22'09.6"E
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世  一志層群  大井層  三ケ野部層  
標本写真
コメント 1977年(昭和52) 5月2日 採集  クルミガイ目 ロウバイガイ科 フリソデガイ

 殻は小型で、殻幅は膨らみが少なく薄い。表面にははっきりとした平行な細い成長肋の刻があり、丸く突き出した前方では輪脈が目立つ、ナギナタ状に反り返った後方ではシワ状になる。また、ヒンジには櫛状を呈した歯が多数並ぶ。
 中深度以下の水温が低い海底 あるいは寒流系の流れ込む海域の泥底に棲むとされている。
日本各地の中新世以降の地層からは、ごく普通に見られる。
この産地の岩質はシルト質の泥岩で、化石は多くのものが、合弁で散在して含まれている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 
           ━




0491 掲 載 日 2022年 5月12日(木)  
標 本 名  Miosesarma japonicum Karasawa
 ミオセサルマ       ジャポニカム
産  地  岡山県津山市新田
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世  勝田層群 吉野層
標本写真



コメント 1977年(昭和52) 3月27日 ほか採集    

 Miosesarma japonicum は土岐市の瑞浪層群明世層山之内部層から産出した標本が模式標本となっている。
柄沢1989によると、甲は小型で横に長い方形。額は横にまっすぐで甲幅の1/3の長さ、眼域は幅広く甲幅の2/3を占める。前側縁には幅広い4歯を刻むが最後の1歯は不明瞭。甲背面の各域は浅い溝で区画される。鰓域には前側縁の4歯目から走る1稜線がある。
 過っては、この産地のそら豆粒大のノジュールにはよくカニの甲背が入っていることが多かったが、今ではこの産地は露頭を含む山ごと削り取られなくなってしまって太陽光発電のパネルが並んでいる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

柄沢宏明・岸本眞五  1996
  岡山県の勝田層群産中新世十脚甲殻類
  瑞浪市化石博物館研究報告 23,p.39-50
柄沢宏明   1989
  瑞浪層群の中新世十脚甲殻類化石 その1  
  アナジャコ上科・コブシガニ上科・イワガニ上科 (英文)
  瑞浪市化石博物館研究報告 16,p.1-28  Pl.1-3




0490 掲 載 日 2022年 5月5日(木)  
標 本 名  現生   Terebralia palustris (Linnaeus)
 
化石  @Terebralia itoigawai Taguchi, Osafune et Obayashi
     ATerebralia kakiensis Taguchi, Osafune et Obayashi
 
産  地  現生種  石垣島・西表島
 化石種  岡山県勝田郡奈義町柿 荒神谷
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世  勝田層群 吉野層
標本写真
(現生)

(現生)





   
コメント 現生種 1996年(平成8) 3月24日 ほか採集  化石種 1997年(平成9) 5月5日 ほか採集

 このキバウミニナは汽水域のマングローブの砂泥上に群棲している。 
初めて観たのは西表島で、予備知識もなくこの貝を林の中で樹木の落葉を直接摂食する様子を小一時間あまり生態観測した。この時、気根の間に多くの個体がいるが、それぞれの個体の大きさがほぼ同じで成体と思える10p近い大きなものばかりで、小さな(子供・亜成体)のが見られなかった。これはウィキペディアによると、成貝の歯舌は鋭く刃物のようであり、硬いマングローブの落葉を効率よく切断することができる。さらに切断された葉から溶出するモノテルペン混合物に誘引され、個体数が多い生息地では、一箇所に大量に集中することがあると記されている。
 私が、その後亜成体の棲息が確認できたのは 石垣島の名蔵アンパル湿地で、成体がいるマングローブの気根周りでなく、少し離れた気根がなく広々とした浅瀬の干潟に色々の成長段階のものが見られた。 これらは成貝は落葉を直接摂食するが幼貝はウミニナ科の巻貝と同様に主にデトリタスを摂食することにより、それぞれの生活の場に違いがある。
 勝田層群ではVicarya sp. に伴って産出し Terebralia sp. はT. itoigawaisT. kakiensis の他に T. sibatai の産出が知られている。 
 掲載写真の三枚目は この春知り合ったインドネシア在住の方のご自宅付近のマングローブのキバウミニナの生息環境の写真
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
      キバウミニナ  閲覧日 2022年3月29日

 田口栄次・長船忠夫・大林篤繕 1981
   勝田層群産貝化石新種   (英文)
   瑞浪市化石博物館研究報告 第8号 p.1-6   pl. 1 




0489 掲 載 日 2022年 4月28日(木)  
標 本 名   属種不明の二枚貝類 (未決定種)
 
産  地  兵庫県香美町村岡区大糠 湯舟川 河床
 35°27'40.2"N 134°36'01.0"E
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世    北但層群 村岡層  湯舟川部層
標本写真
 

 


コメント 2005年(平成17) 8月16日 採集

 北但層群村岡層 湯舟川部層(湯舟川頁岩層)からは オオハネガイの化石の産出が目立つが、大型の標本の産出は少ない、
ここに上げた標本 小さな二枚貝類ですが 丹念に探せば川底の頁岩層から見つかることがある。
湯舟川頁岩層からの貝類化石に関して論じられたものを未だに観ていない。
Takashi Matsubara  2011でも湯舟川部層の標本は一点も取り上げられていない。
今は 追加標本を増やし 研究者が現れるのを待つのみと思う。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Takashi Matsubara  2011 
   Miocene shallow marine molluscs from the Hokutan Group in the Tajima area, Hyogo
   Prefecture, southwest Japan 
   (兵庫県但馬地域の北但層群産中新世浅海軟体動物)
   瑞浪市化石博物館研究報告 37 p.51-113

 山名 巌  1997    鳥取県化石誌      株式会社 富士書店 発行




0488 掲 載 日 2022年 4月21日(木)  
標 本 名  Striarca uetsukiensis (Hatai et Nisiyama)
  シトリアルカ   ウエツキエンシス
産  地  岡山県勝田郡奈義町柿   (なぎビカリアミュージアム用地内) 
時代 地層  新生代  新第三紀 中期中新世  勝田層群 吉野層 
標本写真



コメント 1981年(昭和56) 10月18日 ほか採集  フネガイ科フネガイ亜科 ウエツキミミエガイ

 HATAI and NISIYAMA, 1949で Barbatia (Barbatia) uetsukiensis として記載され、その後 Masuda and Noda, 1976 によって属名が Striarca 改定された。 
 小型の二枚貝で殻頂はやや前方に片寄り、成長に従って巻き込むと共に殻の膨らみが大きくなる。殻表には細かな縦筋と成長輪脈が交わり 細かな布目状の装飾がある。 これらの装飾は風化による殻の白粉化によって成長輪脈が目立つものが多い。 また、ヒンジは直線状で細かな鋸歯状の歯が並ぶ。
この産地(なぎビカリアミュージアム用地内)の他 勝田町内の吉野層からは普通に産出する。
 尚、これと共に Taguchi et al. 1981 で 新種記載された S. elongata があるが、これについては後日掲載する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田口栄次・長船忠夫・大林篤繕 1981
   勝田層群産貝化石新種   (英文)
   瑞浪市化石博物館研究報告 第8号 p.1-6   pl. 1

