その3
こんなの採れました(その5)
勝田層群からの
Panopea nomurae KAMADA (ノムラナミガイ)の
産出と2〜3の検討
岸 本 眞 五
■採集日 昭和57(1982)年12月21日 ほか
■産地 岡山県津山市院庄 吉井川 河床 ほか
■地層 勝田層群 吉野層
■時代 新第三紀中新世中期
■ はじめに
オオノガイ目・キヌマトイガイ科に分類されるナミガイ属“Panopea sp.”は、全国の中新世中期から鮮新世及び第四紀更新世の地層から報告がある。
(Panopea 属としては白亜紀後期からも産出の報告はある)
中国地方の中新世中期〜後期の地層からは、これまで山口県須佐町前地の須佐層群前地砂岩層からP. nomurae KAMADA が岡本ほか(1983)、また島根県浜田市の唐鐘累層からは、都留(1983)によって P. japonica A.ADAMS が、また同県出雲市ほかの出雲層群の大森層・布志名層からはP. nomurae (末広1979,坂之上1998)の産出が報告され、鳥取県では、鳥取層群の諸鹿礫岩層また多里層から、山名(1997)によって報告されている。
兵庫県の北但層群村岡累層から大塚(1941)により P. tyugokuensis OTUKA の記載があり、井上(1982)にも産出が報告されている。
備北層群では、岡本ほか(1990)が広島県の庄原市宮内町貝石谷よりPanopea sp.の断片を報告している。勝田層群では、河合(1957)によってP. cf. japonica の産出報告が勝央町吉野と奈義町柿畝からある。
上記のこれらの各報告の中に記載されているP. nomurae ,P. japonica ,P. tyugokuensis の3種類の形状を比べてみると、キヌマトイガイ科の特色でもある個体変異が多いとしても2〜3の疑問点があると考える。
この報告では、これらの各地で採集した“Panopea sp.”について再検討をしてみた。
■ 産地の概要
今回報告する勝田層群産のP. nomurae は、次の2地点で得られた。
1. 岡山県津山市院庄 吉井川 河床 (T.A17)
2. 岡山県勝田郡勝央町吉野西川 (T.A4)
1. 岡山県津山市院庄 吉井川 河床 (T.A17) 吉野層
吉井川と戸島川の合流地点で、砂岩層の上位に淘汰の悪い角礫を含む礫岩層が見られる。
化石は主に、砂岩層からの産出で多くは径10a内外のノジュール中に含まれVepricardim okamotoi がもっとも多くみられ、そのほとんどは離弁密集型であり、それぞれの個体の大きさも大小さまざまなものが集まっている。またこれらのノジュール中にはOstrea itoigawai ,Ruditapes siratoriensis , Dosinia (Phacosoma) nomurai , Meretrix arugai , Diplodonta?sp. , Zeuxis minoensis , Nerita? sp. 等の貝類、それに掘足類のPulsellum aff. minoensis
甲殻類では Carcinoplax antiqua , Callanassa sp. 有孔虫類ではOperculina complanata japonica などが産出した。
P. nomurae は3個体産し、ノジュール中にはみられず、地層にたった状態で合弁で自生を示すものが2個、片殻が1個産出した。
上位の礫岩層からは Crassostrea gravitesta , Globularia nakamurai などを産出した。
2. 勝田郡勝央町吉野西川 (T.A4) 吉野層
吉野小学校の敷地内、校舎東側の露頭で、細粒砂岩層を挟む砂岩・泥岩の互層の層理が明瞭な地層である。
化石は砂岩から泥岩への漸移部に多く、圧力変形を受けてつぶされているものもある。
Ostrea sp. , Striarca uetsukiensis , Saxolucina k-hataii , Cyclina sp. , Anadara sp.Solidicorbula succincta , Proclava otukai , Euspira ? sp. , Melongena sazanami ,Protorotella ? sp. などの貝類を産出し、またこれらの産出層より上部に Fissidentalium cf. yokoyamai を多産する泥質砂岩層がみられた。