 東北大学総合学術博物館 二枚貝データベース  閲覧日 2022/04/18
   http://webdb2.museum.tohoku.ac.jp/t_bivalve/
   Striarca
   http://webdb2.museum.tohoku.ac.jp/t_bivalve/detail.php?recno=000125




0487 掲 載 日 2022年 4月14日(木)  
標 本 名  Inoceramus shikotanensis Nagao & Matsumoto
  イノセラムス   シコタネンシス
産  地  兵庫県洲本市由良町
時代 地層  中生代  白亜紀後期  マーストリヒチアン前期   和泉層群  北阿万層
標本写真
@ A

B

C
コメント 2009年(平成21) 1月 3日  採集   翼形亜綱・カキ目・イノセラムス科

 掲載標本は保存状態は良くないが、合弁でこの産地の I. shikotanensis としては大型 Bは同じ産地の殻の断面標本、種は不明だがイノセラムスの仲間は殻の断面に稜柱(プリズム)状の構造がよく観察できる。この殻の厚さからすれば殻径は相当大きかったのではないか?
 淡路島のイノセラムス化石帯を、これまでの自身の採集品を見たとき、標本数も少なく、また同定が不十分であるため、Cに上げるような すっきりとした分割する線はひけていない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 西村智弘 2021 
    イノセラムス科二枚貝のキャラクター;「いのせらたん」の教育・普及活動および評価
    むかわ町穂別博物館研究報告 第 36 号7-31 頁

 利光ム誠一・松本達郎・野田雅之・西田民雄・米谷盛壽郎 1995
    本邦上部白亜系の大型化石ー微化石層序および古地磁気層序の統合に向けて
    地質学雑誌  第101巻 第1号 p.19-29




0486 掲 載 日 2022年 4月7日(木)  
標 本 名  Tateiwaia yamanarii (Makiyama)
   タテイワイア     ヤマナリイ
産  地  岡山県新見市大佐田治部 (旧大佐町新田・戸谷) 大畑川河床
 35°02'16.9"N 133°32'31.8"E
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期  備北層群 下部砂岩層 (田治部層)
標本写真

コメント 1980年(昭和55) 5月 3日ほか  採集    ヤマナリウミニナ

 下に紹介する瑞浪の報告が手元に届いたのが1980年の3月だった。そこに掲載された田口ほか.1979の報告を拝見し、仕事の休みが取れるのを待ち望んでいた。 産地は中国自動車道路の大佐パーキングエリアの北側下を流れている水田脇の大畑川と呼ばれる小さな用水路の河床。今ではこの地域も過疎化が進み、行政区も新見市に合併されている。
谷あいの小さな水田は、どんどん耕作放置され草林になるところが多くなり、水路も整備されなくなって草が生い茂り、川岸からは川底の備北層群の泥質砂岩層が見えない状況になっている。 夏場などは水辺では マムシ等の危険な生物もいる。
この産地の Vicarya yokoyamai は大きいことでよく知られて殻長さが12〜13pに届くものが産出する。 それと同様にこの Tateiwaia yamanarii も他の産地のものと比べて1.0〜1.5cm大きいものが産出する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

田口栄次・小野直子・岡本和夫 1979
       岡山県および大佐町における中新世備北層群の貝化石群集
       瑞浪市化石博物館研究報告 No.6  p.1-15  pl.1-4
後藤隆嗣・入月俊明 et al.  2013
       岡山県新見市田治部地域に分布する中新統の層序と堆積環境
       地質学雑誌 第119号 第4号 p. 321-333




0485 掲 載 日 2022年 3月31日(木)  
標 本 名  Venericardia (Cyclocardia) siogamensis Nomura
   べネルカルディア  (キクロカルディア)  シオガメンシス
産  地  三重県津市美里町分郷
時代 地層  新生代 新第三紀  中期中新世   一志層群 大井層 三ケ野部層
標本写真

コメント 1976年(昭和51) 2月 28日  採集 トマヤガイ 科 Carditidae  マルフミガイ 属 Cyclocardia

 殻頂はやや前方に偏り、殻は丸いおにぎり型で殻頂から太くはっきりとした放射肋が25〜30本広がり、成長輪肋と交差することによって放射肋の頂が波打つ。
一志層群では多産する普通種で、Venericardia 属は日本各地の始新世〜中期中新世の内湾性でない堆積層からは多くの産出が知られている。 私自身これまで Vicarya と共産する層準は確認できていない。
 この仲間に外観が一見よく似たものに、マルスダレガイ目 Veneroida のザルガイ科 Cardiidae の仲間がいる。中でもイシカゲガイ亜科 Clinocardiinae は、ザルガイ科の一つであり、比較的寒冷な海に棲む種を含む。貝殻は他のザルガイ科と同様によく膨らみ放射肋があるが、前後に若干長い。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
      ザルガイ科    閲覧日 2022年3月29日

 Yukito Kurihara 2010
  Middle and Late Miocene Marine Bivalvia from the Northern Kanto Region, Central Japan
  Museum of Nature and Science Monographs No. 41, 87 pp.




0484 掲 載 日 2022年 3月24日(木)  
標 本 名  Pachydiscus aff. gracilis  Matsumoto
   パキディスカス    グラシリス
産  地  兵庫県南あわじ市灘吉野海岸
時代 地層  中生代 白亜紀後期  マーストリヒチアン階    和泉層群 下灘層
標本写真
コメント 2001年(平成13) 5月 6日  採集
 この頃の灘海岸は海岸道路の拡幅と護岸の防波堤の改修を兼ねた工事が進められていた。 
この日も20p越えの Pachydiscus sp. の2個体を得ることができた。
下灘層では大型のアンモナイトが良く産出している。 Pachydiscus subcompressus , P. flexuosus , P. gracilis などと考えられる3種の正常巻きアンモナイトをよく見る。 特に P. subcompressus は下灘層全般に見られる。 
 1980年代の松本・両角の研究以後 90年代の後半から2000年代初めにかけて行われた灘海岸道路の改修工事でアマチュアによって多くの標本が得られている。 南光1996 に特別寄稿された両角先生が既に報告されているように、これらのPachydiscus sp. それに黒岩で産する Gaudryceras izumiense と共に再検討をする必要があるとされている。
 淡路下灘層のアンモナイトは世界的に見ても白亜紀後期マストリヒチアンの研究には欠かせないアンモナイトである。これらのアンモナイトの再検討は北九州の御前氏・徳島の辻野氏・穂別の西村氏・それに豊中の松永氏 等々の期待される中堅の研究者が近年各地で成果を出されていますので、今後期待できるものと思う。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 Tatsuro Matsumoto and Yoshiro Morozumi  1980
  Late Cretaceous Ammonites from the Izumi Mountains,Southwest Japan 
  (和泉山脈産の後期白亜紀アンモナイト)
  大阪自然史博物館研究報告 No.33  p.1-31  Pl.1-16
 Yoshiro Morozumi  1985
  Late Cretaceous (Campanian and Maastrichtian) ammonites from Awaji Island, Southwest Japan
  (淡路島産の後期白亜紀(カンパニアン〜マストリヒチアン) アンモナイト)
  大阪自然史博物館研究報告 No.39  p.1-58  Pl.1-18 
 南光重毅  1996
  淡路島の化石   (p. 72-77  特別寄稿 両角芳郎 淡路島産アンモナイト研究史)
  洲本市立淡路文化史料館 発行  




0483 掲 載 日 2022年 3月17日(木)  
標 本 名  Carcinoplax antiqua (Ristori)  
   カーチノプラックス アンティクァ (リストリイ)   
産  地  岡山県津山市楢
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期     勝田層群 吉野層
標本写真

コメント 1995年(平成7) 9月 17日  採集   Goneplacidae エンコウガニ科  ムカシエンコウガニ  ♂

 この産地は小さな宅地造成工事によってできた露頭で きれいに平地に造成された地面にC. antiqua を含むノジュールが点々と見えていて、ほいほいと拾えたものでした。
 C. antiqua は多産するのですが、ここまで大きな老齢化した巨大なはさみ脚を持ったオスの標本は初めて見るものだった。
 この産地、直ぐに家が建ってしまうだろうと思ってたのだが 30年近くになるが、いまだに住宅は建っていない。
お陰で、今でも時たま産地パトロールをかける露頭の一つとなっている。
 しかし 長年の間に色々なマニアが採集に入っている様で、タガネでノジュールを掘り起こしているのを注意されるようになってきて今ではパトロールをするものの現地にとどまるのはほんの数分、表面観察での道具は使用せず拾うのが主となっている。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 柄沢宏明・岸本眞五  1996  
  岡山県の勝田層群産中新世十脚甲殻類
  瑞浪市化石博物館研究報告 23,p.39-50




0482 掲 載 日 2022年 3月10日(木)  
標 本 名  Periplomya grandis Ichikawa and Maeda
   ペリプロミヤ   グランディス
産  地  兵庫県南あわじ市灘仁頃
時代 地層  中生代 白亜紀後期 マーストリヒチアン階   和泉層群 下灘層
標本写真




     
コメント 1994年(平成6) 4月 9日  採集  Pholadomyoida 目 Laternulidae (オキナガイ科) Periplomya 属
 
 下図の1, 2, 3. は田代1992の「化石図鑑」から借用したもので、1Periplomya grandis, 2 P. nagaoi nagaoi , 3P. nagaoi brevis とされている。これら3種は殻表には微細な成長線の平行輪脈見られるが殻表は平滑。 殻頂はほぼ中央で、殻頂から後縁部に向かって浅い切れ込みが走る。 P. nagaoi については nagaoi brevis の亜種が記載されているが、最近ではこれらの亜種は個体変異の範疇ということで、P. nagaoi とされることが多いようである。
P. grandis は淡路の和泉層群の下灘層では普通種である。 また P. grandis の特徴の一つに後部の殻は閉まらず口が開いたまま(gaping)である。 図の の後縁部端部が直線的であるが、その程度が低く、標本の保存状態によってはP. nagaoi と見極めるのが難しい。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 西村智弘・小松俊文  2022
  北海道大夕張地域の蝦夷層群函淵層から産出した後期白亜紀の二枚貝Peripiomya nagaoi Ichikawa and Maeda(1958)
  むかわ町穂別博物館研究報告第 37 号(2022 年 3 月),11-18 頁
 田代正之 1992   
  「化石図鑑」−日本の中生代白亜紀二枚貝− (自費出版本) 
  図版75, 3, 4. p.263. 図版77, 4. p.271 解説文 p.273 




0481 掲 載 日 2022年 3月 3日(木)  
標 本 名  Daonella cf. kotoi Mojsisouics
   ダオネラ   コトイ
産  地  岡山県高梁市川上町地頭
   34°43'58.8"N 133°28'42.1"E
時代 地層  中生代 三畳紀後期 ノーリアン階   成羽層群  地頭層
標本写真

コメント 1977年(昭和52)10月29日  採集  ウグイスガイ目 ( Pterioida) ハロビア科 (Halobiidae)  Daonella

 成羽層群からは翼形(よくけい)亜綱(Subclass Pteriomorphia)のウグイスガイ目 (Order Pterioida)に分類されるモノチス科(Monotidae)の Entomonotis が多産することが知られている。この多産層準から、掲載標本の Daonella cf. kotoi は得られた。 Entomonotis は左右の殻は不等殻で殻厚は薄く、砂泥底に潜っての生活ではなく、海藻などに足糸で付着して、数多くの個体がコロニーを造って生活していたとされていて、一方 Daonella は殻頂から放射状に多くの直線的な肋が広がり、殻は膨らみが少なく扁平で、殻自体の厚さも極端に薄いことから、砂泥底内在型ではなく浮遊性の生活様式を取っていたと考えられている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 Teiichi Kobayashi and Akira Yokuyama 1959
   Daonella in Japan     The Halobiidae from Thailand
   Reprinted from Journal of the Faculty of Science,University of Tokyo
   Sec. U, Vol.. ?, Part T, pp. 1-30, pl.T-W,
 Itaru Hayami 1975
   A Systematic Survey of the Mcsozoic Bivalvia from Japan
   The University Museum The Universisy of Tokyo Bulletin No.10,
 速水 格.1969
   中生代の“浮遊性”二枚貝について.
   地質學雑誌,75,7,375-385.




0480 掲 載 日 2022年 2月 24日(木)  
標 本 名  Venericardia panda Yokoyama
   ベネリカルディア    パンダ
産  地  高知県安芸郡安田町唐浜
  33°26'49.0"N 133°57'58.2"E   
時代 地層  新生代 新第三紀 鮮新世    唐の浜層群 穴内(あなない)層
標本写真







コメント 1982年(昭和57) 10月 10日  採集  トマヤガイ科 フミガイ属  ダイニチフミガイ

  平成20年(?)ごろに化石発掘体験場が高知大学の指導の下で安田町が一般の方たちを対象に無料で開設解放され、今では多くの家族連れが楽しんでいる。
 注意看板の設置
  2010年頃、この産地で某地学会が関西から泊りがけで、化石採集例会を開き、ここに書かれた道具等で大きく崩して、顰蹙をかう様な採集をし、その後この様な注意看板が現地に掲示された。

 掲載のVenericardia panda Yokoyamaはパンダガイとも称され、静岡県の鮮新統の掛川層群大日層で記載されたダイニチフミガイ。 今回紹介するのは同じ鮮新統で高知県の唐の浜層群の穴内層で採取したもの。当時の採取露頭はこの体験場の南、住宅地に面したところで、現在、弘法大師の『食わず貝伝説』の案内板が設置されているすぐそば。 採集に訪れた時に偶然にも小さな崖崩れ跡があり、容易く多くの種を採ることができた。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 安田町化石発掘体験場
  安田町地域創生課 〒781-6421 安芸郡安田町大字安田1850番地
  Tel:0887-38-6713 Fax:0887-38-6723
  https://www.town.yasuda.kochi.jp/life/dtl.php?hdnKey=1309




0479 掲 載 日 2022年 2月 17日(木)  
標 本 名  Mercenaria yokoyamai (Makiyama)
   マーセナリア      ヨコヤマイ
産  地  島根県出雲市上塩冶町菅沢  斐伊川放水路内 
   35°21'03.8"N 132°46'29.4"E
時代 地層  新生代代 新第三紀 中新世中期   出雲層群 布志名層
標本写真

コメント 2001年(平成13) 8月 12日ほか  採集   マルスレダレガイ上科 マルスダレガイ科

 地球上で個体としての、もっとも長寿の生物は、植物を除く動物界では二枚貝類の仲間で、このホンビノスガイに近い仲間とされている。
先日(2022/2/7)の朝日新聞の科学欄にこのホンビノスガイのことが、2011年の東日本大震災の大津波で命を絶った135歳の長寿貝として紹介されていた。そこで、この記事をもとにググってみた。
イギリスではビノスガイの仲間のアイスランドガイという10p大の二枚貝が、507年もの命を得ていたことが報告されている。
二枚貝は殻頂から同心円状に成長輪脈(肋)を成長期とまた休止期の縞模様を造りながら成長していく。
布志名層産の保存のよい標本では 輪肋が板状にたっているのが残されていることもある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 神戸大学 Research at Kobe  2021/11/25
   東日本大震災の津波が長寿二枚貝ビノスガイの大量死に関与していたことを殻の分析から推定
   https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2021_11_25_01.html 閲覧日2022/2/13

 東京大学総合研究博物館 (UMUT Hall of Inspiration)
   B10 アイスランドガイ ―世界最長寿の貝―
   https://www.um.u-tokyo.ac.jp/UMUTopenlab/library/b_10.html 閲覧日2022/2/13




0478 掲 載 日 2022年 2月 10日(木)  
標 本 名  Portlandia (Megayoldia) gratiosa (Yokoyama)
  ポートランディア (メガヨルディア)  グラティオーサ
産  地  島根県松江市宍道町東来待  (国道9号線沿い)
   35°25'24.6"N 132°58'13.3"E
時代 地層  新生代代 新第三紀 中新世中期   出雲層群 布志名層
標本写真




コメント 1980年(昭和55) 5月 3日ほか  採集   クルミガイ目 (Order Nuculoida) ロウバイガイ科 Nuculinidae ベッコウキララガイ属  フジナベッコウキララガイ

 クルミガイ目 の特徴は二枚の殻をつなぐ交歯は細かい歯が櫛歯状に多数並ぶ多歯型であり、また現生種の Portlandia sp. は200m までの深さの砂泥地に生活しており、亜熱帯性の海域では浅海部での堆積物から産出はほぼ見られない。
 この鏡の産地では ほとんど合弁で産するが 殻に丸い穴のあけられたものがほとんどで、肉食性の巻貝に犠牲になったものが非常に多い。
 Yoldia gratiosa と横山によって1923年に、この鏡の布志名層から産出の標本からから命名されたとのこと。
現生の Megayoldia sp. は東北以北、オホーツク海、ベーリング海など寒冷地の海域に棲息している。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 Uozumi Satoru  (1957)
  Studies on the Molluscan Fossils from Hokkaido : Part II. Genera Yoldia and Portlandia.
  (北海道産の軟体動物化石に関する研究:パートII. ヨルディア属とポートランディア属).
  Journal of the Faculty of Science, Hokkaido University. Series 4, Geology and mineralogy, 9(4), 539-596
 Jiro MAKIYAMA (1957)  (Revised by.)
  TERTIARY FOSSILS FROM VARIOUS LOCALITIES IN JAPAN
  PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN, SPECIAL PAPERS, NUMBER 3.
 坂之上 一 (1998), 
  『出雲地方の貝化石』. 糸魚川淳二監修. 島根県立三瓶自然館, 刊行
 末広匡基  (1979),  島根県布志名層産中新世貝化石群.  
   瑞浪市化石博物館研究報告.  第6号,  65-100,  Plate 10-16.




0477 掲 載 日 2022年 2月 3日(木)  
標 本 名  Mesodermochelys undulatus Hirayama & Chitoku
  メソーダーモケリス    ウンドゥラータス
産  地  兵庫県洲本市由良町 
時代 地層  中生代 白亜紀後期 マーストリヒチアン階   和泉層群 北阿万層
標本写真







Hirayama & Chitoku (1996)より引用
コメント 2009年(平成21) 8月 15日  採集 古代オサガメ科の仲間
   (特別展示室に紹介済み : http://pravito.web.fc2.com/SKcoll-43Web.htm)
これらの標本にまつわる裏の話です。
主要標本の経歴について
1999年7月11日 オサガメの後頭部の一部を発見(岸本) なお 以下の個体とは別個体
2009年5月24日 オサガメの眼孔、鼻孔付き頭骨・下顎骨・烏口骨・肋骨板などを含むブロックを発見(松本)
2009年8月10日〜 松本標本の剖出が岸本の手で始まる
2009年8月15日 再調査松本標本と同一個体で関節状態のオサガメの左半身を含むブロック発見(岸本)
2009年8月30日(岸本)・2009年9月27日(岸本・松本ほか2名) 再再調査 肋骨板等を採取 (岸本10/1〜11/18入院)
2013年9月26日 岸本標本人博へ寄託  同年11月22日松本標本人博へ寄託 (現在両標本は寄贈となっている)
2014年1月24日 頭骨ほかの標本 報道関係への発表 (会場 人博)
  https://www.hitohaku.jp/research/h-research/kaseki-20140126news.html
2014年1月26日 日本古生物学会第163回例会(於 ; 人博) 平山 ほかによって報告
  予稿集  http://www.palaeo-soc-japan.jp/events/163_2014.pdf  (口頭発表 A20)
これ以後、平山先生によって論文化が進められているとの事だが、やはり新たな発見ではなく、既に記載された種の記載論文は難しいのか、洲本標本の形態の特徴や共産化石から見える古環境を追及する研究は今の先生方にとって、そんなに意味のあるテーマでないかも知れませんが、是非論文化して出版して頂きたいものです。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

             ━




0476 掲 載 日 2022年 1月27日(木)  
標 本 名  Saccella sp.
  サクセラ
産  地  岡山県新見市西方辻田
 34°59'40.0"N 133°26'05.0"E
時代 地層  新生代  新第三紀  中新世中期  備北層群 是松層(下部砂岩層)
標本写真

コメント 1980年(昭和55) 3月30日ほか  採集    ゲンロクソデガイ科

 この産地を知ったのは この頃コロナ社がようやく日本各県の「地学ガイド」シリーズが刊行され出したころで、1980年3月初めに「岡山県」が出版された。 これに辻田で小野田セメントの泥岩層の採掘場で多くの化石が出ていると紹介されていた。 出版された月末に現地を訪れた時には 採掘場は既に工場(矢崎部品(株) 新見工場)が建っていた。 しかし工場の西の小さな谷を越えた丘を崩し谷を埋める造成工事が行われていて、この工事によって素晴らしい保存の貝化石が多産し、後々2〜3年の間 楽しませて戴いた。
 ここでは二枚貝類 Acila submirabilis, Scapharca abdita, Cycladicama cf.cumingii kukinagaensis, Cultellus sp., Cyclina (Cyclina) takeyamai , Periploma mitsuganoense, . 巻貝類 Vicaryella bacula, Pythia kishimotoi, Miocenehadra nakamurai (カタツムリ), スナモグリ類 Callianassa nishikawai  等々が採取できた。
 今でもグランド横の小さな露頭で 風化が進んだものが採取できるかもしれない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 光野千春・沼野忠之監修 野瀬重人編集 1980
   岡山県 地学のガイド
   コロナ社 p.113-118
 田口栄次・岸本眞五・鈴木茂之 2013
   岡山県新見市の中新世備北層群からのPeriploma mitsuganoense Araki (Bivalvia: Mollusca) について
   OKAYAMA University Earth Science Reports, Vol. 20, No. 1, 7-11




0475 掲 載 日 2022年 1月20日(木)  
標 本 名  エナリアルクトス亜科?(Enaliarctinae ?)の尺骨
産  地  三重県津市美里町北長野口  伊賀街道沿い
 34°44'17.3"N 136°22'07.8"E
時代 地層  新生代  新第三紀  中新世中期   一志層群 三ヶ野層
標本写真









『動物大百科2 海生哺乳類』  (平凡社) より 反転引用
コメント 1995年(平成7) 2月26日  採集     鰭脚(キキャク)類  アシカ科 右尺骨

 化石は当時一志郡美里村の伊賀街道沿いで道路の拡幅工事が行われていて、その切割に一志層群の三ヶ野層が広く露出していた。 骨化石の含まれた層は粗粒で二枚貝類の破片が見られる程度だったが、この上下の砂岩層からは Macoma izurensis, M. optiva, Venericardia siogamensis, Euspira meisensis, Fulgoraria yanagidaniensis などを産した。
三ヶ野層からはこれまで多くの脊椎動物化石の産出を見る。 サメの歯を主とする軟骨魚類 クジラやイルカの鯨類 またこの鰭脚類についてもそんなに稀ではないもののようだ。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 谷本正浩・岸本眞五 2000
   三重県美里村北長野口の中新統 一志層群で見つかった鰭脚類(エナリアルクトス亜科?)の尺骨
   近畿地学会機関紙   痕跡23 p36-38 




0474 掲 載 日 2022年 1月13日(木)  
標 本 名  Rudiapes (Siratoria) siratoriensis (Otuka)
 ルディアペス  シラトリア    シラトリエンシス
産  地  兵庫県養父市関宮八木谷 大鍋
 35°23'30.4"N 134°36'44.1"E
時代 地層  新生代  新第三紀  中新世中期   北但層群  豊岡層
標本写真
コメント 1980年(昭和55)  7月 20日 採集    マルスダレガイ科   シラトリアサリ

 マルスダレガイ科(Veneridae)は、二枚貝綱異歯亜綱の1科で、二枚貝最大の科で代表的な種にはアサリ、ハマグリ等がある
アサリ亜科アサリ属の特徴は 殻頂は前方寄りで、靭帯は後方に外在、蝶番の主歯は、左右にほぼ3個ずつ認めら交互に咬み合わされる。殻に放射肋が密に刻まれ、成長脈と交わる。(ウィキペディアから引用)
 ここ八木谷大鍋の産地では、よく見るヌノメアカガイ(Cucullaea toyamensis)と共産するが、産出は少ない。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

Takashi Matsubara  2011 
   Miocene shallow marine molluscs from the Hokutan Group in the Tajima area, Hyogo
   Prefecture, southwest Japan 
   (兵庫県但馬地域の北但層群産中新世浅海軟体動物)
   瑞浪市化石博物館研究報告 37 p.51-113
兵庫県養父郡関宮町教育委員会 1982
   兵庫県養父郡関宮町八木谷化石調査 (一般国道9号除雪拡幅工事に伴う化石調査報告書)




0473 掲 載 日 2022年 1月 6日(木)  
標 本 名  Polynices (Euspira) ashiyaensis (Nagao)
 
ポリニシィス     ユースビラ      アシヤエンシス
産  地  山口県下関市豊北町大字神田 鍋島 
  34°19'56.9"N 130°53'22.8"E
時代 地層  新生代  古第三紀 漸新世後期−前期中新世   日置層群  峠山層
標本写真



コメント 1992年(平成4)  3月 27日 採集     アシヤタマガイ
Euspira について 下記ブログから引用
  語源はEu-が「真の」という意味、spiraはらせん=巻貝 という意を表し 
  Polinices の語源はエジプト・テーベの戦士・王子にちなむらしい。
鍋島では 芦屋層群と対比される日置層群と呼ばれる地層が広がる。 旧神田小学校 (2019年3月廃校) 側から陸繋島の鍋島に入ると、小礫を多く含む層準が見られ ここではサメの歯が多く見られるとの事で知られていたが、この時は採取できなかった。 島の東海岸には貝化石を多く含む層準が現れ、 Glycymeris cisshuensis, Pitar matsumotoi, Crassatellites yabei, Venericardia subnipponica, Dosinia chikuzenensis 等の合弁のものをしばしば観る、これらと共に散在的に、このアシヤタマガイも産する。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

OK元学芸員のこだわりデータファイル   2022/01/01 閲覧
  https://blog.goo.ne.jp/okayoshi610creta
 私の化石組標本(その19)
  2013年12月07日 | 鉱物・化石組標本
  https://blog.goo.ne.jp/okayoshi610creta/e/45960f98f6ae5c97806450e5db165079




0472 掲 載 日 2021年12月30日(木)  
標 本 名  Vepricadium (s.s.) okamotoi Taguchi
 
ベプリカディウム      オカモトイ
産  地  岡山県津山市新田(ニッダ)
  35°03'14.2"N 134°03'51.8"E
時代 地層  新生代  新第三紀  中期中新世  勝田層群 吉野層
標本写真



コメント 1977年(昭和52)  3月 27日 ほか採集  オカモトザルガイ

 山陰地団研(鳥取支部)巡検で初めて案内された産地で 鳥取大学の赤木三郎先生に指導して頂いた。(注 : 2014年2月5日 82歳 没)
 この産地は、私にとって始めてみる驚きの化石の保存状況で 地権者の許可を得て何度も何度も採集をさせていただいた。まるで干潟で潮干狩りをするような状態で、もろくなった泥岩層からポロポロとクリーニングいらずの合弁の二枚貝や巻貝が多量に産する、夢の様な露頭だった。
 学名の属名の後の (s.s.) は sensu stricto (センスゥ ストリクトゥ) 狭義の という意を表す。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 EIJI T AGUCHI 1990  
     西南日本岡山県の中新統勝田層群からのVepricardiumの一新種古生物学会報告紀事
     A NEW SPECIES OF VEPRICARDIUM (BIVALVIA;MOLLUSCA) FROM THE MIOCENE KATSUTA GROUP IN OKAYAMA PREFECTURE, SOUTHWEST JAPAN
     Trans. Proc. Palaeont. Soc. Japan, N.S., No. 160, pp. 609-617,7 Figs.

 田邊鉱物化石コレクション  2021/12/28 閲覧
   http://www.takahashi-oa.com/
       Vepricadium (s.s) okamotoi Taguchiの相対成長と生息環境に付いて  
       http://www.cpustudy.net/paleont/index.html
 秋山雅彦  2015
    追悼 赤木三郎会員のご逝去を悼む
    化石研究会会誌 Journal of Fossil Research, Vol.47(2),55-56




0471 掲 載 日 2021年12月23日(木)  
標 本 名  Nanonavis splendens (Ichikawa & Maeda)
   
ナノナビス  スプレンデンス
産  地  兵庫県南あわじ市灘黒岩
時代 地層  中生代 白亜紀後期 マストリヒチアン階    和泉層群 下灘層
標本写真





コメント 2001年(平成13)  12月31日 採集    シコロエガイ科

 1990年代後半ごろから南あわじの灘海岸の 土生から黒岩にかけての海岸道路は 拡幅工事が急ピッチに進み 護岸の防波堤は新しく作り替えられ、海側の消波ブロックのテトラもすべて新しく設置されていきました。
この工事では 旧テトラポットを沖合に押し出す様に撤去し新たな防波堤の基礎部分の掘削が行われこれによって、多くの化石を含むノジュールがたくさん掘り出されて我々を楽しませてくれた。
 この掲載標本もこの時に出てきた20p台の球形のノジュールにハンマーの一撃を加えると、ノジュール中で殻表が風化し溶けていたのか、化石がポ〜ンと飛び出してきたもので、まったくクリーニングいらずの一品だった。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 田代正之 1992   「化石図鑑」日本の中生代白亜紀二枚貝(自費出版本)
 岸本眞五 2016   淡路島の和泉層群から産出する二枚貝類化石
                兵庫県立人と自然の博物館  共生のひろば 11号 p.56-61




0470 掲 載 日 2021年12月16日(木)  
標 本 名  ケトテリウム類(ヒゲクジラ類)の耳骨(耳石)
産  地  岡山県津山市一方(二宮) 吉井川河床
 35°03'25.2"N 133°58'23.4"E
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期  勝田層群 吉野層
標本写真



コメント 1994年(平成6)  8月21日 採集      ヒゲクジラ亜目

 夏場の渇水期の河床で出くわした化石 一抱えもあるノジュールから クジラ類の吻部と思える物が表出しているのを発見した。渇水期の河床と言えども現場は10p以上もの深さのある水の中、当時はコンデジカメラも持たない時代 産状写真も撮ってない。30p前後のタガネで、何とか クジラの一部であることがわかる耳石一個を持ち帰った。廻りを見ると骨化石が含まれていると思えるノジュールがいくつか見えていた。
その後 何度か現場を訪ねたのですが、水位が高く見ることは叶いませんでした。 平成10(1998)年10月の台風10号によって このあたりの河床の泥岩層は大きく荒らされ、この化石は洪水によって流されてしまったものと思い込みがあった。
以前奈義町の工業団地の造成工事現場でもクジラ化石は発見したことはあるのですが これらの大型化石は個人で採集調査するのは無理なので、人博の先生方に産出報告はしたが奈義町の場合は先生方が現場の確認はされたが、時は遅く工事でその影も見ることができなかったとのこと。
また 吉井川の場合は1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災のため 博物館の活動がほぼ休止状態となっており現場の確認もなかった。 時間の経過の中で私自身もこの化石のことを忘れ去っていった。
 私の発見から10年余りが過ぎた2005年4月 津山市上田邑の田邊賢吾氏によって発見されたとの報告書が2008年に群馬県立自然史博物館から発表された。 それによると産地は私とほぼ同じ場所であるのを知って驚愕した。
 これらの残念な結果は 私の博物館への正確な情報の報告が遅すぎたことが最大の原因である。 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 木村敏之・田邊賢吾・冨田 進・長谷川善和  2008
  岡山県津山市の勝田層群吉野層(下部中新統)よりケトテリウム類化石の産出
  群馬県立自然史博物館研究報告(12):41−44




0469 掲 載 日 2021年12月 9日(木)  
標 本 名  クジラ類の頸椎(首の骨)
産  地  島根県松江市宍道町東来待 鏡
 35.423522, 132.970252
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期(14 - 13 Ma)  出雲層群 布志名層
標本写真




 

Figs.1032a, 1032b は鮮新世 米国ノースカロライナ州ビューフォート産出(頂き物)
コメント 1980年(昭和57)  5月 4日 採集  クジラの頸椎

 採取品は 破片骨でクジラの椎骨であろうと思われたが、長らくそれがどの部位の物か分からなかった。
後日入手した米国ノースカロライナ州ビューフォートの標本で 頸椎の一部であることが分かった。

 哺乳動物の首の骨の数はどの動物も同じ7個であることが知られいいる。クジラは水中生活に適応した結果、首の長さが短くなり、多くの種ではいくつかの首の骨がくっついて一つの骨の塊のようになっている種もある。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 和歌山県太地町くじらの博物館デジタルミュージアム
   https://kujira-digital-museum.com/ja/top   12月3日閲覧

 千葉県市原市埋蔵文化財調査センター
   https://www.city.ichihara.chiba.jp/maibun/about.htm   12月3日閲覧

 一島啓人 2005
   いくつかの日本産鯨類化石の再検討
     福井県立恐竜博物館紀要 4:  1−20




0468 掲 載 日 2021年12月 2日(木)  
標 本 名  Gari (Gari) cf. ibarakiensis Noda, Kikuchi and Nikaido
   ガリ   (ガリ)    イバラキエンシス
産  地  岡山県勝田郡勝央町中島東福元 
 35°05'40.1"N 134°10'30.6"E
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   勝田層群  吉野層
標本写真



コメント 1982年(昭和57) 6月19日 採集   イバラキアシガイ  ニッコウガイ超科 シオサザナミ科 アシガイ (芦貝)

 殻はやや厚質で、横長の亜四角形。殻表装飾は、磯の浜辺に汐の小波が作り出す様な シワ状の成長脈があり、殻頂を元としてに後腹縁に向かって松葉状2本の弱い稜線が広がり細いV字状の溝をつくっている。後方には腹縁部の成長脈とは稜線を境として直行するように粗い成長脈がある。 この種の産出は勝田層群では この産地でしか見ていない。
 この産地はTurritella kiiensis の潰れの少ない保存の良いものを多産することで知られていて、Vicarya yokoyamai を多産する吉野層の砂質泥岩と比べ砂が粗く泥質度は弱い。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Takashi Matsubara 2011
      Miocene shallow marine molluscs from the Hokutan Groupin the Tajima area, Hyogo Prefecture, southwest Japan
      Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 37, p. 51-113, 9 pls., 2 fi gs., 1 table.




0467 掲 載 日 2021年11月25日(木)  
標 本 名    Anadara (Hataiarca) kakehataensis Hatai et Nisiyama
    アナダラ      ハタイアルカ       カケハタエンシス
産  地  兵庫県養父市八鹿町 小佐谷 妙見林道 
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   北但層群 村岡層 妙見部層
標本写真



コメント 1978年(昭和53)10月7日 採集    カケハタアカガイ

 1970年代 兵庫県の但馬地域ではあちこちで林道の開発工事が行われていた。
この年の前後数年 度々和田山の工藤氏に案内して頂いて、何度かこの地へ入った時に採集させていただいた一つ。
ここ八鹿町の妙見山東山麓の八鹿町石原 妙見山日光院を脇を回り込むように八鹿町日畑の名草神社三重塔に向かってつづら折れの林道が開発されてた。(妙見・蘇武林道 総延長24.8km)
 最近ではこれらの林道は林道本来の用途として利用されているが、林道のバイクハイカーのメッカとなっているようだ。林道ツーリングのマップもネット上に紹介されている。(https://www.chisanrindou.jp/tourism/road_map01.html)
 さて 妙見林道の化石は貝殻の保存がされておらず ことに二枚貝類はほとんどが印象化石のように殻の厚みは読み取れない。
このアカガイの様な殻の厚い二枚貝でも化石化する段階で殻自体は保存されず溶け去ったのか、薄く印象として残されているだけで、化石化してから殻が溶け去ったものでないことが分かる。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 橋元正彦  1998 開設
    HP 兵庫の山々 山頂の岩石 
    http://www2u.biglobe.ne.jp/~HASSHI/kiroku.htm
    但馬妙見山 
    http://www2u.biglobe.ne.jp/~HASSHI/tazimamyoken.htm
      閲覧日 2021 11 23 
 Takashi Matsubara 2011
    Miocene shallow marine molluscs from the Hokutan Groupin the Tajima area, Hyogo Prefecture, southwest Japan
    Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 37, p. 51?113, 9 pls., 2 fi gs., 1 table.




0466 掲 載 日 2021年11月18日(木)  
標 本 名  ウニ類の棘
 Stereocidaris sp.   ノコギリウニの棘
   ステレアキダリス
 Prinocidaris sp.     フトザオウニの棘
   プリノキダリス
産  地   岡山県新見市大佐田治部
時代 地層   新生代 新第三紀 中新世中期  備北層群  下部砂岩層(是松層)  田治部部層 (後藤 et al. 2013)   
標本写真



コメント 1981年(昭和56) 3月29日 採集  オウサマウニ目, オウサマウニ科
                        ノコギリウニの棘  フトザオウニの棘

 国司神社の裏手の小さな沢に面した風化が進んでいるが、辛うじてラミナが何とか読み取れる小さな砂岩層の露頭がある。
今では、草木が茂り 採集には普段使わない下の写真の様な道具が必要。
露頭にも棘の化石は飛び出して見えていることはあるが、風化で露頭下に崩れ堆積した土砂の中から採取する方が良い。但しそこは落葉や雑草が覆っているので、鎌で雑草を刈り、手ぐわで根を掘り起こし、風化土砂をザルに取り沢の水で篩にかけながら、ウニの棘をヒックアップしていくという方法で採取する。
 この沢底は泥岩層で オウムガイ(Aturia sp.)を産した。 尚 夏には虫よけスプレーが必需品となる環境。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 光野千春(監修) 1980
       岡山県 地学のガイド 岡山県の地質とそのおいたち
               4. 新見・阿哲地区 p.110-146 
       (株) コロナ社  刊行 
 大久保雅弘(編) 1980
       改訂 山陰地学ハイキング
               4. 多里と広瀬鉱山  p.44-49
       (株) たたら書房 刊行 
 後藤隆嗣・入月俊明 et al.  2013
       岡山県新見市田治部地域に分布する中新統の層序と堆積環境
       地質学雑誌 第119号 第4号 p. 321-333      




0465 掲 載 日 2021年11月11日(木)  
標 本 名  Scylla sp. aff. S. serrata Forskal
  スカイラ                セラーアタ
産  地   岡山県勝田郡勝央町美野 東 (作州街道新設工事現場内)
  35.0717289883322, 134.1562103808101
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   勝田層群  吉野層    
標本写真





コメント 1984年(昭和59) 7月 8日    採集   ワタリガニ科 ノコギリガザミ属

 採取現場は 道路の新設工事で切通しが終わり 道路となる両脇に勝田層群の吉野層と思われる崖(露頭)が現れていた。
工事は次の工程に移る段階で 数ヶ月中断放置された状況で崖には草が生えていた。
 カニ化石は ほぼこの状態で左右の鉗脚および甲殻が分離して崖表面に出ていて落ちている状況だった。
最も形状が残されたのが ここに掲載した左鉗脚で指節咬合縁には丸みを帯びた不揃いの歯を備え、掌節は太く、良く膨らみ、表面は平滑で、殻表には網目模様まで残されている。
備 考 引用・参考文献・Webサイト
 岸本眞五 1996  
        勝田層群産のノコギリガザミについて
        近畿地学会 痕跡 19 76-83
 柄沢宏明・岸本眞五 1996
        岡山県の勝田層群産中新世十脚甲殻類
        瑞浪市化石博物館研究報告 23,p.39-50




0464 掲 載 日 2021年11月4日(木)  
標 本 名  勝田層群での一日の成果
産  地  岡山県津山市高尾
時代 地層  新生代 新第三紀 中新世中期   勝田層群  吉野層    
標本写真

コメント 2021年(令和3) 9月13日    採集

 年に数回 水の底から現れるこの産地 この日、数日前から川の堰は下げられていた様で 川底には化石を含む泥岩層が化石採取には最高の条件で現れていた。
 潰れのないビカリアには殻内部に泥が入らず ケイ酸鉱物が充填し、瑞浪のものと比べ色は落ちるが“オサガリ”となっているものが少なからず産出する。
 この日の一番の成果といえるのは写真右上の Clementia aff. papyracea Gray 一部 川ズレはしているものの潰れのない良品でこの産地では私にとって初めての採取品だ。
 3時間そこそこの採集時間を終えるころ 下流の堰は徐々に膨らんできた。 2〜3時間後には化石を含む地層を守るように水が覆っていくことであろう。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Eiji Taguchi   2002 
  Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan   
  Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 29 (2002), p. 95-133, 8 pls., 33 figs., tables.




0463 掲 載 日 2021年10月28日(木)  
標 本 名  Canadoceras aff. mysticum Matsumoto
  キャナドセラス            ミスチカム
産  地  和歌山県有田郡有田川町沼谷
時代 地層  中生代 白亜紀後期 外和泉層群 二川層    
標本写真

コメント 1987年(昭和62) 4月5日 採集   Family PACHYDSIDAE パキデスカス科

 1985年頃に、この沼谷近郊の岩坂観音近くの道路工事で軽トラのタイヤ並みの大きさのアンモナイトが出たという話がマニアの間で広がっていた。
 この日興味津々で仲間と共にこの地に採集に入った。主にこの地区を流れる沼谷川岸の露頭又は枝沢を探すのだが、私一人 この地区に入る道中で川岸の崩落したところが気になり川を下ったのが正解だった。
 押されて変形はあるものの厚みのあるアンモナイト 二川層で私にとって初めて見る素晴らしい一品だった。 その後この地区で Ainoceras sp.の産出が知られ一躍注目を浴び 今も多くのマニアが訪れている。
 (参考) 想い出の化石(3)  0089 2014年6月12日掲載 
       想い出の化石(4)  0182 2016年3月24日掲載 
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Yasunari Shigeta・Masataka Izukura・Tomohiro Nishimura  2019
       Campanian (Late Cretaceous) ammonoids and inoceramids from the Ribira River area,Hokkaido, northern Japan
       National Museum of Nature and Science Monographs No. 50 p.1-149
 Blog 北海道@アンモナイト日記
       2016年02月11日 掲載記事
       キャナドセラス   ミスチカムとミニマムの関係
                          2021年10月22日閲覧
 Blog 海遊び山遊び
       2016年11月08日 掲載記事
       キャナドセラス ミスチカム 
                          2021年10月22日閲覧




0462 掲 載 日 2021年10月21日(木)  
標 本 名  Phyllonotus ashiyaensis (Nagao)
  フィロノタス         アシヤエンシス
産  地  山口県下関市豊北町大字神田 鍋島 
時代 地層  新生代 古第三紀 漸新世後期−前期中新世    日置層群 峠山層    
標本写真



コメント 1992年(平成4) 2月 7日    採集   アッキガイ科  (アクキガイ科ともいう)

 ホネガイで良く知られているアッキガイ科の仲間で またアカニシやイボニシまたレイシガイも同じアッキガイ科に含まれ、体層は丸く大きく膨らみ殻口は大きく広がり、体層の殻は厚く強靭である。
 北九州地域の芦屋層群に対比できる貝類化石が数多く産出する、漸新世から前期中新世の日置層群の分布する鍋島海岸。Phyllonotus ashiyaensis は北九州地域での産出は少ないようだが鍋島では普通種で、体層の厚い殻の保存は、結晶化した方解石となっているものの、風化のためか乳白〜黄色に変色し、崩れやすく 剖出時に殻を残してクリーニングするのは難しい。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 富田宰臣・石橋 毅  1990
      北部九州炭田古第三系の地質と化石(概説)
      九大理研報(地質)  16巻2号 p.99-142 pl. 8-18
 岡本和夫  1970
      山口県豊浦郡豊北町特牛(こっとい)港付近の第三系
      ━とくに日置層群の貝化石群集と堆積環境━
      地質学雑誌 第76巻 第5号  p.235-246
 北九州市立自然史・歴史博物館自然史友の会 化石研究部会  2019
      私たちの自然史・自然資料集化石編(非売品)
      ━化石研究部会と芦屋層群の化石━
      北九州市立自然史・歴史博物館 自然史友の会 特別号 p.1-42




0461 掲 載 日 2021年10月14日(木)  
標 本 名  Tateiwaia yamanarii Makiyama
   タテイワイア    ヤマナリイ
産  地  岡山県津山市高尾 皿川河床
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世    勝田層群 吉野層    
標本写真

コメント 2021年(令和3) 9月13日    採集    ヤマナリウミニナ(ウミニナ科)

 河口付近前浜の潮間帯砂底に生息していた, 中期中新世の門ノ沢型動物群の一つとされ日本各地の Vicarya の産地で多く見られる。
殻は中〜小型、高い塔形である。殻頂部を欠いて10層の螺層からなる、螺層の中央で角張り突出する9ヶの結節をもった縦肋がある、螺肋は多く強弱があり、中央の棘状になったもの、縫合直上のものなどが強い、体層の周縁に2本の螺肋があり角をつくる。底面はやや凹み、螺肋が刻まれる。殻口は卵形。
 皿川では勿論 Vicarya yokoyamai と共産し、散在して多産する。川底で水によって風化が進み殻表は白粉化が進んでクリーニング時に殻表に白く傷かついて、細かな殻表の装飾を読み取るのが困難なものが多い。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 Eiji Taguchi   2002  
   Stratigraphy, molluscan fauna and paleoenvironment of the Miocene Katsuta Group in Okayama Prefecture, Southwest Japan
   Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, no. 29 (2002), p. 95-133, 8 pls., 33 figs., tables.




0460 掲 載 日 2021年10月7日(木)  
標 本 名  Kotorapecten kagamianus (Yokoyama) 右殻
   コトラペクテン      カガミアヌス 
産  地  島根県松江市浜乃木8丁目 (旧地名松江市田和)
時代 地層  新生代 新第三紀 中期中新世後期    出雲層群 布志名層    
標本写真

コメント 1980年(昭和55) 11月 3日    採集   カガミホタテ

 当時は 島根県立松江商業高等学校や松江市立湖南中学校の造成工事で広く切り開かれ整地された運動場用地に点々と化石が表出していた。
 これらのホタテガイの仲間は分類学的に多くの研究がされ ことに K. kagamianus については仙台の茂庭層から産出するものに関して増田 孝一郎(2013年没)によって詳しく研究され属名を Kotorapecten から Patinopecten に替え 亜種の新設を提唱し Patinopecten kagamianus moniwaensis Masuda , Patinopecten kagamianus nimaensis Masuda 等を記載した。
備 考 引用・参考文献・Webサイト

 坂之上 一  1998  出雲地方の貝化石
                島根県立三瓶自然館 坂之上 一貝化石コレクション解説書 p. 1-62
 増田 孝一郎 1958  仙台附近中新統産Pectinidae その10, その11, その12
                日本古生物学会報告・紀事  30号



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